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MC型教師と元引きこもり少年が語る「人生を救うゲーム体験」 イシイジロウ×沼田晶弘×小幡和輝

2015.12.10

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PlayStation 4にX box One、Wii Uにニンテンドー3DS、PlayStation Vita 、さらに前にはスーパーファミコンにPlayStationなど、ここ数十年でさまざまなゲームハードが登場し、多くの人が触れたことのあるコンピューターゲーム。

1人で遊ぶものから、みんなで遊ぶもの。実際に会わずともオンライン上で世界中の人と遊んだりと、ゲームの遊び方は年々多様化している。

今回は、そんなゲームの世界で『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』『428 ~封鎖された渋谷で~』をはじめとした、数々のゲームを生み出してきたゲームクリエイターのイシイジロウさんをファシリテーターに、8年間の引きこもり生活の中で「ゲームに救われた」と語る、高校生時代に企業したイベント制作会社・和ーなごみの社長をつとめる小幡和輝さんと、ゲームで得た経験などを教育に取り入れ、テレビ番組のMCのような革新的な授業を繰り広げる小学校教師・沼田晶弘さんという、特異な経歴を持つ2人と、「大人ゲーム論」をテーマに、彼らのゲームに対する向き合い方や、ゲームの経験が今の仕事に活きているというゲーミフィケーションについて語ってもらった。

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シミュレーションゲームと教師の仕事は似てる?

イシイ まずは、コンピューターゲームやアナログゲーム、どんなゲームに出会って影響を受けてきたのか教えてもらいますか?

沼田 僕は、小学校の頃にファミリーコンピューターが発売されて、最初は買ってもらえなかったので、放課後に持ってる人の家に集まって遊んだのが出会いでしたね。そのあと、やっぱり自分でもほしくなって家族に買ってもらいました。当時は、水泳とかの習い事が忙しかったので、休憩時間に寸暇を惜しんでやるというか。高校時代は、シミュレーションゲームみたいな、育てるゲームが好きでやってましたね。

イシイ なるほど、シミュレーションゲーム。

沼田 こんなこと言うと本当に楽しんでいたのかと思われるかもしれないですけど、たとえば当時ハマっていた『ベスト競馬・ダービースタリオン』だったら、弱くて牧場が潰れちゃうんじゃないか、みたいな段階は楽しいんだけど、だんだん強くなってくると興味がなくなっちゃう。

イシイ シミュレーションゲームが好きっていうのは、なんだか教師の仕事と関係がありそうですね。

沼田 『シムシティ』とかもそうなんですが、最初は好きなんです。でも、裕福になってできあがってくるとつまらなくなる。学校のクラスって、最初は色々と僕が指導したりすることもあるんですが、大体2〜3ヶ月くらいでできあがるんですよね。あとは生徒たちが自主的に動いてくれるので、僕はただ見守っているだけ。言われてみると、少しシミュレーションゲームに近いところがあるかもしれませんね(笑)。

イシイ その感覚は、すごく教師的だと思います。以前、金八先生のゲームをつくった時に読んでいた本の中に、教師のお仕事って常に生徒次第なところがあって、それに耐えられないとダメだって書いてあったんです。

「見守る」というところに、沼田先生は、ある意味学生時代から教師としての適正があったような気がします。しかも、学校って大人になるまで一緒にいるわけじゃないから、できあがったものは見られないというか。期間限定というところにも、沼田先生のシミュレーションゲームの楽しみ方と通ずる部分がありそうですよね。

沼田 たしかに近い部分はあるかもしれないですね。同じ子供たちと長く関わる仕事ではないので。クラスをもっても2、3年が限度ですね。

とはいえ、シミュレーションゲームは途中で飽きますが、クラスは飽きません。逆に時間が経つにつれて、見てるのがどんどん楽しくなってきちゃう。生徒が賞取ってくると、一緒になって喜んじゃいますね(笑)。

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3万時間もゲームをやり続けた元引きこもり少年

イシイ つぎに小幡さん。ゲームに出会ってから高校生の時に起業するまでの間、ゲームとどう付き合ってきたんでしょうか?

小幡 いとこがゲーム好きの家庭だったこともあって、2〜3歳の頃にいとこが『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)』とかをやっているのを見て、いつも「おもしろそうだなあ」と思いながら見ていたのが最初の出会いですね。

小学校低学年の頃にゲームボーイの『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』の青を買ってもらったのが、一番最初に遊んだゲームだと思います。

イシイ ポケモン世代ですか!

