あなたの「ミニマムライフコスト」はいくらですか?四角大輔さんが教えてくれたこと【後編】

2016.3.16

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前編に引き続き、アーティストインキュベーター、執筆家、ライフスタイルデザイナーとして活躍する四角大輔さん と、鎌田安里紗さん の対談【後編】をお送りします。

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これからの時代にすべき、心と体が喜ぶ“自分のため”のお買い物


鎌田 ノイズに負けないことが大事ですね。お買い物も、よく考えないと。四角さんは、食に関しては自分で大部分をまかなっていますけれど、自分で作れないものを買うこともありますよね。どういう基準で判断しているのですか。

四角 ぼくはまず、物を極力持たないようにしている。100円使ったら100円分の命を使うということになると思っているから、たとえ100円でも安易に物を買わない。食べ物だけでなく、物もすべて大地からのいただき物で「命」だから。

今の日本は、アメリカ型の「大量消費・大量生産」の国になっているよね。食料廃棄率も50%と半分も捨てている。ゴミを出す量は世界2位で、ゴミ処理場の数も世界一。おかしいでしょう? こんな小さな国で。だから、まず買わない。何か買うとしたら、墓場まで持って行く覚悟で買う。

それからフェアに作られているかどうかも気にしている。たとえばファスト・ファッション。ものすごく安いでしょう。異常に安い物は、〝人の道を外れた方法〟で安くなっているかもしれない。綺麗事ではなく、フェアに作られている物を食べたり身につけたりすると、体はもちろん、シンプルに「心」が喜ぶよね。
フェアなものを買うのは、パフォーマンスを上げるための5点セット「自分に正直に生きること」の一つね。ぼくらの肉体は有機体。つまり大地からの授かりものであり、自然の一部。だから、心の底から〝魂レベルで望むこと〟というのは、地球や人間を傷つけることには絶対につながらないはずなんだ。

鎌田 ただ、若い子は現実的な問題としてお金がなくて、ファスト・ファッションに頼ってしまうこともあるのではないかと思います。
私は、どうしても本当に心のそこからそれが欲しくて仕方なければ、買ってもいいと思うんです。ただ、買ったら長く使う。めちゃくちゃ大切にする。それが大事かなと思います。

四角 それ、すごくいいね! 若い子たちにとっては素晴らしいメッセージだと思う。ぼくはレコード会社勤務時代、NZに移住するという目標があったからお金を本当に使わなかった。そのときに活用していたのは、古着、リサイクルショップ、古本。
古着はいいよ。流行に左右されないから、個性を表現しやすいし。

鎌田 スウェーデンにはロッピスというフリーマーケットがあって、若者の間に定着しているらしいんです。クラブとかでも開催されていて、「週末にロッピスに行こう」って誘い合うのが若者の間に定着しているんですって。
そういうポップな古着カルチャーが根付くといいですね。

四角 いい! さすがスウェーデン! 日本にも、もともとリサイクルやリユースの伝統的な〝美意識〟はあるんだよね。
例えば着物。着物って、代々受け継がれて100年というスパンで着れるでしょう。日本は資源が少ない国だからこそ、こういう文化があった。なのに今では大量消費・大量生産の哀しい国になっちゃった。

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行為も物も「循環」させていけばいい


四角 NZには古着ボックスというものがあって、そこに古着を入れておくと、NPOが回収して古着屋さんで売り、売り上げをピンクリボンなどに寄付するという仕組みがあるんだ。これはいいよね。古着のいい循環ができている。何事も、循環するものは美しいよね。

鎌田 そういえば、以前にNZの四角さんの暮らしでは、優しさが循環する話をしていらっしゃいましたね。リンゴの木の話。

四角 ぼくのお隣さんは、ヘイデンという「ツリードクター(木のお医者さん)」なの。あるとき、ぼくが庭で作業していたら、「大輔、これはこうやって切るんだ」って、その場でいろいろとやってくれたから、彼が好きな日本酒をお礼に持っていったんだ。そうしたら「ええ!? こんなええもん……おれ、物を贈られるのが苦手で……でも、ありがとう」とかキョドキョドしながら言ってるの。

