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ネットとマスメディアでは文化が違う?吉田尚記に聞いた”ネットとマスメディアの違い”

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本業であるニッポン放送「ミュ〜コミ+プラス」のパーソナリティをはじめ、「マンガ大賞」実行委員、音楽・アニメ関連イベントの司会、はたまた落語の創作、実演までこなすという一面まで併せ持ち、その知識の広さと造詣の深さで、いま各界から引っ張りだこのアナウンサー・吉田尚記氏。吉田氏はマスメディア側の人間でありながら、早くからネットを積極的に活用していることでも知られている。そんな吉田氏は今のネットとマスメディアの関係性をどう捉えているのだろうか?今回は昨年末のネットの話題とからめて、ネットとマスメディアの違いなどについて語っていただいた。

検索ランキングには「ネット」の特徴が、流行語大賞には「メディア」の特徴が表れている


――今回は吉田さんにネットとマスメディアの関係性や違いについて色々とお伺いしたいと思っています。まずは昨年末に話題となったユーキャン新語・流行語大賞について意見をお聞かせください。この件についてはいわゆるマスメディア側の流行語大賞とネット側のGoogle検索ランキングでは相違があり話題となりましたが、吉田さんはこれをどう捉えました?


吉田:了解です。ではまず僕が質問を聞いて気になったことから言いますね。

それは「検索」と「現象」についてです。

新語・流行語大賞とGoogle検索ランキングを比べてみると、検索ランキングはあくまで検索されたワードであって、新語・流行語とはまた違った側面があると思います。
検索ランキングを見ると「ラッスンゴレライ」と「安心して下さい、穿いてますよ」では”ラッスン”の方が検索数で上にきていますよね。これはどうしてかというとラッスンゴレライというワードが意味不明な言葉だから検索されているんですよ。対して「安心して下さい、穿いてますよ」は一目でわかるから検索する必要がない。要はGoogle検索ランキングには検索の特徴が表れているんですよ。
また、「爆買い」が Google 検索ランキングに入っていないのは、まず「誰が何かを大量に買っているんだな」とある程度意味がわかる。だから、「検索するような現象」ではないんです。一方で、「マイナンバー」は、「私の番号」と言われても、正直意味がわからない。だから検索する。でも、いま銀座三越のあるケーキ店の売り上げはバブル以来だそうです。銀座には中国の方が大挙して押し寄せているから。だから、「現象」については Google 検索ランキングからは読み取れない面もあるんです。一方新語・流行語大賞の方からは、こうした現象があったと読み取れますよね。「検索をしたくなるかどうか」と「実際に起きた現象」はイコールではありません。これが相違の原因で、「どちらが正しい」ということはないんだと思います。


――新語流行語大賞とGoogle検索ランキングは比較対象ではないのでしょうか?


吉田:そもそも比較する必要がないんですよ。別の視点の物として見る方がより視野が広がって良いので両方に価値がある。どちらかが間違っていてどちらかが正しいという物ではないですよね。

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ネットとメディア、どちらか片方側の視点だと気づきにくいこともある。


――サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)について


吉田:新語・流行語大賞とGoogle検索ランキングでGoogleの方が納得いくという人はネットで記事を見ている頻度が高い人かもしれないですね。でも普段それほどネットを見てない人も含めて全体で見たら、新語・流行語大賞の方が納得いくという可能性もあると思います。

僕が興味深いなと思った話があって、最近エロ本でネットの使い方なんて記事を載せると「ネットの記事なんて載せてくれるな!」とものすごい反感を買うそうです。

どうしてかというと、この時代にわざわざエロ本を買う人っていわゆるネットをしない人、出来ない人、ネットが嫌いな人なんですよ。そういう人たちにとってはネットなんて1ミリも見たくもないし、やりたくもないんです。そういった考えを持った人達は今なおたくさんいる。そういった存在はネット側の視点だと気づきにくい。こうしたどちらか片方側の視点だと気づきにくい点は注意しなくちゃいけないかなと思いますね。

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知っている人と知らない人が分かれるのは、これからどんどん顕著になっていく。


――昨年末の出来事で言うと、ネット上でも知っている人と知らない人が分かれていたμ's(ミューズ)などの紅白出場も話題になりました。こうしたギャップ現象を吉田さんはどう捉えているのでしょうか?


吉田:最近の傾向としてはネットが普及したことで世間の興味の対象がかなり分散されてきています。だからある一定のムーブメントについて知っている人と知らない人が分かれるのは、ある意味当然で、むしろこれからどんどん顕著になっていくような気がしますね。

いまは一昔前のようにみんながみんな同じものに熱狂する時代ではない。
その分、ネットは自分の好きなものをずっと追いかけていられる状態を提供してくれます。ブームを終わらせないで持続させることができるのはメディアよりもネットの良い点ですね。

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ネットとマスメディアどちらも重要なのは「どう自分の役に立てるか」ということ。


――都合の良い情報しか流さない既存のメディアよりネットの方が、信頼性が高いという声も聞こえてきますが、吉田さんはどうお考えですか?


吉田:僕はラッキーなことにネットのない時代に生まれています。ネットが普及し始めたのは僕がマスメディアに就職した頃です。これは有難いことにネットとマスメディア両方を相対化してみることができる結構稀有な世代なんです。だから僕としてはネットもマスメディアも世界や世の中をどう切り取るか、誰にどう伝えるかという意味で同じものと捉えています。そうした視点でネットとマスメディアを見た時、まずネットって嘘がかなり書いてある。一方マスメディアも情報にはバイアスがかかっていることがある。ただしマスメディアには嘘に対して最低限のルールがあるし、出す側に矜持もありますが。


――どちらの情報を信用すればよいですか?


吉田:情報を受け取った側はネットにしろ、マスメディアにしろ、どちらに信頼性がある云々ではなく、もたらされたコンテンツ・ツールをどう自分の役に立てるか、消化するかということに尽きると思います。

ネットにしろ、マスメディアにしろ世の中の一次情報が先にあって、それを世の中や世界に繋げるようにリンクを張ることが一番重要。
Twitterでもみんなリツイートに目が行きがちですけど、価値があるのはリツイートよりコンテンツなんです。それをどう自分が活用するかがネットやマスメディアに向き合う点で重要なことだと思いますね。




メディア側とネット側、両方の視点を持ち、どちらかに片方に偏らず、フラットな視点で話ができる人は意外と少ない。メディア側に属しながらも吉田尚記はそのフラットな視点を持つ数少ない人物の一人だ。この時代に貴重であり、かつ必要なアナウンサー吉田尚記。まだまだ彼の活躍の場は広がりを見せそうだ。

Interview/Text: 飛田周平

吉田尚記

よしだ・ひさのり/ニッポン放送アナウンサー
第49回ギャラクシー賞DJ・パーソナリティ賞受賞。
著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が発売3ヵ月で10万部を突破。
99年の入社以来、今に至るまでオールナイトニッポンほか深夜放送のパーソナリティを務め続けている。
現在は毎週月曜日から木曜日深夜24時から放送中のワイド番組『ミューコミ+プラス』を担当中。
放送業界で1、2を争うアニメやゲームなどのオタクとしても有名で、ニコ生やTV番組への出演、マンガ大賞の発起など、ラジオにとどまらない活動を行っている。

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