小幡 そこからゲームにのめりこみました(笑)。当時は小学2年生くらいだったんですが、学校が面白くなくて、対人関係がうまくいかなかったり、いじめられたりとかもして、全然行ってなかったんですね。だから学校には行かずに、ひたすら家でゲームばかりしていました。

本当にめちゃめちゃやりまくっていて、高校3年生の15歳くらいの時に起業するまでの8年間はずっとゲームをやっていたので、ソフトに記録されているプレイ時間だけでも3万時間は超えています(笑)。

PlayStationからPlayStation 2、PlayStation Portable、ゲームキューブ、ニンテンドーDS、Wiiとか、当時のほとんどのゲームハードは持っていました。

イシイ どんなゲームをやってたんですか?

小幡 『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』は全シリーズやっていたし、当時1番好きだったのは『真・三國無双』に代表される無双シリーズと『モンスターハンター』シリーズですね。

イシイ 『モンスターハンター』って、すごくやり込めるので、あっという間に時間が経ってしまいますよね(笑)。

小幡 当時の僕が1日にゲームをやる時間って本当に半端なくて、10時間以上とかは当たり前。普通にプレイしてると、1週間とかでクリアしちゃうんですね。

でも、お金持ちでもないので、新しいゲームは年間2〜3本しか買ってもらえない。だから、1つのゲームに100日くらい時間をかけないといけなくて、いかに同じゲームを長く続けるか、ということを考えていました。

『モンハン』だったら、武器も防具も初期装備の状態で、一番難しいクエストに挑戦するとか、『ドラクエ』だったら、全滅したらデータを消すとか、そういう「縛り」をつけて遊んでました(笑)。

イシイ それはもう理想的なゲーマーですよ(笑)。

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『遊☆戯☆王』カードは株式取引に近い

小幡 コンピューターゲームではないんですが、中学生の時にカードゲームの『遊☆戯☆王』にハマって、和歌山県で一番強くて、全国大会に出場するくらいには没頭してました。

トレーディングカードって、時間が経ってから価値が上がったりすることが頻繁にあって、そのタイミングを見計らって売る、みたいなことを繰り返しながら交通費を稼いで、1人で大阪のカードゲームショップまで行ってたりしてましたね。

イシイ 中学生でその発想はすごいですね……。まさか、『遊☆戯☆王』カードの取引で起業の資本金をつくったりとかはしてないですよね?(笑)

小幡 いや、それはないです(笑)。

イシイ カードゲームは、お金持ちの人がお金でカードを買ったり、トレーディングを通して自分を強くしていく2つの種類があって、株式取引に近い部分がありますよね。だから自然と金銭感覚みたいなのが身についてくる。小幡さんは中学生の頃から経営者的な視点を持っていたかもしれないですね(笑)。

引きこもり時代のゲームやカードゲームでの経験って、今の仕事にも影響してたりしますか?

小幡 僕の仕事はイベントを企画したり、アイディアを企業に提供することなんですが、特にアイディアを練る時なんかは、やっぱり影響を受けていますね。

たとえば『遊☆戯☆王』カードは、いろんな種類のカードを組み合わせて40枚のデッキをつくるんですね。そのカードの能力はほとんど覚えていて、対戦することで、強いカードの組み合わせを研究して、最強のデッキを目指していく。そうやって研究を重ねてきたデッキで優勝するのがすごく楽しいんですよ。

そうやって、いろんなリソースから最適だと思う組み合わせをつくって他人に評価してもらう、という流れは、今の仕事のやり方にも影響していると思います。

イシイ 数少ないゲームという限られたリソースを、いかにコントロールしながら長く遊ぶか、ということを考えていたからこそ、3万時間もゲームができていたかもしれないですね。

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MC型教師の「競争」「課題」「制限」で行うゲーミフィケーション教育

イシイ 沼田先生は、教育の現場でゲームの要素を取り入れたりと、いわゆる「ゲーミフィケーション」の枠で紹介されることもありますが、どのような形でゲームを取り入れているんですか?