それを見てたら、ものすごく癒されちゃって(笑)。喜んでくれてよかったなって。その後、少し経って庭を見たら、「剪定が一番大変だなー」って思っていたリンゴの木が超きれいに剪定されている。「これ絶対にヘイデンだ」って思って聞いてみたら、「おお」ってしれっと言うんだよ。

だから、海で1mくらいのヒラマサを釣ったときに、お礼にって持っていったら、ヘイデンはまたキョドキョドしている。その後、また、気づいたらプラムの木が剪定されてたりするの。永遠にお礼ができない! 返せない!(笑) NZにいると、ぼくはいつももらいっぱなしなんだよね。

鎌田 すてき。NZの人たちって、どうしてそういうことができるんでしょうか。

四角 一つには、NZの先住民マオリ族の「MANA(マナ)」という考え方があるだろうね。マナは、日本語でいうと、「徳」みたいな感じかな。マオリ族はこう考えているんだ。

人間は、マナをたくさん持って生まれてくる。間違いや罪を犯すとマナは減ってしまう。つまり普通に暮らしていると、マナはどんどん減っていくのだけれど、人に何かをして感謝されるとマナは増える。だからマオリ族にとっては、無償で何かを与えること、誰かに感謝されることがとても重要なんだ。物の量だけでは計れない豊かさがあるよね。

「Give & Take」の発想だと、何かをしてあげたら、同等のものを返してもらいたいと思ってしまうかもしれないけれど、マナの発想だと、「ありがとう」と感謝されればその時点でOK。マオリ族だけではなく、先住民の価値観って、世界中どこでもそうだったんだよね。はるか昔の日本もね。

鎌田 今の日本だと「与えること」は自分のものが減ってしまうというマイナスのイメージがあって、見返りを求めてしまうこともあると思います。日本でもそういう発想で生きていくためには、どうしたらいいと思いますか? 

四角 日本でもできるよ。NZに行ってからそういう文化が自分にも定着したから、日本でもやっていると、全員ではないけれど、反応する人がたくさんいる。怖がらずにニコニコと与え続けていると、必ずどこかから返ってくる。
たとえばトークライブなどで人前で話すと、エネルギーを放出するから疲れちゃうのね。でも、みんなのうれしそうな顔を見たり、感想をもらったりすると、うれしさで心が充満されていく。結果、受け取ってる量の方が多くなってると感じるんだ。

鎌田 物のやりとりよりも、行為の循環のほうが始めやすいかもしれないですね。

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自分の「ミニマム・ライフコスト」はいくらか? お金も「循環させるべきもの」として考える


鎌田 自分が誰かに何かを与えても減らないし、与えることで気持ちよさを味わえる。安心して人に与えるような行動を実践していたら、巡り巡って返ってきて、気持ちのよさが連鎖する……。
ただ、お金に関しては、今までのイメージが大きすぎて、なかなか難しそうです。

それから、四角さんのおっしゃる「アーティスト状態」になろうと、自分の言語化できない衝動で何かをやろうとしても、親から「そんなことやっても生活できないからやめなさい」と言われたり、経済的にうまくいかないから自分の行動を抑えたりする人も多いですよね。
そういう意味でも、「お金」というものは本当に厄介だなと思うんです。

四角 お金も本来は循環する「エネルギー」なんだよね。けれど、資本主義が行き過ぎてしまった結果、マネー至上主義みたいになってしまって、お金が滞って循環しなくなってきた。
たとえば、世界の1%の超富裕層が世界の富の半分を持っているというような話を聞くでしょう。そういう話を聞くと、一度手放したら、お金は戻ってこないんじゃないかという不安が出てくるよね。

鎌田 それにお金を持つことが人生の目的のようになってしまっているから、お金が出ていくことが怖いんですよね。
お金を持って何をしたいのかっていうことまで考えると、「あ、私が求める人生に、実はお金はそんなにいらなかった」ってわかるのに。
自分の衝動とか、沸いてくる気持ちをちゃんと認識していると、それをやるにはこのくらいのお金が必要だとわかるけれど、先に「お金を稼ぐのが正しい」という情報が頭に刷り込まれてしまうと、衝動もわからなくなってしまいます。

