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【田原総一朗×青木大和】僕らの努力で政治は変えられる?これからの日本のためにできることとは

2016.01.31

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政治ジャーナリストの田原総一朗さんと、政治活動家・青木大和さん の対談、後編です(前編はこちら)。

若者に戦争への拒否反応はないという田原さん。そんなことはないと反論する青木さんに、田原さんは戦争の歴史を説いていきます。
日本の政治をめぐる60歳差対談は、未来に向けて意見がまとまるのでしょうか。

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現代の若者は、戦争に拒否感を持っていない?

青木 今回、田原さんにお聞きしたかったことのひとつに、世代間格差が広がっている中、若者が政治にどう関心を持てばいいのかということがあったのですが……。

田原 世代間格差って、広がってるのかね。

青木 広がっています。

田原 何の格差が広がっているの?

青木 僕らの世代は人口が少ないので、特に政治の分野では構造的に人口の少ない若者世代への政策は後回しになってしまいます。……。

田原 少ないから貴重なんじゃない。

青木 そうなんです。でも......選挙の時にはやはり若者の意見は通しにくいという面があります。

田原 人数少ないのに、そもそも若い人は投票率が低いじゃない。
もっと言うと、年寄りは保守的だから自民党支持というのが大間違いなんだよね。今は年寄りであればあるほど、戦争反対だよ。僕なんかは、小学校5年生のときに日本が戦争に負けたからね。とにかく戦争は反対、嫌なんだ。だから、戦争に近づくような法案は絶対に反対。
今の若い世代はそういう体験がないから、戦争に対する拒否反応はむしろ少ないでしょう?

青木 そんなことはないです。僕らの世代も、戦争に対しての拒否反応は強いですよ。

田原 なぜ嫌なの?

青木 僕らはイラク戦争などなどを常に報道を通して見て、戦争が良くないという思いは強く持っています。
それに、公教育でも私生活でも多くの場面で、先の大戦から学ぶという姿勢を持つようになっていると思います。

田原 イラク戦争で日本は傷ついてないのに? いや、アメリカ人ならわかるよ。イラク戦争で大勢のアメリカ人が亡くなったし、フセインを倒せば民主的になると思って介入したイラクは、むしろむちゃくちゃになってしまった。これは大失敗だったと、反省したわけだ。でも日本人が反省する要素はないでしょ。9.11ってそもそもどんな事件なのか知ってる?

青木 同時多発テロです。

田原 2001年の9月11日に、アルカイダ系のイスラムの人間が、ニューヨークの国際貿易センタービルとワシントンのペンタゴンに自爆テロを仕掛けたよね。そのときにブッシュ大統領は、これはアメリカに対する戦争だとして、ただちにアルカイダの本拠地であるアフガンに攻撃を仕掛けた。これには国連安保理も賛成して、NATOが集団的自衛権を発動して戦争に参加した。これがアフガン戦争。
で、アルカイダと仲の良いフセインがじつは大量破壊兵器を持っていて、このままだとイラクがとんでもないことになるという憶測から、イラク戦争を始めた。日本はそれに賛成して、サマワに自衛隊を派遣したよね。
で、君はこの件のどこがダメだと思うの?

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青木 まずきっかけとなった同時多発テロについて。テロはそもそもよくないですよね。そして、その後始まったイラク戦争については、連日の報道で悲惨な戦争の情景に触れることで、戦争というものがいかなる理由であれ正当化されないことが示されたと思います……。

田原 当時の日本の報道で、アフガン戦争とイラク戦争に反対するものはほとんど無かったよ。
やっぱり君はイラク戦争反対の機運が高まっていた2009年頃にアメリカにいたから、そういう感覚を持ってるんじゃないのかな。

青木 僕は特別そうなのかもしれません。でも、今の日本の若い人も、戦争に対する拒否感は強く持っていますよ。
だって、私たちは嫌というほど戦争への教育がされてきています。敗戦国として、広島や長崎、沖縄など多くのリアルを幼い頃から目の当たりにしていますし。
ですので戦争に対する拒否感も強く、もはや拒否反応が強すぎて、戦争のことなんか考えたくないという人も多いと思います。

田原 考えたくないっていうのは無責任だよ。だったら、政治に関心がないのもわかる。

青木 僕は、その思いが投票率の低さに現れていると思うんです。つまり、複雑な問題から逃れたい、考えたくないということから、「関わらない」という選択をしてしまう。
だけど、無関心ではいられても、無関係ではいられないはずなんです。

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歴史を学び、具体的な事例をもとに安全保障を考える

田原 じゃあそれを変えていかなきゃね。
そもそも君は、昭和の戦争をどう捉えているの?満州事変から始まって、日中戦争、太平洋戦争って、どんな戦争だったと思ってる?

