脱「お金持ちが幸せ」論。自分の頭で考えて選び、直接幸せになろう!マエキタミヤコ×鎌田安里紗

2016.08.09

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ギャルモデルであり、現役・慶応義塾大学大学院生でもある鎌田安里紗さん。10代、20代を中心に支持を集める彼女はエシカル・プランナーでもあり、多数のファッションブランドとコラボをしたり、「エシカル」に興味を持ってもらえるようなイベントやスタディ・ツアーを手がけたりと、様々な形で発信をしています。

今回、そんな彼女が「この人の発想はこれからの暮らしを考える上でヒントになりそう!」と感じた人たち10人に突撃インタビュー。生活のこと、暮らし方のこと、自然との関わり合いのこと、自分を大切にすることなどについて、じっくりお話を聞いていきます。

第7回目のインタビューのお相手は、コピーライターのマエキタミヤコさん。持続可能な社会をつくるための環境広告会社サステナの代表であり、「100万人のキャンドルナイト」、「ほっとけない 世界のまずしさ」など、「今、伝えるべきこと」をクリエイティブに表現し、社会に伝えていく活動をなさっています。

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コンフォーミストを脱して、自分の頭で考えよう!

鎌田 今、私は芸能活動をしながらフェアトレードや、エシカルファッションに関する情報発信をしています。
その発信を受けて、「日々手に取るものが変わった」と言ってくれる人や、「フェアトレードやエシカルブランドのものは高い」「好みのデザインがない」といったことを伝えてくれる人もいます。

ただ、私が伝えたいのは「行動」だけでなく、もっと根っこにある「発想」や「物事の捉え方」を変えるということなんです。
例えば、ファッションで言えば「エシカルファッションブランドの服を買う」だけでなく、「持っている服を長く大切にする」「自分でリメイクしてみる」といったこともエシカルなファッションの在り方です。
そういったエシカルでサステイナブルな視点を持って、ひとりひとりが自分なりの暮らしをつくっていくことが大切だと考えています。

マエキタさんは、環境広告社という、社会をちょっとすてきに変えていくための活動を様々な視点から実践されているので、その根底にある発想を聞かせて頂きたいと思って、お話を伺いにきました。

マエキタ なるほど。コンフォーミズムという言葉を知っていますか?
ドイツでよく使われ、英語にもなっている言葉です。「順応主義」とか「権威従属主義」と訳されるんだけど、噛み砕いて言うと、「偉い人の言うことに素直におとなしく従う主義」を意味します。

ドイツでは第二次世界大戦後に国作りをするときに「私たちは二度も世界大戦をして二度も負けたのはなぜだろう。それはヒトラーだけのせいだろうか。いや、それだけではないだろう」と省みて、当時のドイツの教育方針は、ヒトラーのような独裁者を暴走させやすい教育だったので、二度も敗戦国になった。
この教育方針を自ら徹底的に改め、ドイツの民主主義を育てないといけない、という結論に達したのね。その当時のドイツの教育方針というのが、コンフォーミズムだったんです。

ドイツでは子供たちの学力を高め、ヨーロッパでの地位を高めようと、産業革命以降の工場で生産性をあげるために使われていたコンフォーミズムを学校に適応しました。「学校の工場化」とも言われます。
工員さんが工場長の指示を真面目に聞いて、軍隊のようにビシッと規律正しく行動すると、生産性が上がるでしょう。だから、「上の人の指示に従って行動する」という状態を正しいドイツ人の姿と設定して、人々を教育したの。
その結果、ドイツは生産力も高いし、学力も高いし、真面目で勤勉で正確な機械や時計を作れるようになりました。

鎌田 自分で考えない人々を育てようと教育を整え、それに成功したのですね。

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マエキタ そうなの。ものすごく成功したんです。
でも、コンフォーミズムで生活していると、独裁主義や全体主義に歯止めがかからないから、その結果ヒトラーを生んでしまった。
だから、戦後は脱コンフォーミズムを掲げて、教育と政治を徹底的に変え、民主主義を育てようと奮闘したそうです。

