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いきものがかり水野×CMプランナー福里「自分を出す人」ほど、ヒットを出せない理由【中編2/2】

2015.6/19

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自分の経験、主張は出しちゃダメ。だけど…

福里 CMだと必ず「この商品を売るためにはこういう考え方がいいです」っていう理屈があって、それをコピーや映像で表現するので、いいか悪いか判断がつくんですけど、音楽は理屈ではないから難しいですよね。そのなかで「これだ!」みたいな判断はどうやってしてるんですか?

水野 うーん、ディレクターは経験量があるので、理屈で判断してると思うのですが、最終的に音楽を聴く人たちは理屈では考えないので、僕は制作と関係ないスタッフがどういう反応をするかとか、家族がどういう反応をするかも大切にしてますね。僕、家で曲を作ることが多いので、そのうちの何曲かに家族が反応して、覚えちゃったりするんですよね。そういうのを見ると、この曲には力があるんだなって後押しされることはあります。

福里 大きな票を持ってますね。

水野 いやいや(笑)。福里さんは、たぶん「この商品にはこういうメッセージが合っているんだ」ということをプレゼンテーションとかで企業の方にお話しされているのかもしれないですが、CMなどを拝見していると、僕の勝手なイメージなんですけど、自分の中に「メッセージがある方だな」と思ったんですよね。世の中に対してのメッセージがあって影響力を行使したい、と思っているのではないかなと。それはもちろん企業自体が持っているものではありますけど。

福里 そうですね。それでいうと、やっぱり自分が何をおもしろく思えて、何をおもしろく思えないかということは尺度になっています。で、自分にメッセージがあるというよりは、ただかわいいとか、ただカッコいいとかいうものよりも、世の中に何か言っている感じのCMのほうが、自分がおもしろく感じるので、その結果そうなっているのかなと思います。

水野 なるほど。それは僕も同じで、「聞いてくださる方が感情移入しやすいように」と思って、自分たちの物語をあえて書かないようにしてるんですけど、一方でたとえば恋愛の歌を書くときは、やはり恋愛のひな形を提示する必要があって、それはどうしても自分の価値観に影響されてしまう。

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たった15秒でも、無駄だったと思って欲しくない

福里 結局CMって、お茶の間から15秒とか30秒近くの時間をいただいているわけです。広告させていただくからには、その時間をいただいたぶん、無駄な時間ではなかったと思ってもらいたいというのは前提としてありますね。そのためには、やっぱりおもしろくないとだめだと思うんですよね。

佐藤 ちなみに、CMを作られる時に、自分のメッセージは出さないにしても、どこかに何か自分が理想とする方向というか、こういう世の中になってほしいとか、すごく漠然としたものが何か影響を与えているんですか? 実はそれがヒットのポイントでもあるのかなと。

福里 基本、僕は“世の中の地続き”みたいになっているCMを作りたいので、世の中を描くことになり、そうするとおのずと世の中に対して何か物申してる感じにはなるんですよね。でも、最初からあらかじめ「こういう世の中になってほしい」とか「これを言いたい」とかっていうのは、そんなにはないんです。基本的には自分のことを「電信柱の陰から見ているタイプ」だと思っているので、なにか主張するとか批判するというよりは、強いて言うと、端のほうから茶化したい(笑)。そういう茶化したいというニュアンスは作品にも投影されているかもしれません。

水野 茶化したいっていいですね。電信柱の陰からと言いつつ、いちばんヤンキーな立場じゃないですか(笑)

福里 いやいや(笑)。でも広告ってやっぱり“広く告げる”が前提なので、実際には自分の主張がどうこうってことより、とりあえずパンダが出てきたらヒットするかな(フロムエー「パン田くん」のCM)、とか子供が店長をやったらヒットするかな(トヨタ「こども店長」のCMか)とか……もう、とにかく必死ですよね。

一同 爆笑

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自分の考えや価値観に固執せず、周りの要望を最優先する。
単純なようで、これがいちばん難しいのではないか。しかし、そこに徹することができるおふたりがヒットを作り出しているーー。
つづく後編では、おふたりの考える「ヒットの基準」について伺います。

Interview/Text: 末吉陽子
Photo: 神藤 剛

水野良樹

みずの・よしき/3人組音楽ユニット「いきものがかり」のギター&リーダー。メジャーデビュー10年目の幕開けとなる全国ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2015 〜FUN! FUN! FANFARE!〜」を開催中。30枚目のシングル「あなた」も絶賛発売中。

http://ikimonogakari.com

福里真一

ふくさと・しんいち/CMプランナー、コピーライター、文筆家。1968年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。一橋大学社会学部卒業後、92年電通入社。2001年よりワンスカイ所属。これまでに1000本以上のテレビCMを企画・制作。主な仕事に、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」など多数。著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)、『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)。月刊『創』に「このすばらしき、ろくでもないCMプランナー」連載中。

http://qreators.jp/qreator/fukusatoshinichi

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