誰もが不幸ではなく、幸福を欲している。加藤さくらが語る、障害と健常を分ける大きな壁

2016.1.4

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立つことも歩くことできなくなり、10代過ぎる頃には寝たきりになっていく『福山型先天性筋ジストロフィー』という病気。
そんな進行性の病気の次女、真心(まこ)ちゃんの姿を映したドキュメンタリー映画や、自分の素直な気持ちを綴った本を通して、“心のバリアフリー”を広げていこうとしている加藤さくらさん。
そんな彼女に、母として、そして自身のライフワークでもある“親業インストラクター”として、世間の健常者と障害者との関係について本音を聞いた。

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子供が0歳の時、実はお母さんだってママ年齢0歳。


――まずご自身のライフワークでもある。親業インストラクターとはどのようなものなのですか?

加藤:『親業』とは、親子関係、人間関係をよりよくするプログラムです。約50年前にアメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士によって始められました。
人と人との話の聞き方、伝え方、対立関係ができた時などそれぞれの状況に応じて、お互いの解決法などといった具体的なコミュニケーション方法をお伝えするのが、親業インストラクターです。

――その親業と出会ったのはいつですか?

加藤:長女が6ヶ月くらいの時です。考えてみれば人を一人育てる方法って誰からも教わらないんですよね。
子どもを産んだ時「この子を一人前の大人に育ててください」と暗黙の了解があるだけで、誰も人を育てる方法をちゃんと学ばないんです。
「一人前の大人に育てる」ってなんだろうって立ち返って考えた時、娘がちゃんとこの子らしい人生を歩めるようにしてサポートしてあげるのが親の役目だな、と気づき「どうやったら“その子らしさ”をサポートしてあげられるんだろう」と考えていた時に親業に出会いました。

――真心ちゃんが筋ジストロフィーという診断を受けて、親業を知ったわけじゃないんですね?

加藤:そうなんです。元々、心理学を学んでいた事もあったんですけど、親業を知ったのは、次女が生まれる前です。でも、これまで実践してきた事が、今の活動に繋がっていて、不思議な繋がりを感じますね。それに親業を知らなかったら、ひょっとしたら、今の私は「障害児を抱える母」を重く受け止めて、鬱とかになっていたかもしれないです。

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障害と健常、この2つの言葉には大きな溝がある。


――率直に、今の世間の障害者への捉え方をどうおもいますか?

加藤:いざ車いすの方とか、障害者の方に会った時、どう接して良いか分からないことってありますよね。そんな関係を無くすために“心のバリアフリークリエイター”として活動しています。
障害者とどう接して良いか分からないのは、教育の現場などで障害者・健常者分断されていることが原因の一つにあるのかなと思います。障害者だけだと生活できないし、健常者だけでもいろんなひずみが生まれる。

調和するために両者がいるべきなのに、現在の教育システムでは普通学校と特別支援学校と言う風に教育現場が別れ、お互いの存在を知ることがなく生活をしています。

――学校に上がる前はそんな調和がとれている世界なんですね?

加藤:次女は受け入れてくれる保育所があり、1才から認可保育所に通っていますが、保育所にいる次女を見ると、いろんな子たちの中で過ごしていて、例えば「歩けない」「おもちゃ取れない」となると、他の子は、自発的におもちゃをとって、サポートしてあげるんです。
次女の周りの子の間で「思いやりをもちましょう。助け合いましょう」なんて目標は何もないんですよ。ところが、学校に上がって、分けられてしまうと目標を持たないと、助け合いを意識しづらくなる気がします。それは、クラスにできて当たり前の子が多いため、助け合う場面が少なくなるからじゃないかと思っています。
接する機会が無いから、体験できないから、道徳とか座学で学ぶしか無くなっちゃっているんです。

――そう言われると、学校に上がる前の子たちが一番バリアフリーな関係ですね。

加藤:そうなんですよ。それまで対等だった世界が、大人の手によって壁が作られ、別々の教育現場で育つ。その後、社会に出たら、大人たちが決めた障害者雇用で、会社に入ってくる。
そこでいきなり「さあ、接してください」と言われても、うまくできないじゃないですか、そして障害者が排除されちゃう。そんな壁をぶっ壊しちゃいたいんですよね。

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“障害=可哀想”というのはメディアが作り上げた巨像ではないか。


――調和できる世界を作るには、まず壁を壊す必要がありますね?

加藤:そうかもしれないです。そう考えると“心のバリアフリークリエイター”でありながら、やりたい事は壁を壊す“心のバリアのデストロイヤー”かもしれません(笑)テレビなどのメディアも壁を作っていると思います。
普段、健常者は目に触れていないから、障害者は、遠い存在だと感じますよね。さらにメディアから得る情報は、世の中の当たり前の感覚を映していると思われがちです。
車いすと乗っている人を映して、すごい大変な闘病生活を送っているんだろうなと思われがちですけど、びっくりするぐらい普通の生活している方もいらっしゃいます。でも、その普通の部分は面白くないから、テレビでは取り上げられません。

どうしても障害者イコール「可哀想」「大変」みたいな映し方をしちゃいます。障害者の中には、そんな風に受け取って欲しくない方もいるのに。大変と言いますが、人間皆大変な事あるじゃないですか。それと同じように「全然普通なんですよ」って言えない人に代わって言いたいですね。

――確かに、そんな壁もデストロイしなくちゃですね!

加藤:障害者の中には、「可哀想」って思われたくない人もいる。次女は「あなた障害があって可哀想ね」みたいな目でみられると、嫌がってプイっとします。けれども中には、それを言えない人もいるんですよ。そこで“バリアデストロイヤー”の出番という訳です。障害者が普通にメディアに出ていても良いと思うんですよ。
わざわざスポットライト当てて悲劇の主人公としてとりあげなくてもドラマの脇役で居てもいいし、ファッション雑誌に車いすの方が載ってもいいし、最初は衝撃かもしれないが、慣れてくればいざ街中で出会っても普通の感覚になると思っています。そのメディアでの見せ方としては“バリアフリークリエイター”の出番ですね。

――そのように思う気持ちはどこからくるのでしょうか?

加藤:根元の部分は、次女を見ていると分かるんですが、『不幸になるために生まれてくる人はいない。みんな幸せになる為に生まれてくる』と思っているんです。
それを次女が体現しているんです。みんな幸せになるために生まれてきたという事をみんなに思い出してほしいんです。大人が作った社会的なバリアだけでなく自分の中にあるバリアや人と人とのひずみで生まれるバリアそれを壊していって、心のバリアフリーが広がったらいいなと思っています。

Interview/Text: 吉原博史

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加藤さくら

かとう・さくら/こころのバリアフリークリエイター
親業インストラクター。心理カウンセラー。「Mom time to live your life 81」主宰。英会話スクールで営業、クライアントケア、エリアマネージャーを務めたのち、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラーを取得。2007 年、結婚、長女出産、2010年に次女出産後、親業訓練協会認定インストラクターになる。次女、真心の筋ジストロフィーという難病に向き合いながら、笑顔 で前を向いて生きている姿は、ドキュメンタリー映画「えがおのローソク」として、全国各地で自主上映され、老若男女問わず多くの人たちに「えがおは宝物」 であることを発信し続けている。
2015年8月に初の著書『えがおの宝物~進行する病気の娘に教わる「人生で一番大切なこと」~』(光文社)を刊行。

◆加藤さくらHP「SAKURA KOTO@home」
http://www.sakurakato.com/
◆ドキュメンタリー映画「えがおのローソク」HP
http://www.egaonorosoku.com/

http://qreators.jp/qreator/katousakura

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