「作る、消費する、捨てる」以外のファッションブランドを作りたい《中編》

2016.11.2

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現役・慶応義塾大学大学院生モデルであり、エシカルファッションプランナーとして活躍する鎌田安里紗さんと、ジーンズの作り手の姿に魅せられて情報発信をし、ジーンズブランドを展開するEVERY DENIMの山脇耀平さん、島田舜介さん兄弟の対談。前回は、20代の彼らの活動とともに、彼らが思う買い物の価値観、そしてファッションの現状や問題点を語ってもらいました。
そんな前回に続き、今回は、これからのファッションやライフスタイルの理想のあり方について話していただきます。

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———「品質」と同じくらい大切なのは、「愛着」

山脇  中国に技術を買われて、中国の工場の中身を作りに、日本の優秀な人材が海外に出ていく。中国にさらに安くものを作るために技術を売りに行く。その感じが、やりきれないと思うんですよね。

鎌田  切ないですね。工場でも話を聞きましたけれど、日本ではそのものづくりの技術を習いたいという人がいないらしいですし。

島田  デザイナーになりたい人は多いんですけれどね。相変わらずデザイナーを養成すべく、 “商品”ではない”作品”をつくる授業が大半を占めている専門学校もある。

鎌田  デザイナーは、本当に一握りの人しかなれないですよね。

山脇  そうなんですよね。それで、販売員さんになっていきます。でも、本来なら、作るのだってもっと楽しくなるはずだなと思うんです。

島田  イメージって人の職業選択に大きく影響を与えると思うんです。今、工場はかつての大量生産の形がかなり残っていますが、もっと東京のベンチャー企業のオフィスみたいにイケイケになってもいい(笑)。

山脇  めちゃおしゃれで、ソファーとかもあったりして。ガラス張りとかになっていて、道行く人がめちゃ写真を撮っていたり。

鎌田  それいいですね! かっこいいデスクで一人が糸から全部ジーンズを作っているという工場があってもいいな。

島田  「山田さんの加工がすごい」「彼にしかできない技術がある」と言われたり。そういう、工場で働く人が憧れられる職場環境があれば、日本人の若い人がもっと働きたいと思うのではないでしょうか。でも、今そういうところに設備できるような体力が、生産者側にはないのですよね。

鎌田  エブリデニムは今、ブランドとしてジーンズを作って販売していますよね。生産者の方を呼んで試着販売をして、消費者が生産者に直接会える形で販売して。あれは、生産者と消費者が会えるようにするためですか?

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島田  そうです。兄が先ほどいったように、今、正直言ってジーンズに品質の差はそこまで大きなものはないと思うんです。他のブランドと、僕たちのジーンズは同じ工場で作っていますから。
そのなかで僕たちのブランドのジーンズを買ってもらえる理由を考えたときに、僕たちは生産背景を知ってもらって、作り手と話して、良いと思って買ってもらいたいという気持ちがありました。

本当は、工場で売りたいと思っているくらいなんですよね。できた瞬間に「上がってきましたー!」って(笑)。

山脇  「新鮮です! まだ2時間しか経っていないほやほやのジーンズです! ○○さんが染めました!」みたいに(笑)。直売所みたいな感じで。

鎌田  ミュージアムショップみたい!

島田  そうなんです。美術館に行くと、作品を見た感動をそのままに、絵葉書やグッズが買えますよね。そういう風になれば良いのにって。

最初に工場に見学に行ったときに、あまりに感動して「これ、ほしいです。そこで買えるんですか」と聞いたんですね。最終加工場だったので、ジーンズ自体は完成していたんです。
でも工場の方は「いや、どこで買えるかは言えないです。わからないです」とおっしゃって。今すごくほしいのに、どうやって探して良いかもわからない。それは単純におかしいと思ったんですよね。

鎌田  アンバサダーを務めているPeople treeというエシカルファッションブランドのバングラデシュやネパールの工場に行ったことがあるのですが、工場の隣にだいたいお店があるんです。工場を見学した後だと、生産者さんの顔が浮かんでお買い物が楽しくなります。

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島田  見た後で買うのが一番良いですよね。生産者に対して「作ってくれてありがとうございます」という気持ちになりますし。

鎌田  そうなんです。生産者さんたちに「これ買いました」「大事にします」って言えますしね。

People treeの工場にPeople treeの服を着て見学に行ったら、「I made your skirt!(あなたのスカートを作ったよ)」と各セクションで声をかけられました。
生産者さんたちがすごくうれしそうに言うから、「ありがとう、すごいね」って返事をして。コミュニケーションが生まれるし、スカートに対して愛着も生まれました。

島田  僕たちは、根底の思いに、僕たちのジーンズを長く履いてもらいたいという気持ちがあります。長く履いてもらうためには、品質が良くて耐久性があることはもちろん必要だけれど、「愛着」をもってもらうことが特に重要だなと思っています。どんなに丈夫でも、気に入っていなかったら捨てたり、タンスの肥やしになったりしてしまいますから。
だから商品の「品質」という言葉に「愛着」という要素も含めたいと思うんです。

消費者に「愛着」をどうやったら持ってもらえるのか。それを考えると、僕たちや生産者さんが直接消費者の方とお話しして、背景を知ってもらうことが一番だと思うし、そこにできる限りの力を惜しまずにやりたいと思います。