「自分の頭で考えて、自分の意見を周りの意見を恐れずに発言する。そういう子がいい子だ」と教育の現場で、設定を切り替えたんです。

鎌田 今度は、思考停止が起きないような教育に変えたのですね。

マエキタ そう。でも、日本ではドイツとは違って戦後にそういう根本にまで踏み込んだ転換がなくて、未だにコンフォーミズムが美徳として残っているように感じる。
自分の頭で考える子どもを評価する軸が弱々しくて、間違えなく◯×を付けられる子どもの方が優等である、という考え方がいまだに教育現場では根強いのではないでしょうか。

だから私は大学で授業をするときには、最初の授業でコンフォーミズムの説明をして、「つまり、質問しろってことだからねー」と言います。
東大でそう言ってから授業をやって「じゃ、質問は」と聞いたら、全員が一斉に手をあげたのでびっくりしました。さすが(笑)

鎌田 すごい(笑)

マエキタ コンフォーミズムで行動する人をコンフォーミストというのですが、国連などの国際的な会議では「あいつ、コンフォーミストだぜ」っていうのは悪口なんですよ。

鎌田 「自分の頭で考えていないやつ!」ってことですか? 

マエキタ そうそう。国際会議の場では、権力におもねる嫌らしいヤツ、自分で考えないヤツ、コンフォーミストと呼ばれたら不名誉だという共通認識があるらしい。
でも、日本だと、コンフォーミストの話をしても「なぜそれがいけないことなんですか?」と質問してくる人たちもいるんですよね。
「そういう人が世の中を守ったり、進めたりしているのだから、いいことなんじゃないですか」って。

鎌田 私も芸能活動をやっていて思うのですが、マスコミの情報を好んで受け取って、何も咀嚼せずにすぐに取り込んでしまうことはもったいないし、危険だなと思います。
ただ、いきなり「全部自分で考えようよ」って言ってもなかなか難しいですよね。

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私たちはみんな、もっと自由だ。自由をしっかり研究しよう

鎌田 ただ、コンフォーミストになりたくないと思ってはいても、周りに同調してしまう人は多そうですね。

マエキタ そうだねえ。自由を「自分の手が届かないもの」と思っている人が多いのかもしれないですね。
例えば女の人がテレビで何か発言をすると、「あの人はテレビに出ている人だから言える」「あの人は美人だから」「あの人は本がもう十分に売れているから」と、発言者を特別扱いしてしまう。

政治や安全についての話題が盛り上がっても、「有名人に乗じて自分の意見を言うのはおこがましい」とか、「分別をわきまえない人だと思われるから意見は言わない」と反応する人が多かったらしくて、とても驚きました。
それだけ教育がまだコンフォーミズムから脱していないということなのでしょう。

ちょうど先日は全国高校デザイン選手権という、「高校生の視点で見つけた社会課題を、こういう方法でみんなのモチベーションを高めて、変えていきます」というコンペの審査員の仕事をしてきたんです。

そこで気になったのは「社会を良くするために何かする」という企画の幅や結論の傾向。
企画の中で多いのが「校則をなんとかしたい」。社会問題を考えてほしいところが学校問題になっている。
解決法でびっくりさせられるのは「◯◯を強制する法律を作る」。そう考えたくなる気持ちはわかるけどね。強権依存なのかなあと暗澹とした気持ちになってしまいます。


自治という概念が矮小化されすぎているし、国の役割や民間の役割を履き違えている。
最初の発想のところで「社会をデザインする」ということ自体がイメージできない人が多いようなんです。民主主義教育が足りない感じがします。

自分で「特定前提」を作ってしまって、それにがんじがらめになってしまっている。「ああ、そういう風に私たちは、はまっていくんだな」と感じました。

鎌田 「特定前提」という言葉はおもしろいですね。自分で前提を作って、自分でそこにはまって身動きが取れなくなってしまう。

マエキタ そう! 人って意外に自由なんだよ、本来ね。
よく学校の先生が「権利と自由を履き違えるな」とかって言うじゃない? でも、自由と権利と責任って本当は同じことなんですよね。
私は、むしろ「履き違えろ!」って言いたい。トライ&エラーをして学んでほしいから。

自由に何かをして誰かに迷惑をかけたら、誰かが悲しむ。そういう経験をすると、「だったら、それはやめよう」って思える。
やってみないことにはわからないし、それを自粛してほしくないの。

