QREATORS

人類が失ったものを犬や生き物が取り戻そうとしている。ヒューマン・ドッグ トレーナー『須﨑大』

2015.12.18

Suzaki151222

犬は自分自身を映し出す鏡。自分の心がそのまま犬に反映する。犬と人間との共生、社会との共生を常に考え続ける須﨑大氏。犬と人間の関係性は現代社会が持つあらゆる問題につながっていく。須﨑氏の考える、私達の知らない犬の秘めたる可能性に迫る。

Shutterstock 111583802
自分自身の立ち位置をしっかりと理解させてあげることがとても大切。


———犬から、コミュニケーションが学べるんですか?

犬をよく見ていれば、人間と良く似た共通点を観察できます。そこから学べることが多くあります。例えば、いつも住んでいる自宅から、初めて飼い主がいない現場に来た犬の中には、そこかしこにオシッコをしちゃう犬いますよね?様々な心情が起因するこういった行動のひとつ「その子は、自己主張をしようとしている」という見方があるんです。オシッコというのは、言わば名刺代わり。やたらとオシッコしゃうっていうのは、自己主張欲が強すぎなんです。“自分を強く見せたい”“不安”そういった気持ちから、自分のニオイをつけて自分自身を落ち着かせようとしているんです。これは、人間の中にもそういう人がいるんじゃないですか?

———たしかに、やたらと名刺を配る人間がいますね。

もちろん。自分を主張する事は悪いことじゃないです。ただ、場違いだったり、その場のルールからはみ出したところで、やたら名刺を配りまくって主張するのは、カッコ悪いです。特にルールにそぐわない場所だと、そういう過度なPRはやっぱり違うと思います。犬が、ルールから外れた行動をした場合は「ちがうよ」といって正し、正された犬が叱られた理由を理解し、反省できたらちゃんと評価してあげる。すると犬たちは、群れの中における自分のポジションや立ち位置を理解出来るようになります。人間に置き換えても、同じようなことで、現場のルールを理解して、自分の立ち位置が分かれば、自分の立場や役割を理解し、変な事をする事はなくなりますよね。

Shutterstock 135432188
人間にも、犬にも自らに合った“天職”というものが必ず存在する。


———先ほどの名刺の例のように、犬からビジネスに関係したことも学べるんですか?

ビジネスで言えば、例えばですが、仕事の適任化などの観点から見れば、学べることがあります。警察犬のシェパードや、盲導犬のラブラドールとか災害救助犬、麻薬探知犬、介助犬、色んな現場で、色んな犬たちが活躍しています。もちろん、シェパードとかの犬種や大きさによって適した仕事に分けられますが、なにより犬本来の“特性”を活かしていることが重要だと言えます。その“特性”を活かして、それぞれの仕事をしているのが、各分野で活躍している犬たちです。

———“特性”とはどういう事ですか?

例えば、災害救助犬っていますよね。被災地で人の臭いを辿って、探して見つける彼らですが、災害救助犬は、別に「人を助けよう!救助してあげよう!」と思って仕事はしていないんです。彼らは、何より「人間が大好き」なんです。探す人のニオイを嗅いで、「ああ!この人に会いたい!」と思って一生懸命に自らの嗅覚を駆使し人間を探しているんです。その特性を活かして、人を見つけた時、吠えたり、知らせて連れて行くという訓練をすることで災害救助犬の仕事が成り立っています。

———救助犬とは言いながら「救助しよう」とは思っていないんですね?

そういう事です。他にも介助犬の例を言うと、彼らは、物が落ちた時、電話が鳴った時、夜中何か起きた時、飼い主が何かしようと行動すると必ず付いてきて、生活のサポートをします。介助犬の特性は、“おせっかい”。言ってしまうと、“ストーカー気質”があるんですね。何かあったら「どうしました?」「何かしましょうか?」と人間に付いてくる。人間なら「もうそこまでしなくても!」と思われるくらいですよね、介助犬には、その方が向いているんです。

———“特性”から向き・不向きが見えてくるんですね?