沼田 ゲームかどうかは自分ではわからないんですが、周りの人にゲーミフィケーションだといわれる所以は、授業に「競争」と「課題」と「制限」の3つの要素をよく取り入れるからかな。

要は、人と競える課題を与えて、それをどうクリアするか。さらに課題に制限を加えることで、子ども自身から「やりたくなっちゃう」ような気持ちを引き出してあげる。

たとえば、以前、風力・水力・太陽光・地熱・バイオ熱の5つの再生化エネルギーを小学生に浸透させてほしいという仕事があったんです。ただ、どう考えても「エネルギーがなくなったらどうする?」なんて唐突に言っても子供たちは興味を持たない。

だから、「君たちは何ヶ月後かにこのエネルギーを徹底的にアピールして、選挙をする。そして、誰が1位かを決めるんだ」という形で授業を行いました。課題も制限も決めて、1位を取るという競争もつくる。ゲームをやってるような感覚で楽しくなる工夫をして、それを学ぶ力に変えていけたらいいな、という考え方で指導していますね。

イシイ 今の話、おもしろいですね! まさにゲームをデザインされているように感じます。

沼田 今の再生化エネルギーの指導の例では、本来は「そのエネルギーを学ぶ」ことが目的だけど、実は彼らにとっては「自分がアピールするエネルギーで1位を取る」ことが目的になります。勉強が苦手でも、目的をそらすことでやる気が湧いてくる。本来の目的からそれているけど、自然と勉強していることにつながるんです。

イシイ 目的をそらしたりとか、自分じゃないキャラになって演じると、案外動きやすかったりしますよね。

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『ドラクエ』みたいに、クラスを徹底的にロールプレイする

沼田 クラスをまとめていく上で、徹底的なロールプレイというか、生徒たちの特徴を活かすことは意識しています。運動会とかで足が速い子やパワーがある子は、その力を活かせる種目に徹底的に分ける。たとえば、パワーがある子って逆に足が速くないってことありますよね? そういう子たちって、リレーとかに出場すると他の子に責められたりすることがあるんですよ。

ほかにも、スポーツは苦手だけど文字を書かせたらピカイチな子とか、ドラムがうまい子とか、色んな子がいる。

だから、彼らの力を発揮できる場を僕がつくって、一緒に戦う。『ドラクエ』のパーティーを組むような感覚です。それが僕の仕事なのかなって。

イシイ まさに沼田先生の教育は最新のゲームデザインであり、今の子供たちに合ったものだと思います。僕らの世代って『ドラゴンボール』に代表されるように、とにかく強いやつが1番なんですよ。悟空が強くて、クリリンとかは置いていかれるんですね。みんな悟空になりたいと思う。

それが最近は変わってきていて、『ONE PIECE』なんかを見てもらうとそうなんですけど、必ずいろんな力が役に立つんです。つまり、使えないキャラがいない、誰もが常にチャンスがある。だから沼田先生のような教育は、今の世代の子たちにすごく合っているし、さすがだなと感じます。

沼田 僕は色んな敵=課題を用意するんです。それも、歯が立たないような敵ばかりじゃダメで、『ドラクエ』でいう、経験値がたくさんもらえる超喜ばれるはぐれメタルのような敵を用意して、思わず会心の一撃をバンバン入れたくなるようにとか、用意する敵にも配慮してます。

そうやって工夫することで、みんなに活躍の場ができるようにしたいんです。

イシイ お二人の話を聞いていると、シミュレーションゲームの出だしが好きだとか、遊戯王カードが好きだとか、ゲームって人を表すんだと思いました。ゲームから何を学んだかというよりは、何が好きか、どんな風にプレイしたかということを知ることで、より自分が成長できるような印象を受けましたね。

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高校生起業家が「ゲームに救われた」と語る思いとは?

イシイ 最後に「良いゲーム」とは何だと思いますか?

小幡 コミュニケーションツールになれるゲームだと思います。カードゲームが好きな人たちと話が盛り上がったりとか、囲碁であれば、60代くらいの人とかとも話が通じたりとか。

イシイ ゲームの体験って人を深くつないでいく力がありますよね。たとえば『ポケモン』世代とか『ドラクエ』世代と言われている人たちは、まるで自分の人生のように語り合って仲良くなることってありますよね。普段会わないような人とも、ゲームをすると仲良くなれたりとか。この人を繋ぐ力は映画やアニメよりも強いと感じています。

小幡 僕は学校へ行ってなくて、ゲームにしか居場所がなかった。でも、ゲームをするためだったら外へ出ることができて、知らない人とも話せた。本当にゲームしか楽しい時間がまったくなくて、ゲームがなかったらこの世にいないんじゃないかというくらい、ゲームに救われたと思っています。