自由に生きるってことは幸せなことなのだけれども、自由には代償もあるし、自由を研究することは「どうやったら自分が幸せになれるのか」を考えることにもつながる。
だから、お金を儲けようとするのと同じくらいのエネルギーで追求して、自分の頭で考えてほしいですね。

鎌田 「自分の自由」、「幸せ」についても脱コンフォーミズムということですね。

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社会貢献は経済的に成功した人にだけに許される特権なんかじゃない

マエキタ 今、多くの人がエシカルとかオーガニックとか、環境保全とかサスティナブルということを意識し始めているけれど、突き詰めて考えていくと、それは自由の問題、つまり「何が幸せか」という話でしょう。
でも、どうしても今は「お金を儲けてから、自由になろう。お金を稼いで幸せになろう」という、「間接的な幸せ」にとらわれている人が多いんですよね。
だから、15年くらい前に「直接幸せになろう」というスローガンを自分で自分のために作りました。

鎌田 「間接的な幸せ」って、おもしろいですね! 今は多くの人が「まずお金を稼がなきゃ」と考えていますよね。
それが幸せへの道だと多くの人が信じている感があります。

マエキタ 既成概念が大きいですよね。おじさんたちが「お金を稼ぐことが大事」と言うから、優等生たちがそれを成功モデルだと思ってしまうのでしょう。
お金がたくさん儲かることは目に見えやすくてわかりやすいから、成功のインディケーターになってしまっていますよね。お金を稼ぐと、先生や親など周りの人に褒めてもらえるし。

でもね、この頃では国連でも新しい豊かさの経済指標ができました。新しい国の富という名前の「新国富」指標です。
このGDPに代わるといわれる経済指標はけっこう面白い。持続可能性や生物多様性、教育や福祉も国の豊かさとして算出します。


とにかく既成概念よりも自分の感性が大事。どっちがすてきでどっちが心地良いか、どっちに憧れるかを考えてほしい。

鎌田 それは本当に大切ですね!

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マエキタ ただ、アウトプットが似てるんだよね! きれいになって自分が気持ちよく生きていきたいと思う女の子と、「結局はお金だよ」っていう男の子に見初められて結婚して経済的に文句のない生活が送るために、きれいになろうと思う女の子の両方がいる。
そして、そのアウトプットが似てるの! だから混同しちゃう。

鎌田 背景にある考え方が違っても、結果としては同じように見えてしまうということですね。
だから「けっきょくはお金だよ」とすべてを諦めてしまう人がすごく多いように思います。

マエキタさんご自身は、お金がないからこれができないなと思ったことはないのですか?

マエキタ もちろん持続可能性のためにはお金は必要だったりするし、1億円くらいほしいなというのはありますよ(笑)。
でも、それは目的じゃなくて途中経過であり、手段。手段としてのお金は必要だけれど、目的じゃないんです。そこの違いだけ。それだけなんだけれど、大きく違います。

社会貢献事業は、必要だと伝えることができれば、寄付や税金や基金など、自分が所有している資金を超えて、調達が可能になることがあります。
もちろん全部ではありません。理解が徐々にしか進まず、なかなか資金が集められなくて、やきもきするときも多いです。


それに、お金持ちが本当に持っているお金の順に幸せなのかもわからないよね。
超高級マンションに住んでいた友達が以前に「なんか周りに住んでいる人たちがみんな不幸で、幸せな人が一人もいない」って教えてくれたことがあったの。
お金を使って得られる幸せって以外とバリエーションが少ない。海外旅行にたくさん行ったり、高いものを買ったりしても、際限なく幸福度が上がるわけではないし。

「とりあえずお金持ちにならなくちゃ、稼がなくちゃ」という学生がときどきいるけれど、100億円あって時間もあったら何をしたいか聞くと、だいたい困っちゃうんですよ。
それで最終的には「人道支援をする」とか、「寄付する」とか言うんですよね。
最終的にそれがやりたいなら、「お金持ちになる」を経由しなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。

鎌田 たしかにそうですね。15年前にスローガンを作ったのは何がきっかけだったのですか?

