お茶の間よもう一度! トップクリエイターが考えるヒットとは?【後編1/2】

2015.6/29

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第一線で活躍するクリエイターたちは、何をもってヒットを実感しているか?
いきものがかりの水野良樹さん、CMプランナーの福里真一さんに、それぞれが考える“ヒットの基準”について伺います。
前編 ヒットのつくり方を語ります! はこちらから
中編 「自分を出す人」ほど、ヒットを出せない理由 はこちらから

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おめでたい日に使われる=ヒットの証

佐藤 福里さんは「ヒットしている!」と感じるような、明確なヒットの基準はありますか?

福里 CMは数値化されないので、感覚的なことでしかないんですが、ジョージアの「明日があるさ」を今から15年くらい前に手がけたとき、すごい反響だったんです。メディアが取材に来たり、「幼稚園で子どもたちが歌ってます」とかも耳にしたり。僕がヒットを実感することがあるとすれば、そういうところですね。あとは、週刊誌の見出しになること。週刊誌ってヒットしている言葉をもじったりするんですけど、「〇〇に明日はあるのか!?」みたいに、もじられはじめると、相当ヒットしているんだなと。水野さんは、いちばん意識しているのはダウンロード数ですか?

水野 レーベルとかメーカーは、販売という意味でCDとかダウンロード数が大事になってくるのは確かですが、作り手側からすると、その曲がどれだけ使われているかっていうのが判断基準なのかなと。分かりやすいのは冠婚葬祭の行事に使われるということ。自然と人々の生活に溶け込んでいる状態というか、誰しもが通る文化の中でその曲が浸透することでしょうか。

佐藤 「ありがとう」は結婚式でほんとよく聴くよね。そういう意味では、水野にとって「ありがとう」はヒット?

水野 そうだね。田舎のおじいちゃんおばあちゃんまで知ってくれていたので、浸透したんだなって感じましたね。

佐藤 「ありがとう」はヒットするって確信してた?

水野 いや、全然(笑)。むしろ、これヤバイんじゃないのって思ってた。チーム的には朝ドラの曲だし、力を入れよう! みたいな感じだったのに、ちょっと平たい曲を作ってしまったなぁ、みたいな(笑)。でも、それは個人的な巧さを入れようとしすぎてただけで。実際は、分かりやすい言葉で感情移入しやすい曲が求められていたんですよね。だからこそすんなりと受け入れられたのかなと思います。

福里 そういう意味で行くと、CMではシリーズ化するかどうかも、ひとつの判断基準ですね。BOSSの「宇宙人ジョーンズ」シリーズも、今年で10年目になりますが、長く続いたからこそ、今では多くの人に知ってもらえているという感覚があります。

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音楽やCMが「ハブ」になる

佐藤 人をプロデュースしているだけの僕からすると、おふたりとも何もないところから作っていて、本当にすごい。ちなみに、水野は曲を作るときに、ある程度世の中にウケるだろうみたいな確信とかってあるの? 「ありがとう」の時はなかったって言ってたけど(笑)

水野 あるね。でも大体外れる(笑)。ただ、メンバーを鼓舞するという意味で「売れる」って言っているところもあるんだよね。ヒットって、僕個人がいくら頑張っても限界があって、メンバー全体で届けていくものだと思っていて。だから、半分嘘でも売れるって信じないとダメだったりするんです。みんなでこの曲はこういうところがいいとか、確信を持っていないと怖いんです。

佐藤 ヒットを作り続けなきゃいけないというプレッシャーはある?

水野 え〜と、そもそもヒットを作ってる前提で話されてる気がするんだけど、本当にそんなことないから!(笑) やっぱり、社会現象になっている歌手とかグループもいるからね。そういう方々を見ていると、音楽だけじゃなくて、ダンスとかキャラクター性とかいくつもの要素が絡んでて、社会に影響を与えている。僕たちは音楽だけなので、自分が戦っている場所ってまだまだ弱いなと。いろんな要素で戦っている人と、どう戦っていけばいいのかなっていうのはあるかな。

福里 今の時代って、お茶の間やネット、世代によって分裂もあるじゃないですか。その中でヒットを目指すのは、けっこう難しくないですか?

水野 本当におっしゃる通りで、単純なひとつの塊じゃないですよね。小さなコミュニティが数え切れないほどあって、しかも、それぞれがつながっていないっていうのが現状。だからこそ、どのコミュニティの人も疎外しないモノというのが、余計に重要だと思うんです。特定のコミュニティだけに伝わればいいというのは、メッセージソングの姿勢としてはおかしいかなと思っていて。だから、どんな価値観を持った人でも歌だったらつながれるだろうというのが、僕にとってはすごい可能性を感じる部分なんです。

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ーー具体的には?

水野 たとえば、僕を嫌っている人が仮にいたとして、その人と仲よくなることはきっとできないし、それが個人の限界かなと思います。だけど、そんな人も僕の曲を好きになってくれるかもしれない。これは極端な例ですけど、小さなことも含めて価値観が違うコミュニティの人たちが、どうやってつながるかって考えた時に、「音楽」がハブになり得る、ということはすごく考えていますね。

福里 確かに、音楽とか歌とかって、いちばん可能性ありますよね。歌謡曲がヒットを連発してた時代というのは、本当にみんな同じ曲を歌っていて、その年に大ヒットすると全員が歌詞を知っていましたよね。年末にレコード大賞と紅白歌合戦に出てくる曲をみんな分かっているみたいなね。そういうことを実現できるのは歌だけかもしれない。水野さんは、本当にすばらしい職業につかれたと思います。一橋出身なのに(笑)

次ページ「マスとヒットの関係性」につづく

Interview/Text: 末吉陽子
Photo: 神藤 剛

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水野良樹

みずの・よしき/3人組音楽ユニット「いきものがかり」のギター&リーダー。メジャーデビュー10年目の幕開けとなる全国ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2015 〜FUN! FUN! FANFARE!〜」を開催中。30枚目のシングル「あなた」も絶賛発売中。

http://ikimonogakari.com

福里真一

ふくさと・しんいち/CMプランナー、コピーライター、文筆家。1968年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。一橋大学社会学部卒業後、92年電通入社。2001年よりワンスカイ所属。これまでに1000本以上のテレビCMを企画・制作。主な仕事に、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」など多数。著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)、『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)。月刊『創』に「このすばらしき、ろくでもないCMプランナー」連載中。

http://qreators.jp/qreator/fukusatoshinichi

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