青木 日本が列強諸国の一つとして、侵略戦争をした、という認識を持っています。

田原 そんなこと言うと、イギリスもアメリカもフランスもオランダも、みんな侵略戦争やってるんだよ。なんで日本だけが、侵略戦争ということを認めて肩身の狭い思いをしてるの?

青木 日本は太平洋戦争に負けたので、国際社会の中で非を認めざるを得ない立場にあるからじゃないでしょうか。

田原 ということは、君の認識は安倍晋三と同じということだね。

青木 いえ、「侵略」という文言について定まった定義はないと考える首相とは異なる立場だと考えます。
もっとも、敗戦国だからこそ、非を認めざるを得ない立場であるというところは共有しているかもしれません。

田原 ポイントは敗戦国かどうかじゃないんだよ。第一次世界大戦は知ってる?

青木 歴史の授業で習いました。

田原 第一次世界大戦というのは、人類が行った初めての総力戦だったんだよね。ヨーロッパの全土が戦場になって、一般市民を含めて1千万人以上が亡くなった。その戦争の経験を踏まえて、欧米諸国は「戦争というのは悪だ。戦争は今後一切やめよう」と決めた。
それで1928年に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本をはじめとする15カ国がパリ不戦条約を結んだ。
でも日本は、そのわずか3年後に満州事変を起こして、1937年に日中戦争を始めた。つまり、パリ不戦条約に違反して戦争を始めたの。だから責められてるんだよ。

青木 その認識はありませんでした。というより、こういう教育はされていないですし、こうやって田原さんに僕が話を聞かなければわかりませんでした。
歴史からきちんとその本質を見出さないといけませんね。そういうことから学んでいかないと、今回の安保法案に対しても自分の意見を持つことができないですよね。もっと勉強します。

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田原 じゃあ、自衛隊を持つのはいいこと? 悪いこと?

青木 いいことかどうかというのは、非常に抽象的なご質問なので、答えるのが難しいのですが、専守防衛という範囲にあっては、いいことだと思います。

田原 これまで日本の安全保障は、アメリカに委ねていたわけだよね。日本が危機のときには、アメリカが日本を守ってくれる。でもアメリカが危機の時は日本はアメリカを守らない。全部おまかせだった。
例えばイラン・イラク戦争の時に、アメリカの海軍はペルシャ湾を通る船を護衛していた。その船の70%が日本の船だったので、アメリカは日本にも自衛隊を出して護衛しろと言った。でも、日本は集団的自衛権を行使できないから、日本の船だけを守るということはできるんだけど、他の船も通るのであれば自衛隊は出せないと言った。
これ、自衛隊は行くべきだったと思う?

青木 いや、行かなくて良かったと思います。

田原 なぜ? 7割が日本の船なのに? それはずるいってアメリカは言うし、世界の世論としても行くべきだというほうが多数派だよ。

青木 うーん……。そこはパワーバランスであったり、ステークホルダーとなっている国々のそれぞれの思惑があって、外交レベルでの折衝に委ねられると思います。
日本がずるいという見方もあるかもしれませんが、アメリカがいきなり撤退するということも非現実的で、少しずつ少しずつ東アジアの安全保障における日本の比重を大きくしていくという意味では当時は行かなくてもよかったのではと。

田原 こういった事例から、日本は今後安全保障について、どうあるべきかということを考えていかないと。

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これから日本の将来に向けて、若者ができることは?

青木 そうですね。こういう歴史的背景や個別の事例などについては、国民が自分たちで勉強していくべきことなんでしょうか。

田原 いや、政治家には説明する責任があると思うよ。

青木 いま、そういう努力ができている政党はないですよね?

田原 野党が本気になって自民党を負かそうとしたら、そういうこともやるようになるよ。

青木 田原さんとしては、今年の参議院選挙で野党が本気を出すと思いますか?