四角 そういう人にいつも、自分と家族が健康に暮らすための最低限の生活費を把握しておくといいよってアドバイスするの。
それを、ぼくは「ミニマム・ライフコスト」と呼んでいて。たとえば、ぼくは今NZにいて自給自足に近い生活をしているから、もしそこで365日暮らすなら、年間60万円あればやっていける。
そうすると月に5万。連載記事を2本書けば、まかなえちゃう。たとえば、2本書くのに2日かけるとして、あとの28日は好きなことをやって暮らせるわけ。
できる限り長い期間、自分が好きなことを楽しんで夢中になっていると、不思議なことに結果として、お金という大きなエネルギーで返ってくるんだ。

ぼくはお金には種類があると思っている。美しいお金と汚いお金。誰かから奪い取ったり、嘘やずるで貯めたお金は醜いもの。そうやって稼いだ人はたいがい不幸になってしまう。後ろめたさとか罪悪感って、確実に心を蝕むからね。

でも、「心から気持ちがいいと思えること」にお金を使うと、そのお金は美しいお金としてエネルギーの循環に乗っていく。たとえば、大切な誰かのためにお金を使う。そうすると、必ず「お金という美しいエネルギー」となって返ってくるんだ。

鎌田 すべてのことを循環で考えるといいのかもしれないですね。

四角 瓶、缶、プラスチックのリサイクルものね。
ぼくは、「Give & Give」や「与え合い」というより、「ペイフォワード」もしくは「循環」という方がしっくりくるな。

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若者を中心に、今、確実に世の中は良い方向に進んでいる


鎌田 ところで、四角さんは自然や過去からの思想を大切にする一方で、テクノロジーをちゃんと取り入れていますよね。そこがすごくいいなと思うのです。
エコロジーとかエシカルを大切にする人のなかには、テクノロジーを否定する人もいます。たしかに行き過ぎたテクノロジーはいらないのだけれど、テクノロジーを利用したほうがサステナブルな時もあるのではないかと思うんです。
四角さんはどういう基準でテクノロジーを取り入れているんですか?

四角 テクノロジーも科学も、本来は「人を幸せにするために生まれている」と思っているの。ただ、行き過ぎてしまうと人間を苦しめてしまう。
「そもそも人を幸せにするものだ」ということを常に意識して、テクノロジーを採用する時には「これは便利だけど、人を不幸にしないか」と考える。不幸にするようなものだったら手を出さないようにしている。

鎌田 便利なだけでは使わないということですか?

四角 そう。ぼくは今、人間に可能性を感じているんだ。今、確実に世の中は良い方向に進んでいると感じている。たしかに、社会問題は山ほどあるけど、ぼくたち人間が、ただこの星を破壊するために生まれたとは思えない。

人間だから間違いは犯す。今は素晴らしいNZも、過去には間違いを犯して反省し、行いを改めた結果、今は自然を保護したり先住民をフェアに扱ったりと、失敗を生かして「未来の国」と呼ばれるほどのモデル的な国になっている。人類全体が、NZのようになっていけると、ぼくは信じているんだ。

テクノロジーを生み出す人、使う人が〝自身の良心の声=魂の声〟を聞いていけば、良い方向に確実に変われる、ちゃんと転換すると思っていて、それを感じているんだよね。「変わり始めている」って。

鎌田 どういうところから、そう感じるようになったんですか?

四角 東西の冷戦が終わったことがまずは大きいかな。当時は、無数の核弾頭をお互いに向け合っていて、誰かが発射ボタンを押してしまったら世界は絶滅確実。そんな、とんでもない恐怖が常にあった。今だって地球を5、6回破壊できる核は残っているし、世界のどこかで常に紛争は続いている。でも、冷戦時代のような恐怖はなくなったし、世界を全て巻き込むような戦争はここ70年起きていない。

それから、インターネットの登場がもっとも大きいね。マスメディアは、ある一部の人だけが発信できる、〝大衆を洗脳するためのツール〟だったけれど、インターネットは違う。
インターネットって、黎明期にヒッピー文化の「Power to the people(マスではなく個人に力を)」という概念の影響を強く受けているんだ。安里紗はソーシャルメディアネイティブだから、自分で発信するのが当たり前でしょう?