マエキタ ビル・ゲイツが財団を作ったことかな。世界における病気・貧困への挑戦を主な目的として、NGOの支援などをし始めました。
一見、NGOとお金持ちというのは真逆の方向を向いて走っているように見えますよね。NGOは他人のほうを向いていて、お金持ちは自分のことだけを考えるような人なんじゃないかって。
でも、ビル・ゲイツのようにお金持ちになってくると、NGOの向かう道に合流してくるんですよ。NGO職員が食費を切り詰めながら生活しているところへ、どーんと寄付とともに合流してきたりする。本当の豊かさが語れる仲間がどんどん増えて行く、そんな感じ。

「自分が生きていく分にはもう何も困らないな」と思った時に、人は「戦争を止めたい」とか、「戦争の理由になる、貧困や外交の不和などを解決したい」と思うようなんですよね。
それって、国連のテーマと同じ。結局みんな最終的にやりたいことは一つで、「人類生き残りの道」を探求するんだなあって。

今の時代、みんなが一生懸命に力を合わせていかないと滅亡しちゃうのよ、私たち。
だから、お金を稼ぐことを真っ先に考えるよりも、何が自分に向いていて、成果をあげられそうなものを選んでやるのがいいだろうなと思うんですよね。

自分はお金儲けが得意ならお金儲けをしてもらって、お金をゆくゆくは「人類生き残りの道」へ回す。
でも、調査が得意なら「人類生き残りの道」に役立つ調査をするとか、人前で説明することが得意ならそれをやる。そういうふうに自分の生き方、幸せを考えればいいと思うんです。

それなのに、屈託もなく「お金があること=幸せ」と思っている人が多い。でも、それは間接的なんですよ。お金というのは手段であって、目的ではない。

鎌田 お金持ちになった暁に、何にお金を使って幸せになるかを考えたらいいですね。そうしたら、自分が本当は何がやりたいかがわかるかもしれないですね。

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すべてを疑うこと。世の中けっこう残念な「穴」が多い

鎌田 今はお金を稼ぐことが「目的」になっていることが多いですよね。
それに気づいていない人が多いし、気づいたとしてもどうしたらいいかわからない人が多いのではないかと思います。
先ほどの「特定前提を作って、そこに自らはまり込んでしまう」という人たちと根は同じだと思うのですが、何か乗り越える方法はあると思いますか?

マエキタ そういう人たちは、「選択肢は他にない」と思い込んでしまっているのでしょうね。
選択肢を知らないし、知ろうともしない。それを変えるには「すべてを疑う」ってことが必要。「これはなぜこうなっているんだろう」ということを常に考える。

例えば、「パラボラアンテナは、あの形にする必要はあるのかな?」とか「太陽光パネルはこの形でなければダメなのか?」とか。
実際、よく調べてみたらその形に意味はなくて、最初に作った人がその形を好きだったから、ということはよくあるんですよ。

法律も、なぜこうなのだろうと疑問を持ってどんどんたどっていくと、多くの場合に「全部人為的なんだ」っていうのと「たまたまそうなんだ」っていうのと、「あ、間違えちゃったんだ」というのがあるんです。

鎌田 えっ! そんなことがあるんですか?

マエキタ 実はいっぱいあるんですよ。担当が見過ごしちゃったのかなって。ものすごくきちんとしていると思いきや、そうでもなくて。

国際会議ってとてもおもしろくて、途上国の代表の若い女の子が、先進国の代表のおじさんたちに向かって「いったいあなたたち、この問題をなんだと思っているんですか」って諭していたり、やりとりもユーモアも効いていたりするんです。
途上国と先進国が対等に意見を交換し合っているという、国連の現状のスタンスもわかります。

なのにマスコミでちっとも報道されないでしょう? なぜかと聞いてみたら、「先輩方がやっていないから」って言うんですよね。

きっと先輩方がやってこなかったのは、単に勉強不足だから。あるいは、やらなくていいよ、もしくはそんなことするな、といわれていたから。

「報道されないことに興味が持てる人」、これが「メディアリテラシーがある人」なんだけど、それがまだ少ない。
マスコミ版コンフォーミズムが発生してしまって、外国の事情が日本には入って来づらくなってしまっているですよね。

鎌田 そこにもコンフォーミズムがあるのですね。

マエキタ そうなんです。外国の事情が日本にもっと入ってくると、フェアトレードじゃない商品は買えなくなりますよ。申し訳なくて。

鎌田 国際的なことがらに配慮をし始めると、いろいろな問題が見えてきますよね。
なのに、マスコミからの情報がないと、大切な情報が届かない。かなりもったいないし、危険なことですね。

マエキタ そうなんです。一時が万事この調子で、コンフォーミストにあふれていると思うと、この国が今このように立派にやってきているのは奇跡的なことだなと感じます。
でも、残念ながらみんながもう少し頑張らないと、日本がこのまま良い国で居続けるのは難しいだろうと思いますね。

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自分の暮らしを自分が気持ちよくすごせるようにデザインするためには?

