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「ネットで政治が変わる」はウソ!? ネットでの活動で見えたものとは!?

2015.12.16

Yoshidaaoki

若者の政治離れが叫ばれる中、「ネットで政治は変わる」という言葉もいつの間にか耳にしなくなった現在。実際にデジタルネイティブと呼ばれる若者が増えて行く一方、それらが今後の政治にどのような影響を与えて行くのだろうか。
実際にネットで政治に関わってきた吉田拓巳さんと青木大和さんに今後のネットと政治の可能性について語っていただきました。

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ネットは「価値観や出会いを広げる存在」

──いわゆる「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代のおふたりですが、ご自身にとってネットやスマホはどのような存在ですか?

青木 どういう存在と言われると難しいですね。

吉田 体の一部みたいなものですよね。

青木 そう。「どんな存在か」と言われても、そもそもネットが普及していない時代を知らないから、考えたこともない。

吉田 スマホはいつから持ち始めた? 僕はiPhoneの初代が出たときだったから、2007年で12歳くらいだったと思うけど。

青木 僕は遅いかな。16歳くらいのとき。それまでずっとガラケーで、今もガラケーと併用していました。通話用がガラケーで、ネット用がスマホ。ただ、長文のメールを打つときはパソコンを使うかな。フリック入力ができないから、どうしてもキーボードになっちゃうんだよね。

吉田 あ、俺もフリックできない。女子高生とか超速いですよね(笑)

青木 そう考えると、少なくとも僕はスマホネイティブじゃないかもしれませんね。

──では、逆に考えてみてください。いま、この時代にネットもスマホも存在していないとしたら、いかがでしょう?

吉田 それは困りますね。たぶん、すごくつまらない生活を過ごしているんじゃないかな? そう考えると、インターネットは固定概念や既成概念を変えてくれるものだと思う。あとは「自分の価値観を広げてくれる存在」かな。というのも、もしもネットが存在しなかったとしたら、子どもの世界って本当に狭いんですよ。「家」と「学校」と「近所」だけで、自分の全世界が形成されてしまう。

青木 学校って画一的だよね。勉強やスポーツができれば、それだけでヒエラルキーのトップに君臨するような世界。その一方で、勉強もスポーツもできない人は「自分はダメなヤツ」と自信を失うこともある。でも、ネットがあることで“違う評価軸”に気づくことができる。学校内ではダメかもしれないけど、学校外では「自分の能力はすごい」と気づく機会が、ネットのおかげで増えたんじゃないかな。

吉田 そうですよね。よく「新しいことをはじめるとき、ためらったりしないんですか?」とか聞かれるけど、ネットのおかげでためらわずに済むんですよ。たとえば、自分の知り合いが現実世界に50人くらいしかいなかったとしたら、そのなかのひとりの意見は重要だと思う。でも、ネットを介して数万人の反応が得られるならば、ひとりから批判されても何とも思わない。ネットのおかげで、自分のやりたいことをやれているんだと思う。

青木 それに、僕らだってネットがなかったら出会ってないよね。

吉田 たしかに。

青木 僕は東京で、拓巳君は福岡。普通に暮らしていたら間違いなく交わることはなかった。これもネットのおかげだよ。

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炎上経験者が語る「炎上しないコツ」

──ふたりが繋がった経緯は何だったんですか?

青木 Twitterです。彼が「Teens Opinion」(※1)を運営していることをTwitterで知って「これはスゴイ!」と。自分じゃできないなと思って、連絡したのがきっかけでした。

吉田 もともとノリではじめたサイトだったんだけどね。

青木 街宣車がうるさかったからでしょ?

吉田 そう。いまどき街宣車とか“20世紀式”だなと思って。

青木 「うるさくするくらいならネットでやれよ!」という思いがきっかけで、「Teens Opinion」ができたというのは、すごくおもしろい。

──「ノリではじめた」とのことですが、実際に運営してみていかがでしたか。

吉田 「社会は綺麗事が好きだ」ということが、よくわかりました。

青木 (笑)

吉田 「Teens Opinion」よりも前に「お年玉.me」(※2)という、ネット上でお年玉をやりとりできるサイトをつくったことがあったけど、アレは大炎上したんですよね。

青木 めちゃめちゃ話題になってたよね。

吉田 当時はクラウドファンディングもなくて、続けていればヒットしたと思うんだけどね。ただ、本質を変えるような仕組み・アイデアって、社会が過剰反応する。「Teens Opinion」が炎上しなかったのは、「10代が政治を考える」という誰が見ても印象の良いテーマだったから。何かの本質を変えるとしたら、綺麗事を上手に乗せながら、だましだまし根っこを変えていけばいいんだと思う。

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──一方、同じ政治を扱ったサイトながら、青木さんの「♯どうして解散するんですか?」(※3)は大炎上してしまいました。

吉田 いいッスね、その話題(笑)

青木 まさに真逆の反応でした(笑)

吉田 でも「Teens Opinion」よりもはるかに話題になったけどね。首相にまで届いて、安部(晋三)さんがコメントする(※4)ってすごいことだよ? もしも書面にしたためて安部さんに送っても、読まれない可能性の方が高いかもしれないし。

──炎上の結果、一国の首相まで届いたわけですが、「Teens Opinion」と「♯どうして解散するんですか?」の違いは何だったのでしょう?

