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「DRESS」山本由樹編集長×「現代ビジネス」瀬尾傑GMが語る「メディアの終わりのはじまり」とは?

2015.12.26

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雑誌「DRESS」の編集長をつとめる山本由樹氏が、Synapseにてオンラインサロン山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロンを開設している。サロンでは「編集の本質を学び、編集力を身につける」ためのコンテンツが配信され、人気を博している。そんな山本氏のサロンの特別トークイベントが、都内で行われた。

 先日、編集長をつとめる雑誌「DRESS」をウェブに主体を移し、紙面は季刊化することを発表した山本由樹氏。
そして、ゲストはWeb上で日本に新しいジャーナリズムを提言している「現代ビジネス」GM、瀬尾傑氏。
2人が感じる「メディアの終わりのはじまり」について、トークイベントで語られた内容とは−−?

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フライデーの説得力

山本 いきなりで恐縮なんですが、瀬尾さんのプロフィール改めてみて思ったんですけど瀬尾さん僕の3コ下だったんですね。

瀬尾 はい、そうなんですよ

山本 ずーーっと年上だと思ってましたよ(笑)。
あと瀬尾さんて『フライデー』にいたことありませんでしたっけ?

瀬尾 フライデーにもいたことありますよ。

山本 なんでプロフィールに書いてないんですか!?経歴から抹消されてますよ。入れなきゃだめじゃないですか!!(笑)

瀬尾 『等』のとこに入ってるんです(笑)。抹消してません(笑)。
僕、フライデー好きですもん。フライデーは日本のジャーナリズムの中では相当“まとも”だと思います。
なにがまともかというと、フライデーって必ず写真を撮りますよね。写真を撮るということは、そこに関しては絶対嘘はないわけです。
雑誌の記事って憶測だけで書いているものも、実際多くあるんですけど、フライデーは写真を必ず撮ることで記事の質を一定レベルで担保していると思います。

山本 瀬尾さんもフライデー時代は張り込みとかなさってたんですか?

瀬尾 はい、やってましたよ。

山本 僕も『女性自身』の編集部に所属していた時に何度か張り込みとかもやってたんですけど、「やっぱりフライデーには敵わないな」と思ったことが何度もありましたね。噂や憶測レベルで記事は十分書けてしまうのに、なんであそこまでやるんだろうと。
でもその反面、噂や憶測だけでは絶対に記事は書かないっていうポリシーみたいなものはすごくかっこいいなと思っていましたね。

瀬尾 そうですね。これは僕が日経ビジネスにいた時の話なんですが、当時の大蔵省(※2001年1月6日まで存在。省庁再編で財務省と金融庁に分離)と銀行の癒着や天下りがとても問題になっていた。財政と金融の分離は当時最大の問題で、そのことを記事にしたんです。すると、読者から「これはとても良い記事だ!!」ってすごい反響があったんですよ。
でもね、世の中はなにも変わらなかったんです。
その後しばらく経って僕はフライデーに行って、大蔵省の役人と銀行の役員がいかがわしいお店で接待してる現場を写真に撮って記事にしたんですね。
すると財務省の役人が逮捕され、最終的には財務省と金融庁も分離する。世の中に大きなインパクトを与えたんです。
それがフライデーのすごさを伝えるわかりやすいエピソードだなと思いますね。

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自分がやりたいジャーナリズムは、もう「紙」ではできないと思った(瀬尾)

山本 そうやって瀬尾さんはフライデーで地を這うような仕事をやってる中、どうしてWEBで現代ビジネスをたちあげようと思ったんですか?

瀬尾 さきほどから申し上げている通り、ジャーナリズムっていうのは本当に地を這うような仕事が多くてですね、『時間』も『金』も使うんです。そこでさらに週刊誌が売れない、広告が入らないという世間の風潮と相まって週刊誌はどんどんチャレンジできなくなっていったんですよね。

かつて自分が担当していた月刊現代も休刊になり、他社でも文藝春秋の『諸君』や朝日新聞の『論座』など総合雑誌が次々に休刊に追い込まれてしまったり。
その時に「自分がやりたいジャーナリズムはもう「紙」ではできないな。でも、だったらWEBでやればいいじゃないか」と思ったのがきっかけですね。

山本 そうして瀬尾さんが作った現代ビジネスですが、スタート5年で月間4500万ビューというすさまじい実績を積み上げられていますね、この結果の要因はなんだと思いますか?

瀬尾 拡散するためにツイッターを意識したコンテンツを考えたんです。
『対談』を例にすると、雑誌の場合、対談は出来上がったものだけを載せますよね。
でもWEBで見せるときに僕は『対談を動画で、ライブで見せます』としました。
すると、それを見た人がみんなツイッターでつぶやいてくれるんですよ。
そうやってどんどん拡散していくという感じですね。

山本 現代ビジネスですが、パーっと見ただけでもすごく面白そうな、読み込んでしまうような記事がたくさんありますよね。
でも僕が特に面白いと感じるのはコンテンツのカテゴリー分けです。
普通こういったニュースの分け方って『ニュース』『政治』『経済』『スポーツ』『エンタメ』みたいな感じでどこも一緒じゃないですか。
でも、現代ビジネスは『ニュースの深層』『企業・経済』『政治を考える』『ニッポンと世界』『オトナの生活』『メディアと教養』『ソーシャライズ!』と実にユニークなカテゴライズをしています。
これはどういう理由からなんですか?

