「自分らしさ」や「進む道」がわからないあなたへ。四角大輔さんが教えてくれたこと【前編】

2016.3.16

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ギャルモデルであり、現役・慶応義塾大学大学院生でもある鎌田安里紗さん 。10代、20代を中心に支持を集める彼女はエシカル・プランナーでもあり、多数のファッションブランドとコラボをしたり、「エシカル」に興味を持ってもらえるようなイベントやスタディ・ツアーを手がけたりと、様々な形で発信をしています。

今回、そんな彼女が「この人の発想はこれからの暮らしを考える上でヒントになりそう! 」と感じた人たち10人に突撃インタビュー。生活のこと、暮らし方のこと、自然との関わり合いのこと、自分を大切にすることなどについて、じっくりお話を聞いていきます。

今回は第4回目。アーティストインキュベーター、執筆家、ライフスタイルデザイナーとして活躍する四角大輔さん との対談【前編】 です。

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森の生活と移動生活の両立をテクノロジーが可能にした


鎌田  四角さんといえば、日本とニュージーランド(以降NZ)を行き来をしながら仕事をするライフスタイルで有名で、ノマドの先駆者というイメージが強いと思います。
そういったライフスタイルや働き方になったきっかけには何があったのですか?

四角  今、日本を含めて世界中の先進国で、ノマド的な生き方がムーブメントになっているよね。新しい価値観を世に提示していく人の多くが、一つの組織や国家に依存しない自由な生き方をしている。その代表格と言えるのが、移動を軸にする〝場所の制約を受けないライフスタイル〟だよね。

ぼくは、そういったムーブメントの第一人者として扱われるけれど、もともとノマドになりたかったわけじゃなくて。シンプルに、「NZの美しい湖で〝森の生活〟をすること」が、学生時代からの夢というだけだった。

でも、NZに移住したいと思ったのは、ポジティブな理由だけじゃなく、ネガティブな理由もあって。
それは、ぼく自身が日本の教育制度や社会システムに馴染まないなと思ったこと。日本がダメっていうことではなくて、「ダメなぼくは、日本社会に合わないな」と。

前向きな理由は、学生時代から何よりも好きだった、フライフィッシングと湖。自分で野生魚を釣って、自分でさばき、さらに自分の手で野菜を果物を育てて食べるという、自給自足ベースのライフスタイル〝森の生活〟を送る自分の姿は、はっきりイメージが持てた。そして単純に、モーレツにワクワクして!
その一方で、日本社会で働き、評価されて収入を得ている自分は、まったく想像つかなかったし、まったくワクワクしなかった。

鎌田  とはいえ、学校を出てすぐに移住したわけではなくて、レコード会社に15年も勤めて、プロデューサーとしても大ヒットをたくさん出していたわけですよね。なぜすぐに移住しなかったんですか?

四角  今から二十数年前の学生時代に、NZに移住したいという夢を持ったんだけれど、その頃はインターネットもなく、ファックスが普及し始めたような時代だった。航空券も今のように安くないし。
NZの森の中で自給自足の生活をするとなると、〝世捨て人やヒッピー〟のように暮らすようなイメージだったわけ。NZに一度渡ったら、日本に帰ってくるのは親の死に目くらいといった覚悟が必要で。

ただ、今世紀に入って世の中の変化スピードが加速してきた。結局、夢を叶えるのに15年以上かかり、2010年に移住したんだけれど、その間にテクノロジーが急速に発達。インターネットが一気に普及して、世界中にブロードバンドが張り巡らされ、2007年には、その後の人類を大きく進化させることになるiPhone3GとMacBook Airが日本でも発売になり、各国にLCC(格安航空会社)が台頭してきた。

NZに通ううちに、航空券がどんどん安くなってきたし、幸いなことに昔は、NZはインターネット先進国だったから、ぼくが住みたいド田舎や森までもインターネットが届いていて。
移住の2〜3年前くらいから「行ったり来たりの生活ができるんじゃないかな」って思い始めたんだよね。

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仕事でミスジャッジをしない方法。それは至極シンプル


鎌田  今のライフスタイルになったきっかけは、純粋に湖の近くにいる時が心地よくて、釣りが好きだったからということなんですね。四角さんは今、釣りだけではなく、無農薬で野菜と果物作りもなさっていますよね。若い頃から自分で作って食べるのが好きだったのですか?