沼田 僕は、たとえば『戦国無双』とか『戦国BASARA』をやったことで歴史に興味を持つとか、何も知識がないけど、ゲームをすることで学ぶきっかけをつくってくれる、0をやってくれるゲームがいいんじゃないかなと思います。『シムシティ』をやってたら、原発の危険性がわかったりとか。

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ゲームは悪じゃない

小幡 でも、よく「ゲームは悪」みたいな言われ方をしますよね。

沼田 僕は悪ではないと思います。ただ、僕がクラスで言ってしまうと、生徒たちがゲームしかやらない状態になってしまうと思うと怖い(笑)。

やらなきゃいけないことはちゃんとやって、そのリラックスタイムにゲームをするのであれば、それって自由だし、目の疲れとかに気をつけてもらえれば全然いいと思います。

イシイ そこに関しては、経験をどう使うかという話でもあると思いますね。映画や小説も同じですけど、フワっと吸収していたら意味がない。経験や体験からどう学ぶかということが大事。

小幡 僕が3万時間ゲームをやり続けたというのは、普通に考えたら無駄だと思われるでしょうね(笑)。でもイシイさんの言う通り、3万時間という経験をどう使うかが重要だと思っています。3万時間もゲームを続けた人なんてほぼいないと思うし、結構特殊な蓄積をしていると思うので、僕は後悔はしてません。

イシイ 不登校だったり、家にずっといないければならない、時間が有り余っているというある意味地獄のような中で、ゲームは小幡さんにとっての救いのツールになれた。ゲームはコミュニケーションツールにもなるし、学びのツールにもなる。もちろん、ゲームと一定の距離を取ることも大切ですが、使い方さえ間違えなければ、とても優れたツールだと思います。

当記事の対談の様子は、下記番組でも放送いたします。
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QREATOR'S calendar
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放送日 2015年12月14日(月)・12月21日(月)
時間 22:30〜23:00
放送局 TOKYO MX
スタジオゲスト 西野亮廣、堀江貴文、椎木里佳
【内容】
現在最も活躍しているクリエイター3名を招き対談を通し、有名クリエイターのカレンダーはどうなっているのか?
時間の使い方やアイデアの生み出し方など、ビジネスや人生のヒントが得られる番組です。スタジオゲストは、キングコングの西野亮廣氏・堀江貴文氏・女子高生起業家の椎木里佳氏をお招きし、対談を展開します。今回の記事の模様はVTRで放送予定です。

転載元:KAI-YOU

Interview/Text: 園田菜々
Photo: 森弘克彦

イシイジロウ

いしい・じろう/
ゲームクリエイター/原作・脚本家
1967年生まれ。日経映像(1994年入社)、チュンソフト(2000年入社)、レベルファイブ(2010年入社)において、おもにアドベンチャーゲームのシナリオ・監督・プロデュース、ディレクションを務めたのち、2014年に独立。2015年株式会社ストーリーテリング設立。

2015年10月YOUTUBEで配信開始されたアニメシリーズ『モンスターストライク』 のストーリー・プロジェクト構成を担当。同じく2015年12月に発売される3DS版『モンスターストライク』のストーリー・プロジェクト構成も担当している。2016年1月より放映されるTVアニメ『ブブキ・ブランキ』にシリーズ構成・脚本(北島行徳氏と共同)として参加する事が発表された。

http://qreators.jp/qreator/ishiijiro

沼田晶弘

ぬまた・あきひろ/
MC型今教師・小学校教諭
1975年、東京生まれ。国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、学校図書生活科教科書著者、ハハトコのグリーンパワー教室講師。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリカ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。

スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。

http://qreators.jp/qreator/numataakihiro

小幡和輝

おばた・かずき/
和ーなごみ・Social Study代表
1994年生まれ。10年近く不登校を経験。2013年2月にイベント制作会社和ーなごみを起業し高校生社長となり3月には日本初となる高校生だけで経営するカフェ「ESPOIR」を設立。4月より和歌山大学観光学部に進学。

同年11月には40校以上から500名以上の学生を集めた学生合同文化祭を主催し、5000人以上を集客した。学生と社長のマッチングメディア「社長訪問」を立ち上げるなど、自身の経験を話すことで「一歩踏み出す勇気。」を伝えるため、全国各地の学校やイベントでの講演活動やメディア出演も精力的に行っている。

http://qreators.jp/qreator/obatakazuki

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