田原 やるでしょう。そうじゃないと、野党じゃない。
そして、とにかく自民党が進めている安保法案は日本を滅ぼす、日本を戦争に巻き込む可能性が非常に高いということを主張して、自民党を負かすんだ。それから対案を考えればいい。

青木 とりあえず安保法案反対で一枚岩になって、選挙に勝つと?

田原 そうだね。

青木 対案を出した上で、国民が選ばなくてもいいんですか?

田原 理想はそうだけど、夏までに対案を考えている時間がないよね。対案を考えようとすると政党同士の意見がまとまらなくて、バラバラになってしまうし。
だから、とりあえず参院選は野党がみんなで手を組んで、勝つことに集中すると。

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青木 選挙後のビジョンが見えないというのは、国民の政治不信を助長してしまう気がするのですが……。
昨年12月以降の世論調査をみても、内閣支持率が上昇するなど、やはり安全保障以上に、経済政策を重視している国民も一定数いたりして、安全保障に関する方針が嫌だから野党というふうにはならないと思うんですよね。
安全保障以外の分野に関しても、選挙後のビジョンが見えてこなければ……。

田原 僕は野党が一つにまとまって、参議院選挙にとにかく勝とうとする姿勢を見せれば、国民はそれを信じてついてくると思う。

青木 それに対して、僕らができることというのは、何かあるのでしょうか。
けっきょく僕らは蚊帳の外で、意見を政策に反映させることは難しいのかなと思ってしまったのですが……。

田原 そんなことないよ。政治家に働きかけて、政治家を動かせばいい。そんなに難しいことじゃないよ。僕は総理大臣を3人失脚させたことがある。

青木 いやいや、それは田原さんだからできたことですよね(笑)。

田原 僕みたいにテレビ番組なんか持ってなくても、勉強会を開いて、そこに政治家を呼べばいいんだよ。そういう地道な運動の繰り返しで、少しずつ変えていくんだ。

青木 僕らの考えを議員の方に知ってもらって、国会で立案してもらうと。

田原 そう。若い政治家なんかは喜んで来ると思うな。
こっちも学生だけでなくて、学者とか弁護士とかいろんな人を呼んで、みんなで議論すればいい。そういう活動をしていると、マスコミが取り上げてくれることもあるでしょう。
SEALDsも、新聞やテレビに取り上げられたからあんなに知名度が上がったわけだし。

青木 そうですね。僕自身も、18歳選挙権の実現という活動を3年前からずっとやってきて、最初はどこも相手にしてくれませんでしたが、だんだん世論が動いて、ついに実現することができました。
こういうふうに、とにかく動いて、地道に発信していくことで、社会を変えることはできるんですね。

田原 そう思うよ。大事なのは諦めないこと。そして、困難をおもしろがること。
今の若い人って、けっこう楽観的なところもあるでしょう。ベンチャー経営者なんかに会うと、未来をつくっていくということにワクワクしている人ばかりだよ。
君も、これからの未来を引っ張っていくひとりとして、がんばってね。

青木 ありがとうございます。僕自身、政治に関心ある若者を増やしていくことに壁を感じていたのですが、地道にやる以外に方法はないと腹をくくることができました。
これからもがんばります。

Interview/Text: 崎谷実穂
Photo: 神藤 剛

田原総一朗

たはら・そういちろう/ジャーナリスト、評論家。1934年、滋賀県生まれ。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)をはじめ、多くのテレビ・ラジオに出演中。長谷川慶太郎氏との共著『2020年世界はこうなる』(SBクリエイティブ)が12月23日に発売予定。

http://www.taharasoichiro.com/cms/

青木大和

あおき・やまと/1994年03月09日生まれ。政治活動家/慶應義塾大学法学部政治学科在学中。15歳にて単身渡米。米国の社会活動へ参加する中でオバマ大統領誕生を目の当たりにする。日本と米国の若者の社会参加、政治参加の差を実感し、帰国後2012年「僕らの一歩が日本を変える。」を創設。「高校生100人×国会議員」、「未成年模擬選挙」「全国行脚」などの数多くの仕掛けを行った。2014年に同団体を法人化し、2014年秋に代表辞任。以後世界各地を渡りながら現地の社会運動、若者の動向などをレポートしている。また、aokiyamato.comを運営し、執筆など個人による若者、政治、社会などのテーマを中心に活動を行っている。

http://qreators.jp/qreator/aokiyamato

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