吉田 あくまでも個人的な分析ですが、いまは“リアルしか受け入れられない”と思うんですよ。日本人がフィクションに共感しなくなっているんです。彼のサイトは架空の小学生というフィクションだったけど、もしも「青木大和」の名前を出していれば炎上しなかったはず。なぜですかね……寛容さに乏しいからですかね。別に青木君のサイトで誰かが死ぬわけでもないのに、多くの日本人は反応して怒ってしまう。いまのご時世、フィクションが受け入れられにくくなっているんですよ。ただ、やり方を変えれば、良い方向にバズらせることも可能だったかもしれない。

青木 バッサリだね(笑)。まぁ、実際に開設当初からネット上では犯人捜しゲームみたいになってたけど。とくにTwitterからの反応が厳しかった。

吉田 テーマ設定も文学的すぎてわからなかった。何だっけ? 村上龍の……。

青木 『希望の国のエクソダス』。

吉田 そう、それ。わけわかんないよ(笑)。国民全員が共通認識できれば話は違ったかもしれないけど、認識できない時点で、たとえリアルでもフィクションになっちゃう。ブランディングの問題だと思う。

青木 サイト自体は3日くらいでできたんだけどねぇ……。

吉田 でも、村上龍の作品が関係しているなんて、普通はわからないよね(笑)。

青木 実際、誰も気づいてくれなかった(笑)

吉田 それって“エリートの発想”の典型だよ。誰が見てもわかるようにしないと。「Teens Opinion」のコピーは、誰が見てもわかるようにしてる。小学生が見ても何となく理解できるレベル。「よく見たらわかる」じゃダメ。これは本当に重要なこと。

青木 あのサイト、よく見てもわからなかったもんな……。

吉田 そうだよ。注釈で入れておけばよかったと思う。

青木 拓巳君は「お年玉.me」以降、炎上してないよね。

吉田 炎上しないコツを掴んだから。

青木 何それ、教えてよ。

吉田 さっきも言ったけど“綺麗事を上手に乗せる”こと。「あ、何か良いことを言っているな」と思わせられれば、炎上しそうな内容を言っても大丈夫。ただし、必ず思ったことを綺麗に丁寧に伝えることが大事。最初のうちは叩かれるかもしれないけど、その時期を過ぎると「吉田はそういう人だから」という雰囲気になって炎上しなくなる。「街宣車がうるさい」って表面的には炎上しかねない内容だけど、根本には「若者がもっと政治に対してコミットできる社会にしたい」という正義があるから、あまり批判されないんだと思う。

青木 なるほどねぇ~。

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「ネットからリアルへと落とし込めるか」が重要

──政治に関連したサイトに携わったふたりに聞きたいのですが、近年「ネットで政治が変わる」と言われています。この言葉をどのように捉えていますか?

青木 僕はネットだけで政治は変わらないと思っています。ある種、ネットは爆発的に広がるし、マスに対して周知させる影響力を持っている。でも、既存の政治システムは議会に行ったり選挙に行ったりとリアルが大事にされています。ネットのおかげでさまざまな情報を得られるけど、結局は“いかにしてネットからリアルへと落とし込めるか”が課題。ネットだけで社会は変わらない。ネットとリアルの組み合わせが重要。

──海外に目を向けると、チュニジアのジャスミン革命に端を発した「アラブの春」や香港の民主化デモなどは、ソーシャルメディアが大きな役割を果たしました。

青木 香港のデモは実際に現地で見ましたよ。

吉田 そう言えば、あのデモって何か変わったの?

青木 結局は駄目だったけど、本当に大勢の人が集まってた。あのデモが中国で起こったというのは前代未聞で、それが国際的にも評価されてたと思う。個人的におもしろかったのは、日本のデモと違ってライブ会場みたいだったこと。中央にステージが用意されていて、中国人アーティストが歌ったり、世界中から届いた応援メッセージを近隣の白いビルに投影したり……。ネットとリアルが上手に駆使された運動だったと言えるんじゃないかな。

吉田 日本は普通に生活できているし、殺されるような危機もないから、香港みたいな運動はなかなか起こりづらいよね。

青木 そうだね。

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吉田 日本の場合、根本を変えるよりも、先に価値観や行動を変えるようなことを考えた方がいいんじゃないかな。

青木 政治に期待するよりも?