瀬尾 僕、既存のそういう『ニュース』『政治』みたいなカテゴリーを見てて全然面白くないなと思ってたんですね。
面白くないというのはつまり、自分の知的好奇心に全然結びつかないということです。
そこでもっと自分の興味に密着するようなカテゴライズは何だろうと考えました。そういうところから考えていった結果、今の現代ビジネスはこういうカテゴライズとなったんです。

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新聞社が「暴力団」の情報に“うとい”わけ

山本 現代ビジネスのユーザーはどんな人が多いですか?

瀬尾 現代ビジネスのユーザーはそうですね、年齢は平均38歳くらいで男女の比率は3:1くらいの割合ですね。

山本 ビューが高い記事っていうのはどんな記事ですか?

瀬尾 一番は政治系の記事ですね。景気の話や年金の話の記事などは総じてビューが高い傾向にあります。
あと意外なところだと、暴力団の記事とか人気ありますね。
少し前に暴力団の内部分裂について話題になったことがありました。あの時うちが暴力団の情報についてはほぼ独走状態で発信しておりまして、圧倒的に強いコンテンツだったんですね。

山本 へぇ!なぜ暴力団の情報を独占できたんですか?

瀬尾 理由はすごく単純で、実は今日本で暴力団関係の情報を持っているライターって数人くらいしかいないんですね。そのライターの多くをうちが抱えていたんです。
新聞記者の人って暴力団関係の情報ってなにも知らないんです。これは新聞記者が悪いのではなく、暴対法(暴力団対策法)という法律があるからなんです。簡単に言えば「企業は暴力団と付き合っちゃだめですよ」という法律。このため新聞社は企業として暴力団との付き合いができないんですね。だから情報が入ってこないんです。

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有料会員ページはツンデレ機能!?

山本 (会場の参加者からの質問票を読み上げる)「読者の質を上げると具体的にメディアに対してどんな影響がでるのでしょうか?」

瀬尾 一番は読者の質を選ぶことによって広告単価が高くなることだと思います。収益にうまくつながるということ。
いい記事を作ってくれる人にはちゃんと見合った原稿料をお支払いしたいという思いがあるのですが、つまり収益があがるといい記事がつくれるってことなんです。
もし、ただ「PVだけ稼げばいい」となると、結局嘘でもなんでも書いていいっていうことになってしまう。

山本 読者の質を上げていった先に有料化などは考えていますか?

瀬尾 将来的には考えています。現時点でも一応、現代ビジネスでも月額1000円で有料会員のページがあります。

山本 有料会員になるとどんないいことがあるんですか?

瀬尾 まずページネーションがなくなります(※5ページとかに分割されている記事が1ページの長い記事になり、ぺージ遷移の必要がなくなること)
あとアーカイブ(過去記事)が見られるようになりますね。
非会員でも2ヶ月以内の記事は見られますが、会員になるとそれより前の記事も閲覧可能となります。主な機能としてはそんなものですね。

山本 え、それだけですか? それで月1000円て高くないですか(笑)
それでも有料会員になる人っているものですか?

瀬尾 そうですね、正直今はそれほど有料会員の獲得に力をいれていないんですよね(笑)。それでもありがたいことに結構多くの方に会員になっていただける方がいます。
収益的な話をすると広告:有料=9:1くらいです。
広告の収益というのは非常に景気に左右されるんです、つまり安定しない。
それに対して、有料会員は有難いことに一度入ってもらえると、そうそう減らないんです。つまりある程度安定している。僕らがいい記事さえ作っていればかんたんに離れていくことはないと思っています。

山本 いや、こんなツンデレな機能で収益の1割も稼げるならもっと注力したほうがいいですよ絶対(笑)。

ーーーーーー紙媒体としての雑誌がウェブにどんどん移行していく昨今。雑誌という紙媒体がどうパラダイムシフトしていくのか。1億総発信自体と言われる今、私たち個人にも可能性は無限にあるのではないか?

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山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロン
【サロン概要】
インテグレーテッドエディティングとは「情報統合型の編集」を意味します。
あらゆる場所で情報が溢れかえっている今、これから最も重要とされるのは編集の本質を知り、適切な情報を適切に切り取り、繋ぎ合わせる「編集力」です。
「編集」とは雑誌や映像に限ったことではありません。日常のコミュニケーション、恋愛、ビジネスなどいたる所で「編集」は必要とされています。
ともに編集の本質を学び、編集力を磨きましょう。そして価値あるコンテンツを世に提供しましょう。

Interview/Text: 横田 亮介
Photo: 栗原 洋平

山本由樹

やまもと・ゆき/株式会社gift代表取締役社長/『DRESS』編集長
‘86年光文社に入社。週刊女性自身で16年、その後2002年「STORY」創刊メンバーとなる。2005年~2011年まで同誌編集長。2008年には「美STORY(現美ST)」を創刊し、2010年から「国民的美魔女コンテスト」を開催。美魔女ブームを仕掛ける。2013年9月に㈱giftを設立すると共に、自立したアラフォー女性をターゲットとした月刊誌「DRESS」を創刊。読者のコミュニティDRESS部活は20以上の部活数、18,000人以上の部員が集っている。

http://qreators.jp/qreator/yamamotoyuki

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