山脇  それに、消費者の方に会うと、生産者の方も喜ぶんですよね。
さっき見学に行った加工工場の中西さんという職人さんに、先日京都で試着・展示会をしたときに来てもらったんです。
中西さんは日頃ずっと工場でお仕事をなさっているので、自分の加工したジーンズが誰に届いてどんな風に使われているのか、一切情報が入ってこないらしいのですが、展示会で直接お客さんと触れ合えたのが楽しいと言ってくれました。
僕はそれがすごく嬉しかったんです。

もちろんこの取り組みがすぐに利益につながるわけではないのですが、まずはお客さんが喜んでいる姿を、もっと生産者の方に見せたいという思いがあります。

鎌田  試着・展示会によって消費者に会うことで、生産者さんの仕事のやりがいも変わりそうですしね。

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———ものを売るだけではない、新しいファッションブランドの考え方

鎌田 今、エブリデニムは受注販売の方式をとっていますよね。とても良いなと思っているのですが、どうしてそうしているんですか?

島田 試着・展示会を行いながら受注販売の形式をとっているのは、既存のファッション業界の、まずは大量にどーんと何点もコレクションという形で作って、1年に2回のシーズンに分ける2017年春夏、2017年秋冬という形で発表するという形に疑問を感じたということもあります。もちろんコストがそこまでかけられないという事情もありますが。

山脇  1つのシーズンでものを作って、1つのシーズンで消費して、1つのシーズンで捨てていく。1つのシーズンで売り切り、在庫が余って安くなっていくというのに違和感があるんです。

今、「2014年のモデル」などとシーズンなどを気にして買っているファッショニスタって、ごく一部だと思うんです。セールの時は普通の人も気にするかもしれませんが。
それよりも単純にジーンズに出会って「あ、これほしいから買おう」「前からこの形のジーンズがほしかったんだよね」という気持ちで買うことのほうが多いと思います。

そういう消費の仕方をしている人が大多数の中で、シーズンを意識しなくても良いんじゃないかなって。

鎌田 では、今後売り上げが上がっても、過剰に在庫は抱えないという方針ですか?

山脇  そうですね。無駄を作りたくないというのはあります。セールを前提にした価格にもしたくないですし。
もともと、僕たちがブランドを作ってジーンズを作っているのは、ジーンズに生産背景や作り手の情報を商品に託して売るためです。

なのに、大量に作って売るとなると、商品をどこかに卸すということになり、売り子の方が「生産現場のことを知らせたいと思ってブランドを作っている、らしいですよ」と言ってもらうことになってしまうかもしれません。そして、卸先の人に気に入られるような服を作りたくなってしまうかもしれない。
それは本末転倒です。

自分の大切にしていくものをちゃんと見極めていかないと、ぶれてしまいます。それは嫌なんです。ぶれないように、エブリデニムをやっていきたいです。

島田 直販だけだと売れる本数は増やしにくいので、利益が増やせないという意見もあります。でも、「生産現場を知らせたい」という部分は哲学として持っていたいんです。

僕たちは服を売ることだけでやっていこうとは思っていません。
工場さんのリブランディングをしたり、情報発信を手伝ったり、求人のお手伝いをしたりと、いろんな方法でビジネスとして組み立てる方法はあると思っているんです。

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———「早い、安い、たくさんつくれる」以外の合理性

鎌田  既存のファッション業界の仕組みを鵜呑みにしないというのは、おもしろいですね。それにちょっと関係するかなと思うのですが、ファッション業界で今考えられている「合理性」に、私は疑問を感じているのです。

今日、加工工場のニッセンさんで、岡山・児島でデニム産業が発達した理由を教えてもらいましたよね。
「児島はもともと島だったから土に塩分が多かった。塩分が多くても育つ植物として綿花が育てられ、綿花を使った帆布を作っていたから、ジーンズ工場を日本で最初に作る際に、綿製品で丈夫な布を作っている土地である児島が選ばれた」という話。
あの話を聞いて、岡山・児島でジーンズを作るのって、とても合理性があることだったんだなと思いました。

今、ファッション業界では「あそこなら早く、たくさん、安く作れる。だから儲かる」という判断で生産地を選ぶことが合理的とされています。でも、何が本当に合理的、つまり“理にかなっているのか”をもっと考えてもいいはずだなと感じます。

風土とか、気候とか、伝統とか、そういう土地に根ざした強みを無視して、世界中どこでも同じルールを持ち込むのが本当に合理的なのか、疑問に思います。
私は徳島出身だから、もっと徳島のことも勉強して、土地に根ざして育ってきた産業や文化をを発信していけたら良いなと思っているし、それぞれの人が自分に関係のある土地の、そこに根ざした合理性を主張していけたら良いなと思いました。

山脇  そうですね。日本でジーンズを作ろうとしたら、岡山でやるのが一番合理的です。なんといっても、これだけの文化や技術があるのですから。もちろん、伝統があるからといって単純な形で守りたいというよりは、新しいものも取り入れながら、工場にインスピレーションも持ち込みつつ、やっていけたら良いなと思っています。

島田 今度ありちゃんと一緒に作るコラボレーションのジーンズもその一環です。

鎌田 それはすてき。楽しみです!

———後編へ続く

Interview/Text: FELIX清香
Photo: 轟佑弥

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