人間関係と同様に犬と向き合う。ヒューマン・ドッグトレーナー『須﨑大』が掲げる犬との向き合い方

2015.12.18

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ヒューマン・ドッグ トレーナー須﨑大。彼は、単に飼い主のいう事を聞く犬のトレーナーではない。「犬を理解し、個性を活かす」ことを念頭に入れた独自の方法を取り入れながら、家庭犬と飼い主の出張型トレーニングを行っている。今回のインタビューでは、彼が営んでいる犬のトレーニング施設犬と人のスマートな共生を可能にするスクール「DOGSHIP Harbor」にて、彼の考える、正しい犬との接し方、犬との向き合い方を聞いた。

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吠えるにはちゃんとしたワケがある。行動の本質を捉えることで、意思の疎通が出来るようになる。


———『DOGSHIP Harbor』ではどのようなことをしているのですか?

いま、この施設では、ソファーやテーブルなどの家具を置いて家庭を再現しています。ですので、家族がいる、来客が来るなど、人間の普段の暮らしで、犬たちが、うまく自分の時間を過ごしながらルールや決まりに受容できるようなしつけを行っています。犬たちが成長し、うまくルールや決まりが守れるようになると、次のステップとして、家庭でも反映できるようなプログラムを行っていきます。そのプログラムの中では飼い主さまにも参加いただく授業参加や、ご自宅に伺う出張トレーニングを行っています。

———しつけをどのように考えていらっしゃいますか?

人間と接する時と非常に似ています。彼らの反応もまた人間に似ています。例えば叱るとき、犬にかける言葉は何でもいいんです。いけない事をしたとき「NO(ノー)」という言葉でも良いんです。ただ決して怒鳴ったり叩いたりせずに、言葉に気持ちを込めて、彼らに訴えます。すると必ず犬が発する「反省のサイン」が確認できるようになります。
例えば、もし飼い主が伝えようとしていることを犬側が受け入れられなかったり、理解できなかったり、あるいは反発心があると、犬はずっと飼い主を凝視します。これはメンチを切るのに似ていますね。次に“ペロッと舌を出す”。これは人間もよくしませんか?“テヘペロ”と同じようなものですね。他にも身体の力が抜けるなどがあります。もし力が入っていれば、なにかしら行動をしたい何かしら主張をしたい気持ちの現れなんです。

———叱ると言っても、「コラ!」とかじゃないんですね?

そうですね。ただ叱ることだけではなく、叱る理由があって、それを受け入れることができたら、そのことをちゃんと評価してあげることが大事です。人間も遅刻したり失敗したら、それを指摘して、改善出来たらしっかり褒めてあげる。するとモチベーションにつながってきますよね?また、犬の中には、やたらと吠える犬いますよね?チャイムや、物が何か鳴り響いたら吠えたり、散歩中よその犬にほえたりなどする犬。犬は、家庭で「吠えると自分の主張は通るんだ」という事を経験し、その経験から吠えることを学習します。ここで重要なのは、吠える事をどうすれば良いかと考えるよりも、根源を改善することが大事なんです。“なぜ吠えたいのか?”その根源を知り、彼らに飼い主が伝えたい事を受け入れる受容体を作らせ、家庭など、社会のルールにそぐわすのが、『しつけ』のひとつの考え方だと思っています。

もちろん飼い主のライフスタイルに順応しているイイ子もいます。ただそれはそれで、問題があって、今度は犬らしい時間を過ごせてなくなっちゃうんです。留守番もできる、吠えなくなった。けどストレスがたまって毛が抜けたり、病気になっちゃう事もある、『人間の暮らしに沿わせるけども、最大限“犬らしさ”は残す。』そのためにも、犬が本来持ち合わせている「行動欲」や「仕事欲」等を満たしてあげることも大切なことです。

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「しつけ本」であなたの犬は、しつけられない


———犬をしつけるとき、どのようにすれば犬に自分の気持ちが分かってもらえますか?

“犬のしつけ方”っいう本って出てますよね?それだけ読んでも、なかなかうまくいかないでしょう。犬と付き合う時「犬と人間の生物的な違い」「犬種の違い」「経験値から得られる性格の違い」これら3つを踏まえて付き合うのが大事になってきます。人間の男女関係と非常に似ています。「男と女の違い」「出身地の違い」「育ちからくる性格の違い」みたいな事です。残念ながら飼い主の中には、「トイプードルのしつけ方」みたいな本などを買いがちで、実質売れています。それは、「北海道の女性の付き合い方」という本を買うのと似たような事象だと思います。

———確かに!県民性で女性を口説けるワケないですもんね?

そういう事です。北海道の女性にも色んな人がいるように、トイプードルにもいろんな性格のトイプードルがいます。私が言えるのは、「本の内容に間違いは書いてないと思う。ただ、あなたの飼っている、この子のことは書いていないよ。」という事です。重要なのは、まずは目の前にいる、その子の事をよく観察して、“知ってあげる” “知ろうとする”気持ちと姿勢です。異性に対してもそうじゃないですか?好きな相手の事を知ろうとしていませんか?