鎌田 マエキタさんが「みんながもう少し頑張らないと、日本がこのまま良い国で居続けるのは難しい」とおっしゃる、その頑張りが必要な部分は、どんなところですか?

マエキタ 「まかしておけば安心だー」ってみんな安心してしまっているけど、そんな場合じゃないのよね。さっき言ったように、思いの外「えっ、これミス?」「これって、たまたまだったんだ」っていう穴が多いから。
でも、だからといって幻滅したり、誰かを責めたりしているだけじゃダメ。そんな悠長な話じゃないんです。
いろんな問題に反対する人も賛成する人も、知恵を出し合って協力しなくちゃ。

鎌田 マエキタさんは具体的にはそのためにどんなことが必要だと思っているのですか?

マエキタ 政治参加。投票に行くこと。なのに「私は政治に興味がない」ってしれっと言っちゃう人たちが多い。
2016年から18歳から投票ができるようになったし、日本には投票を習慣づけようとする教育がなかったから、今はそれが気になります。
私は広告を専門にしているので、民主主義教育を受け損なってしまっている人たちに、なぜ投票に行ったほうが良いのかをどう説明したらいいのか考えています。
それが今、一番の関心ごとだな。

鎌田 投票する習慣がないことで、実際にはどんな問題が起きているとマエキタさんはお考えですか?

マエキタ 「こういう社会にしたい」と想像したり、それを表明する人は多くて支持を集めたりしているのに、選挙結果に表れない。それから、政治の暴走も止められない。

戦後70年の間、経済成長をして頑張ってきたと思ったのに、政治については何も考えていなかったことが浮き彫りになってきたのです。
今、政治がやっていることは、実際には経済のことばかり。財政政策とか公共事業とか、経済の後押しばかりです。
それは本来、政治の仕事ではありません。

政治が経済の邪魔をしないということはすばらしいと思います。でも、それは政治の本筋というよりも余興のようなもの。
経済のことは本来、会社や働く人に任せておけばいいんです。どの会社も倒産をしたくないし、良いサービスをしようと頑張るんだから。

人々の消費行動だけではカバーできないところがあるから、税金を集めているんですよ。
その税金は本来、公務員を雇ったり、裁判所を作ったり、公教育や医療を行ったりするものです。
「私たちに任せておけば、安くて良いクオリティでできるから納めて」と政治家が言うから税金を納めているはずなのです。
でも、今は経済の後押し、つまり企業の支援に税金が費やされてしまっています。

鎌田 税金が本来の目的に使われていないのは問題ですね。

マエキタ そうなんです。そして、税金を使ってやったことは、「こうしました」と報告書があってしかるべき。でも、今はその説明責任も果たされていません。

例えば外交などの場合では、その瞬間、その瞬間で国家機密として守るべき情報はもちろんあるでしょう。
でも、「10年経ったら公開します」などと期限を設ければいい。説明する責任は消えないのです。それをしなければ、詐欺みたいなものですよ。
それなのにこれまで、機密の保持の年限も定まっておらず、闇から闇へと文書を葬ってしまおう、というような行いも報告されています。西山事件が有名です。

税金の使い道に対して意思表明をするのが、投票というものなんです。それなのに、多くの人が政治に無関心でいる。「自分たちは無力」だと思ってしまっている。
有権者が、周りの有権者を、つまり、自分たちを自分たちで見くびっているんですよね。

ただ、そうやって無関心でいると、政府が暴走して戦争を初めて他国に迷惑をかけるかもしれないんですよ。そうなった時の責任は日本国民にあります。他国の人々はみんなそれぞれ必死で自分たちの政府が暴走しないようにやってきているんです。
それなのに「いやー、日本政府が勝手にやっちゃって」なんて言えません!
「もう戦後70年も経っているんだから、いい加減に大人になってくださいよ」って他国の人たちに言われてしまいます。

鎌田 私たち有権者には、政府をちゃんと止める責任があるんですね。

マエキタ そう。ちゃんと責任を共有しなくてはいけないのに、「私は政治に詳しくないから」なんて言ってしまう時点で「アウト!」ですよ。

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「へこたれない人たちの村」を作るための伝え方

鎌田 そんな状況を変えるために、今マエキタさんは大学で教育に携わったり、情報発信をしたりなさっているわけですね。
マエキタさんの活動に共感されたり、「こんな社会にしたい」と行動したりしている人たちに、伝えたいことはありますか?