吉田 そうそう。もともと僕自身は表面的な法律に興味がないんだよね。安保とかで騒ぐのは自分としては心底どうでもよくて、根本を変えた方がいいと思っている。「Teens Opinion」にしても、別に18歳選挙権はどうでもいい。もっと根本的に国の仕組みや人々の行動が変わった方がいいと思っているから運営している。表面的な薄っぺらい部分を突いてもどうにもならないと思う。

青木 たしかに、安保の話題が盛り上がっていたけど「安保を通してどんな未来をつくりたいか」という議論はほとんどされていない。本当に考えるべきは、どんな国をつくっていきたいのかだと思うんだけど。

吉田 日本って、表面的なパフォーマンスが好きですよね。以前、討論番組で「多くの国民が、日本に原爆が投下された日を知らない」という話題が出たけど、正直なところ日本に原爆が投下されたという事実が重要であって、日付はあまり重要ではない。

青木 原爆そのものに対する理解とは別物だもんね。

吉田 そういうこと。他にも、終戦記念日になるとTwitterとかで「黙祷」とか書き込んでる人をよく見かけるけど、ああいう表面的なパフォーマンスが好きな人が多いと思う。

青木 根本で何を考えているのかを表に出さないよね。(吉田)拓巳君はリアルではシャイだけど、ネットを通せば普通に考えていることを伝えられるでしょ? そういう人って多いと思う。だから、そんな根本の考えを、もっとネット上で活発に議論できるようになって欲しい。個人的には“インターネットを使った民主主義”に挑戦できないかと。「ネット右翼」と呼ばれる人もいるし、得てして政治の話となると喧嘩になりやすい。でも、そんな中で建設的な議論が交わされて、いろんな人がいろんな思想を持っていることが理解できるような言語メディアがあればいいと思う。「ネットで政治が変わる」と言われて、たしかにその側面もあったかもしれない。ただ、ネットで声が集まってもリアルではどうなんだという問題がある。もっとネットの声が、世論や一般意志として可視化できるようにしたい。

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吉田 「Teens Opinion」などを通じて、自分も政治について考えるようになったけど、もしかしたら根本は教育にあるんじゃないかと思う。学校って、現在の政治の話を一切しないじゃん。

青木 してはいけない雰囲気すら漂ってるよね。

吉田 正直、縄文時代とかよりも、もっと現代について学んだ方がいい。

青木 そうだよね。学校の歴史の授業って、最終的に時間が足りなくなって現代に近づくにつれて駆け足になってる。

吉田 現代なんてサーッと触れるだけ。でも、やっぱり過去より現在の方が大事だよ。極端な話、教師によって政治思想に偏りがあってもいいから、小学校の頃から政治について学ぶべき。ただ、教育に埋め込むのを期待するのは難しいかな。こちらで勝手にやった方がいいのかな?

青木 やりなよ。やった方がいいよ。

吉田 政治に参加するきっかけだしね。自分はエンタメ系の仕事もしているから、小学生が初めて触れる政治に対して、もっと親しみやすいサイトをつくるとか……。

青木 まだ時間は掛かるけど、いずれユーザーのネットリテラシーも大きく向上するはず。政治に限った話じゃないけど、ネットとリアルの関係はこれからが大事な時期になってくると思うよ。

******注釈
※1【Teens Opinion】……選挙権を持たない未成年が「ネット疑似選挙」を行えるサイト。「10代に、日本の未来について考える機会と、意見を聞いてもらう手段をつくること」を目的に、2012年に開設された。
http://teensopinion.jp/

※2【お年玉.me】……お年玉を欲しい人が、自身のプロフィルやお年玉の使い道をサイト上に登録し、クレジットカード決済によって寄付ができるサービス。支払いシステムに欠陥があったため、ネット上で批判を集めた。2011年12月21日にスタートしたが、炎上を受けて2012年1月1日に閉鎖となった。

※3【♯どうして解散するんですか?】……2014年11月20日に公開された、衆議院解散の是非を問うサイト。小学4年生がつくったサイトとされていたが、そのクオリティの高さから疑われて炎上。公開から2日後の22日、同サイトをプランニングした青木氏が名乗り出て謝罪する騒動となった。

※4【安倍首相のコメント】……「♯どうして解散するんですか?」の一連の騒動に対し、安倍晋三首相が公式Facebookでコメントを発表。「批判されにくい子どもになりすます最も卑劣な行為」と苦言を呈した。

Interview/Text: 松本 晋平
Photo: 保田 敬介

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