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「あなたの犬は、右利き?左利き?」これに答えられない飼い主が多い。

ほとんどの飼い主の多くが、“自分の犬が、右利きか左利きか”と答えられません。せめて自分ちの犬の事は知って欲しいんです。異種に対して、頭で理解しようとするのではなく、まずは観察してほしい。「右利きか、左利きか、どっちか調べなさい」と言っているのではありません。「それくらい見てあげてね」という事です。可愛がるのは大いに結構だけれど、ただ単にカワイイカワイイとするのではなく、知っててあげて欲しいんです。

———その前に右利き左利きとか犬にもあったんですね?

もちろんありますよ。散歩の時とか、階段を昇る時、オシッコするとき、観察していれば分かると思いますよ。まずは近づいて、観察しましょう。触れあいましょう。だって、好きな相手が出来た時、距離を縮めたくなるでしょ?プレゼントなど何かを与える時も同じです。相手がどういう物を欲していて、何を評価しているのか、できるだけ詳しく知ろうとしませんか?そんな時人間は喋って意思表示が出来るから簡単に知る事ができます。犬は喋れない。だからこそ自分から歩み寄ることが大事なんです。それができるのが人間なんです。私達人間は相手の立場になる事ができるという“思いやり”を持っている動物ですから。

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犬はアナタを映し出す鏡。「うちの犬、頭わるくてぇ~」というアナタ、それは自分のことかもしれません。


———他に飼い主が誤解している犬との接し方ってありますか?

須崎:海外では「Dog is mirror of you」(犬はあなたの鏡です)とよく言います。犬は哺乳類の中で極めて時間や空間を共にする関係を大事にする生き物です。そして何より飼い主が大好き。当然似てきます。真似もします。理由は十分そろっている訳です。飼い主の事が気にならないわけがないんです。飼い主の心理や行動をしっかり観察して影響を受けています。よく「私の犬、頭がわるくて・・・」「うちの犬“問題犬”で・・・」という表現は、とても恥ずかしいことなんです。特に日本の謙遜の気質という背景がありますからね。「ウチのバカ息子が…」みたいな。それが犬に対しても持ってしまっているかもしれないですね。

———飼い主の誤解というものはその他にもありそうですね。

「うちの犬を直してください。」と言ってトレーナーに預ける人が全国規模では多いです。また「うちの犬をどうやったら、言う事を聞かせることができますか?」と犬を抑えこむ方法をたずねてくる方も多いです。そういう方々は、考え方から変えなくてはいけません。「言う事をきかす」のではなく、こちらが望んでいる行動を、犬にも選択できるようにコミュニケーションに努めることが重要です。何でもいう事を聞く犬が欲しければ、もはやロボットで良いじゃないですか。でも、なぜ私たちが犬と暮らすのか。そこには、ロボットで得られないものがあるからですよね。うんちをする、怪我もする、リアクションが得られる、温かい、個性がある。それは生き物と接していればこそ得られるものです。その為には、相手を知ることです。知ろうとすればするほど、今度は逆に犬から学ぶことが沢山でてきますよ。


これまで多くの犬たちと触れあい、トレーニングをしてきた須崎大。そのしつけ方は至ってシンプル。その根底には「犬を知り」「犬を理解してあげる」ことが重要という信念がある。犬と接し、犬を知ると、人間の可能性を伸ばす多くの事が学べると語る須崎大。犬から学ぶ事について、是非教えて頂きたいと言ったところ、その時もまたお話しましょうと笑顔を見せていただいた。

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Interview/Text: 吉原博史

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須﨑大

すざき・だい/ヒューマン・ドッグ トレーナー
犬のトレーニング施設『DOGSHIP HARBOR』
犬と人のスマートな共生を可能にするスクール「DOGSHIP Harbor」
家庭犬と飼い主の出張型トレーニングをメイン事業とする傍ら、ペット事業にまつわるイベントやセミナーにとどまることなく、自らの研究成果をもとにした一般企業やホテル、自治体等の社員向研修に従事。
犬を理解し、犬の個性を活かす」ことを念頭に入れたトレーニングを提案し、犬種・性格・生活環境・経験値の違いを、飼い主ご自身が認めると同時に、飼い主として愛犬と真摯に向き合うことによって、ご自身「学び」がある時間を持ち得ていることを提案。ドッグトレーナーの実務経験と、動物の「行動学」と「心理学」を学問してきた立場から、「動物行動心理学」という新しい分野を標榜する。「動物としての人間」を前提としながら、「言語能力」や「視覚能力」に偏らない五感による観点から「人間にも応用できるコミュニケーション学」を紹介。

http://qreators.jp/qreator/suzakidai

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