マエキタ 「諦め感を醸し出すのはやめよう」ということ! 私は広告の仕事をしているので不特定多数にどうやって伝えていったら良いかを常に考えているんだけれど、「やっぱり無理だよね、変えられないよね」って思う人が増えたらどんどん自堕落に落ちていってしまいます。

確かに、現実的に考えたらしばらく苦しい状態は続くとは思うのだけれど、ずーっと状況を変えられないわけじゃない。
現実を把握していなくはないけれど、厳しい状況はわかっているけれど、厳しさばかり強調してしまうと、多くの人は諦めてしまうから、「私は諦めないからねー」という、あっけらかんとした土壌を作りたい。

「大変なはずなのに、なかなかあの人たち、へこたれないな」と思われるような人がたくさんいる、村のような一団があると、明るい方向に進んでいくだろうと思います。

鎌田 「へこたれない人の村」ですね。

マエキタ そうそう。それから「難しい。でも頑張る」という伝え方もやめてほしいな。そうじゃないと、マスコミなどに、「難しい」というところだけをつままれて、流されてしまうから。
「難しいけれど頑張る」とひと息で言うことが大事。

理性で合理的に判断している人たちもいるけれど、感覚で判断している人たちも確実にいるんですよね。感覚に訴えることで、やってみようかなと思う人たちがいる。
その人たちが見ているのは、元気かどうか、明るいか、楽しそうか、盛り上がっているか、不幸な目に遭っていないかということ。

だから、一生懸命に未来を見据えて行動していて主義や主張がかち合うことがあっても、喧嘩しないでほしいと思います。喧嘩しても、せめてオチは笑いで締めてって。

鎌田 それ、とても重要ですよね! エシカルやフェアトレードを語ろうとすると、負のオーラが漂ってしまうこともありますが、それよりも「そっちに移行したい」「すてき!」って思われるような伝え方をしていく方が良いですよね。

そういうスタンスが、マエキタさんの広告などに表れているように思います。「100万人のキャンドルナイト」など、思わずやってみたくなる楽しさがありますもんね。

マエキタ 「わからないやつはほっとけばいい」とか、「何か悪いことが起こっても自業自得だ」、「なんで自分がお願いしなくちゃならないんだ」なんて言ってしまわずに、ちゃんと「お願い」のスタンスをとって、不特定多数を巻き込むのが大事だと思うんですよね。

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選挙は自分にとってのより良い未来を買う「お買い物」

鎌田 ところでマエキタさんは暮らしの中で、洋服や食べ物などを選ぶときに気をつけていることはありますか。

マエキタ 衣食住に関しては志のある企業や作り手のものを買うようにしています。
オーガニックで物を作る人たちをなるべく勇気づけたいと思っているので、食べ物は添加物や農薬を使わずに頑張っている人や会社のものを買うようにして、シンプルな調理料で食べています。
日本自然保護協会という世界的にも老舗のNGOの方が教えてくれたんですが、日本は一次産業を守れば自然が守られる国なんですって。だから、支えないと。

お米は石川県の渡津蛍米という、平家蛍が済む田んぼで作ったお米を買っています。それを作っている大田豊さんという方が、非常に頑張っているんです。
「田んぼの畔かきをすると蛍の卵が潰れちゃう」とか、「街灯をこっちに向けると蛍が交尾をしなくなっちゃう」とか、いろいろと蛍の生態に配慮しながら作っているお米がとてもおいしいので、それを買っています。

大田さんは、その地に「蛍の里」を作りたいんですって。
蛍を守るために、少し離れたところに車を置いてもらって、そこから明かりをつけずに蛍を見に行って、その後に「こんな場所で取れたお米です」とお米を買ってもらうという方法をとりたいそうなんです。
でも、まだ道のりは遠いから、それができるまでは買って支えます。