四角   畑をやるようになったのは移住後。でも、自分で海や湖、川で魚を釣って、さばいて食べるという行為そのものに〝アート性〟を強く感じて、昔から好きだった。
今は治ったけれど、小さい頃はアトピーとかいろんなアレルギーを持っていて、化学物質過敏症だったの。だからか、子供の頃から家で食べるのは玄米や、着色料や保存料を使っていないような、自然派の食事ばかりだった。

鎌田  うちもそうでした! 白米がよかったですよね。当時はみんなのお弁当がおいしそうに見えました(笑)。

四角  そうそう。ぼくのお弁当は茶色やアースカラーで地味(笑)。みんなのお弁当は、お米は純白だし、おかずもカラフルでポップで。でも、大人になったらわかるよね。「ありがとう母ちゃん」って。
子供の頃から、ケミカルなものをとると体調が悪くなるし、母がナチュラリストだったから、食に対しては関心が高かったの。

それから、大学生の時は映像ジャーナリストになりたくて社会問題を研究していたんだけど、そのときに食の不健全さや食品業界の悪行を告発する、ノンフィクション本をたくさん読んだんだよね。「恐ろしい。本来は命である食べ物が、行き過ぎた資本主義の結果、単なるカネ儲けのための道具になってしまっている」って。
そういうことが積み重なって、より食に興味を持つようになったんだ。

今、自分で無農薬菜園や果樹園をやっていて、何に感激するかというと、ゴマみたいな小さな種が、早ければ2ヶ月後に立派に食べられるサイズまで大きくなるという事実。
それと、野菜にせよ魚にせよ、どうやって自分の口まで届くかという過程すべてに関わると、「食べものはすべて命なんだ」という〝あたり前のこと〟を実感できる。これがもっとも感動的で!

食べるものが体を作る。ぼくは、親と大地から授かったこの肉体を、最大のパフォーマンスまで引き上げて使い切りたくて。そして、体を動かすのは心。その一番大切な心と、肉体とその一部である脳が、きちんとつながって連動し、最大のパフォーマンスを出すようにしたいと思っているの。

鎌田  脳も肉体の一部。たしかにそうですね。四角さんは、パフォーマンスを最大化するために、何をしているのですか?

四角  やっぱりまずは水や食料や空気など、体に入れる物に配慮することが最重要(1)。それから、睡眠と休息をちゃんととり(2)、体を鍛えること(3)。そして、自分の〝頭と心〟を常に整える努力をすること(4)。最後に、自分の〝魂の声〟に正直に生きること(5)。この「5点セット」が大事だね。

鎌田  それはレコード会社の時でもやっていたんですか?

四角  そうだね。レコード会社時代に、大きな結果を出せた理由は、すばらしいアーティストとの出会いに恵まれたり、ブランディング戦略とメディア戦術に長けていたということもあるけれど、頭脳を含めた自身の肉体のパフォーマンスを、高いレベルで維持し続けられたことだと断言できるかな。
音楽業界の人たち、クリエイティブやメディア業界の人たちって、みんな不健康なんだよね。

鎌田  食やライフスタイルの優先順位が低い人が多いですよね。

四角  下手したら、忙しくてまったく食べてなかったり、毎晩飲み歩いて二日酔いだったり、寝てなかったりしていて。
そうやってみんながパフォーマンスを思いっきり下げている時に、ぼくは栄養バランスを考えて、ちゃんとしたものを食べて、休息をきっちりとることを徹底していた。
そうすると、パフォーマンスはおのずと上がるよね。集中力もクリエイティビティも高まるし、体の調子も良くなる。結果、ミスジャッジが非常に少なかった。

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自分が本当にやりたいことに気づくには、どうしたらいい?


鎌田 以前、原宿のイベントで対談させていただいた時に、四角さんは「言語化不可能な衝動に正直になることが大切」とおっしゃっていました。先ほどの「パフォーマンスを最大限に上げる5点セット」の中にあった「自分に正直に生きること」は、それと同じことですよね。

四角  そう。「言語化不可能な衝動」こそが、〝魂の声〟もしくは〝魂の叫び〟というのがぼくの持論。ぼくは「人は誰もがアーティスト」という言葉を使うんだけれど、その人らしさを極めた状態を「アーティスト状態」と呼んでいる。
自分の〝魂の声・叫び〟と向き合い、自分の心に正直になることで、「言語化不可能な衝動」を信じる勇気を持てるようになる。そして、それに従って生きられるようになる。