鎌田 そうですね。私が中高生くらいの時から、ブログで発信するのは当たり前でしたね。

四角 インターネットによって、個が自分を表現できるようになってきたし、距離に縛られず人間同士が繋がれるようになったよね。まだまだガセネタやデマも多いけれど、情報にどんどん透明性もでてきた。

それから超ケミカル、超大量消費・大量生産に振り切った反動からか、実は日本の畑のオーガニック率も5、6年前に比べたらかなり増えている。まだまだ微々たるものだけれど。世界中でも増えているんだよね。

鎌田 全体的に見ると、少しずついい方向に変わってきているんですね!

四角 そう。それから若い子と話すと、さらに変わってきていることを体感できるよね。一部の大人は、「若い子が物を買わない」「若者が草食系になっている」というけれど、ぼくは若い子たちの方が正しいと思っている。
今の日本社会では子供を作りたくなくなるのはしょうがないとも思う。

若い世代は本能的に、「このままガソリン車を使い続けたらダメじゃない?」と思ったり、経済成長のために物を大量消費したらダメだと本能で感じている。
だから話が通じやすい。オーガニックに興味のない若い子も、ぼくの話を聞いてくれたあとすぐに変わってくれる。おじさんたちを変えるのは、なかなか難しいけどね(笑)。

鎌田 おじさんたちは変われないんでしょうか。

四角 変えたいけどね。「子供のために」「孫のために」という理由があれば、変われると信じたい。ぼくから言っても聞いてくれないだろうけど、たとえば、「そっか、孫の安里紗がそういうんだったら、俺は協力する。俺には理解できないけど、お前がそこまで言うんなら」って。かわいい安里紗のためなら、意味がわからなくてもやってくれるでしょう。

鎌田 (笑)。ちょっとずつ低消費&循環重視の生活と、心と頭が連動することの大切さが、若い人たちを中心に浸透していけばいいですね。

四角 そのためには、ポップでスタイリッシュで楽しそうに見せていくといいよね。

鎌田 たしかに! 楽しそうだという理由で巻き込まれていっても、残っていく人は確実にいるでしょうしね。未来が楽しみになってきました。
今日はどうもありがとうございました!

Interview/Text: FELIX清香
Photo: 保田敬介

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四角大輔

よすみ・だいすけ/森の生活者、アーティストインキュベーター、執筆家
1970年大阪生まれ。1995年、ソニーミュージックに入社し、2004年にワーナーミュージックにヘッドハントされる。
約10年間、アーティストプロデューサーとして、絢香、Superfly、CHEMISTRY、平井堅などを手がけ、7 度のミリオンヒット、20回のオリコン1位など数々の記録を創出。

2010年、学生時代からの夢だった、ニュージーランドの原生林に囲まれた湖に移住。現在は、年の半分以上はNZの湖畔で、自給自足をベースとするサステナブルな森の生活を送り、残りはグローバルノマドとして複数の国と都市を移動する。

デジタルテクノロジーをフル活用することで場所の制約を受けず、複数のプロジェクトを並行して遂行。大自然への冒険と、起業家やクリエイター育成をライフワークとし、エコ誌、登山誌、テクノロジー誌など多数の連載、自身の著書や、公式メディアを通して、 独自のクリエイティブ論とオーガニック思想を発信。

「人は誰もがアーティスト」というメッセージと、「未来の生き方」をテーマに掲げ、オルタナティブな価値観を提唱し続ける。著書にベストセラーとなった『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)など。

http://qreators.jp/qreator/yosumidaisuke

鎌田安里紗

かまだ・ありさ/モデル。タレント。1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に単身上京。在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。現在は同大学の大学院に進学、芸能活動も続けている。途上国の支援活動に関心が高く、自身のブログでも情報を発信。JICAの『なんとかしなきゃ!プロジェクト』のメンバーにも選出され、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。

http://qreators.jp/qreator/kamadaarisa

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