鎌田 すてき! 「買って支える」って大切ですよね。そうやって1つの農家が成功していくと、それがロールモデルとなって周りの農家に波及していきますし。
「買って支える」ということはフェアトレードやエシカルファッションの基本ですし、お買い物は投票だとも言いますよね。

マエキタ そうなんです。でもまだ買えるところが少ないし、特に志のある農家さんや会社、職人さんたちはメールを使ってなかったり、パソコンも持っていなかったりするから、「品品」というWEBのセレクトショップを立ち上げました。

鎌田 いいですね! 先ほどの渡津蛍米などもそうですが、「なんておもしろいんだろう」と思うような、志のあるものって、実はたくさんあるんですよね。

マエキタ それが日本のすごいところでもあるし、使命でもあると思うんだよね。
そういうストーリーのある商品を持つ国は世界中にたくさんある。でも、その話を聞いて「わあ、すてき!」と買い支えられる人がたくさんいる国は珍しいんですよ。

それに、日本は生物多様性が非常に豊か。人参や大根、葉物も、名前も違えば形も違うようなものがたくさんある。そういう国ってまずないですからね。ヨーロッパなど、どこの市場に行ってもジャガイモ、トマト、玉ねぎ、パプリカと、同じものばかり。多少サイズや味が違うくらいで大差ないんです。

考えてみたら、日本ってそういう意味でも奇跡的な状況にいるんですよ。この状況は世界に広めていかないと。そういう使命があるんです。

鎌田 もっと買い支えていかなくては、と思いますね。
ファッションはどうですか? 今、食品も洋服もどこで誰が作っているかという過程が見えずに目の前に商品としていきなり現れてきてしまいますよね。
だから、物を買う時に食費や洋服の裏側に思いをはせにくいんですよね。

私は、ピープルツリーのアンバサダーをやらせていただいているのですが、昨年、代表のサフィア・ミニーさんとネパールに行って、生産者の方々と会ったのです。
服作りの現場の様子や「こういう人が作っていました」と報告すると、それを聞いた人たちは驚くし、喜んでくれるんです。
そういうことがもっと広まったらいいなと思っています。

マエキタ いいね! そういうものを買って着ることは自信を持つことにつながるしね。それに、有権者が自信を取り戻すきっかけにもなりますね。
お買い物と投票は似たようなものなんですよ。お買い物をしない人はあまりいないけれど、商品を買うときには選ぶでしょう? 

社会を良くするお買い物ができるんだったら、社会を良くする投票だってできるはず。投票は、よりよい未来を買うお買い物と同じなんだから。

鎌田 そう考えるとおもしろいですね! 

マエキタ エシカルショッピングで練習して、投票は本番だと考える。これですね。

鎌田 投票で自分にとってのよりよい未来を選ぶために、自分にとってよりよい未来につながる商品をお買い物で選んで、投票の練習をする。勉強をしながら私自身もやってみたいと思います。
おもしろいお話、どうもありがとうございました。

Interview/Text: FELIX清香
Photo: 保田敬介

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マエキタミヤコ

コピーライター、クリエイティブディレクターとして、97年より、NGOの広告に取り組み、02年にソーシャルクリエイティブエージェンシー「サステナ」を設立。「エココロ」を通して、日々、世の中をエコシフトさせるために注力。「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表・幹事、「ほっとけない 世界のまずしさ」2005年キャンペーン実行委員。京都造形芸術大学・東北芸術工科大学客員教授、京都造形芸術大学・東北芸術工科大学客員教授、放送大学・上智大学非常勤講師。「フードマイレージ」キャンペーン、「いきものみっけ」、「エネシフジャパン」「グリーンアクティブ、緑の日本」などをてがける。

http://maekitam.tumblr.com

鎌田安里紗

かまだ・ありさ/モデル、タレント
1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に単身上京。在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。現在は同大学の大学院に進学、芸能活動も続けている。途上国の支援活動に関心が高く、自身のブログでも情報を発信。JICAの『なんとかしなきゃ!プロジェクト』のメンバーにも選出され、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。ニックネームは「ありちゃん」。

http://qreators.jp/qreator/kamadaarisa

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