つまり、心からやりたいことを、本気でやると、その人はよりその人らしくなれるということ。そして、そういう状態になると、誰もが自然に高いパフォーマンスを上げられる。それがまさに「アーティスト状態」にいる、ということなんだ。

鎌田 四角さんが今、暮らしや仕事を四角さんにとって一番気持ち良いやり方でできているのは、その言語化不可能な衝動に正直になった結果だと思うのですが、そもそも自分の衝動に気づけない人もいると思います。
自分の衝動を認識するために、どんなことが必要だと思いますか。

四角  〝ノイズ〟の多い場所にずっといると、魂が発する小さな声を聞き取れなくなってしまう。つまり、衝動に気づけなくなってしまうんだ。東京などの都市空間に限らず、日本はノイズだらけ。とんでもなく大量のモノや雑音、不要な情報や、どうでもいい他人の意見が飛び交い、気づかぬうちにその影響を受けまくっている。
特に頭は、そういった〝ノイズ〟に汚染されやすい。そして汚染されてしまうと、「本当にやりたいこと」よりも、「頭で考えると、やったほうがいいこと」を選んでしまったりする。「こうしたほうが得する、儲かる」ってね。

まずやるべきは、自分一人の「孤独な時間」を持つこと。そして、もし可能なら「自然に触れる」こと。ぼくは、テントを担ぎ、数十キロの登山道を何日も歩いて、大自然にアプローチすることを、ライフワークにしているけど、それは「瞑想」行為に近いんだよね。

山や森の中にずっと一人でいると、ノイズだらけの都市空間にいた時には気づけなかった、〝自分の本当の声=魂の叫び〟が聞こえるんだよ。東京では決断できなかったことが、山の中だとすぐにできる。「なんで迷ってたんだろう、どう考えてもこっちだ」って。
それか、「そうだ、あれやってみたかったんだった」って、〝本物の衝動=魂の叫び〟を思い出せたりもするんだよね。

鎌田 とはいえ、それは都市に暮らしている人にとってはなかなか難しいですよね。彼らが生活の中で自分の衝動に気づくために、何かおすすめはありますか?
四角さんがレコード会社で働いてきた時にやっていたことなどがあれば教えてください。

四角  すべてをシンプルにすることかな。つまり、日常生活や身の回りの空間から、視覚、聴覚、情報、思考の「ノイズを消去」していくこと。いらないモノをまず捨てること(物体ノイズの消去)、常に好きな音楽を鳴らすこと(サウンドノイズの消去)、〝ノイズマシーン〟の代表格であるテレビやスマホに触れる時間を減らすこと(情報ノイズの消去)。

ここまでは誰でもできるはず。そして、他人の目線や意見を鵜呑みにしないこと。みんな、この〝思考ノイズ〟を減らすのに一番苦労するよね。

あとぼくの場合、レコード会社時代にメンタルがやばいと思った時は、なるべく、シンプルなインテリアと居心地いい音楽がある行きつけのカフェを確保して、1人になる時間を持ったり、移動中に数分でもいいから空を見上げたりしていたよ。
空っていうのは、世界中どこにいてもアクセスできる、一番身近な自然。気持ちいいなと思いながら空を見て無心になると、自分の心と繋がれて、小さい衝動(魂の声)が拾えるんだ。

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今の日本は、おかしくなっている


四角 今の日本は、食に関しても情報に関しても、ちょっと異常な状態になっていると思う。心と繋がれなくなってしまうのも当然。食べ物を「物体」としか捉えられなくなっているでしょう。でも、本来、食べ物は「命」、「生き物」なわけ。日本では昔から「いただきます」と、命をいただくという発想で食事をするのが当たり前のことだった。

それなのに、野菜の栽培、魚の養殖、動物が育てられる過程で、農薬や化学肥料、抗生物質、遺伝子組換えの飼料、そして放射能など、ケミカルまみれにしている。日本って、世界的に見ると、常にトップグループに入るほど農薬使用量が多い国。添加物にしても同じ。
でも、ぼくたちの体は有機体。つまり100%オーガニックだよね。野生で、天然で、自然なもの。なのに、健康を害する化学物質に汚染された食べ物で、肉体を汚染させてしまっている。だからシンプルに、オーガニックなものを食べるのが一番体にいい。