そうですね。警察犬と盲導犬の特性は真逆の関係性で、飼い主が、危険な状況になりそうな時、すぐにそれをキャッチして、「無理だよ!無理無理!」とストップをかけてあげられるのが盲導犬。逆に警察犬はそこを「よっしゃー!」と飛び込んでいけるのが向いています。これは人間のビジネス面でも言えると思うんです。企業の研修とかで、誰をどの部署に配置するか等、自分の適職・適任化という話がありますが、自分の適職ってなんだろう?と思った時、犬の例で言った“特性”というものを改めて考えたら、自分が活躍していける仕事分野が見つけられると思います。

Shutterstock 217154233
人工物にまみれた現代で、人は生物との有機的なつながりを求めている。


———今後犬と人の関係は、どうなると思いますか?

犬に限らず、生き物という存在が、人間にもっともっと求められてくると思います。例えば、『都心で暮らしている人ほど、家に緑を多く置く。』と聞きます。逆に田舎にいる人ほど、緑は家庭にはありません。人間は自然物を求めているというのが心の中にあると思っています。人間も本来は、自然物なので、やっぱり自然界にあるものが欲しいんです。だから近くに動物や、緑を置いておきたいんだと思います。同じことは動物園でも言えます。動物園での一番人気なのが、『ふれあいコーナー』です。これは、全面的に「さわっていいよ!自然に触れていいと」と言う雰囲気から幸せを感じるからなんですよね。電車内、お店等、人工物にまみれた暮らしの中で触る事からかけ離れてしまっている世の中で「さあさわって!」と言われ、触れる事に、どれほど皆が幸せを感じられるかが見えてきますよね。時代が進むに連れ、アナログなものが求められていると非常に感じます。

———最後に、犬と人間が関わる世の中が今後どのようになるか、話して頂けますか?
犬をはじめ、動物と接しながら生きていくのは、非常に重要なキーワードだと思っています。現在中学生未満の子供達の数よりも犬の方が多いと言われています。どれほど皆に犬たちが身近な存在になったかが分かります。これまで、人間向け・子ども向けだったのが、今後は、“犬”という事を念頭に、各企業も商品やサービスを考え、開発してくると思います。



トレーナーとしての活動ではなく、ペット事業にまつわるイベントやセミナー、一般企業やホテルの社員向研修等、自らの研究成果をもとに、その活動の場を広げている須﨑大さん。今後もっともっと彼が、犬とともに活躍する場が増えていくことだろう。

©Annette Shaff/Shutterstock.com
©Dirima/Shutterstock.com

Interview/Text: 吉原博史

須﨑大

すざき・だい/「DOGSHIP 合同会社」代表/ヒューマン・ドッグ トレーナー
犬のトレーニング施設『DOGSHIP HARBOR』
犬と人のスマートな共生を可能にするスクール「DOGSHIP Harbor」
家庭犬と飼い主の出張型トレーニングをメイン事業とする傍ら、ペット事業にまつわるイベントやセミナーにとどまることなく、自らの研究成果をもとにした一般企業やホテル、自治体等の社員向研修に従事。
犬を理解し、犬の個性を活かす」ことを念頭に入れたトレーニングを提案し、犬種・性格・生活環境・経験値の違いを、飼い主ご自身が認めると同時に、飼い主として愛犬と真摯に向き合うことによって、ご自身「学び」がある時間を持ち得ていることを提案。ドッグトレーナーの実務経験と、動物の「行動学」と「心理学」を学問してきた立場から、「動物行動心理学」という新しい分野を標榜する。「動物としての人間」を前提としながら、「言語能力」や「視覚能力」に偏らない五感による観点から「人間にも応用できるコミュニケーション学」を紹介。

http://qreators.jp/qreator/suzakidai

プロフェッショナルのための
クリエーターのカタログサイト
アイデアが見つかる。
仕事が生まれる。

プロフェッショナルの
目線に合わせた独自のカテゴリ、
今話題の情報、時期に合わせた
旬のキーワードを軸に
あなたが求めるQREATORを
ご紹介します。