鎌田 オーガニック食品というと、今だと高級品、贅沢品といったように、特別な物のように捉えられてしまっていますよね。

四角  そう。ぼくがオーガニックをすすめると、「普通でいいじゃん」って言われちゃう。じゃあ「普通って何?」って聞き返したい。今、日本の畑のオーガニック率は1%もないからそう思うのかもしれないけれど、世界大戦前は、日本の農業はほぼ100%オーガニックだったんだよ。それに、農業には何万年もの歴史があるけれど、農業に化学物質が加えられたのは、わずか百十数年くらいのこと。オーガニックじゃなくなったのが最近で、「今が異常」なんだよね。

今、博報堂の友人と「the Organic 」という、日本のオーガニック率をあげることをミッションとしたNPO(申請中)を立ち上げて、各地の有機農家さんの取材をしているの。
そういう人は、命、食、日本の未来、子供たち、地球のことを総合的に考えて、独自の言葉と哲学を持っている。そういう人の話を聞くとすごく感動するんだ。

鎌田 今、食べ物が「物」として捉えられているのは、作っている過程は見えないまま、目の前に登場してしまっているからですよね。私は主にファッションに関する発信をしていますが、ファッションも同じ状況だと思います。
作り手さんに会いに行くと感動するし、それを発信すると、ファンの子たちも「知らなかった」って喜んでくれるんです。

四角 安里紗と一緒に何か企画したいな。埼玉県の小川町に、オーガニック率がとても高い世界的に有名なオーガニックタウンがあるのね。そこに若い子たちを連れて行って、カリスマ農家さんの話を聞いてもらいたいなあ。
どうやって食べ物を作っているのか、歪められていない形で食べ物を作るというのはどういうことなのか。食べ物が正しく作られる過程を知ることで、本来は〝あたりまえ〟である〝本物の食べ物〟に敏感になることができて、意識が変わると思う。

若い子って、それまでずっとケミカルにどっぷり浸かったような生活をしていたとしても、すぐに変われる。若いということは、その期間が短いわけだし、なにより「自分の心と体がまだ繋がっている」から、一気に変われる。歳をとるにつれ、心と体が完全に分離してしまう人たちが多いから。

鎌田 いいですね! それから今私が気になっているのは、暮らしのなかでいろんな物を、外からの情報によって「欲しいと思わされている」ということ。それに気づいていない人が多いと思うんですよね。

四角 日本は、こんな小さな国なのに、広告費は世界3位(2014年)。広告っていうのは基本、誰かがお金儲けのために何かを売りたくて作られているもの。異常な量のそれが飛び交っていて、ぼくらの生活圏を支配してる。頭が〝広告ノイズ〟によって侵されてしまっても当然だよね。



よりよく生きるために私たちは具体的にどうすべきか?
続きは後編「あなたの『ミニマムライフコスト』はいくらですか?」に続く。

Interview/Text: FELIX清香
Photo: 保田敬介

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四角大輔

よすみ・だいすけ/森の生活者、アーティストインキュベーター、執筆家
1970年大阪生まれ。1995年、ソニーミュージックに入社し、2004年にワーナーミュージックにヘッドハントされる。
約10年間、アーティストプロデューサーとして、絢香、Superfly、CHEMISTRY、平井堅などを手がけ、7 度のミリオンヒット、20回のオリコン1位など数々の記録を創出。

2010年、学生時代からの夢だった、ニュージーランドの原生林に囲まれた湖に移住。現在は、年の半分以上はNZの湖畔で、自給自足をベースとするサステナブルな森の生活を送り、残りはグローバルノマドとして複数の国と都市を移動する。

デジタルテクノロジーをフル活用することで場所の制約を受けず、複数のプロジェクトを並行して遂行。大自然への冒険と、起業家やクリエイター育成をライフワークとし、エコ誌、登山誌、テクノロジー誌など多数の連載、自身の著書や、公式メディアを通して、 独自のクリエイティブ論とオーガニック思想を発信。

「人は誰もがアーティスト」というメッセージと、「未来の生き方」をテーマに掲げ、オルタナティブな価値観を提唱し続ける。著書にベストセラーとなった『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)など。

http://qreators.jp/qreator/yosumidaisuke

鎌田安里紗

かまだ・ありさ/モデル。タレント。1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に単身上京。在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。現在は同大学の大学院に進学、芸能活動も続けている。途上国の支援活動に関心が高く、自身のブログでも情報を発信。JICAの『なんとかしなきゃ!プロジェクト』のメンバーにも選出され、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。

http://qreators.jp/qreator/kamadaarisa

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