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エンタメ業界の風雲児「SHOWROOM」前田裕二が考える動画コンテンツの未来

2015.12.28

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若干28歳にしてDeNA子会社の社長を務める男がいる。ライブ動画ストリーミングプラットフォームを運営する、SHOWROOM株式会社の代表取締役社長・前田裕二さんだ。

新卒でDeNAの内定を得ておきながら、外資系の投資会社に入社。2年目にはアメリカ赴任、着実に成果を上げて昇進、ゴールドマンサックスから最優秀セールス賞を獲得するなど、猛スピードでビジネスマンとしてのステージを駆け上がっていった。
「とにかくお金を稼ぎたかった」「結果を出すことにコミットしたかった」という自身の主義を貫く場としては理想的な環境であったはずなのに、その後DeNA取締役会長の南場智子氏に引き抜かれ、一度は蹴った会社に入社することになる。

金融界からエンタメ業界へ、大幅に舵を切ったのはなぜなのか。そして彼の手掛ける「SHOWROOM」とは一体どんなものなのか。
動画コンテンツの未来展望も含めて語ってもらった。

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4年間一度も「DeNAに来い」とハッキリと言われた事はないんです。

————まずは南場さんとの出会いと、DeNAに入社することになった経緯を教えて下さい。

前田 最初の出会いは普通の学生と同じ、就職活動時です。最終面接官が南場智子で、そこで意気投合してからというもの、付かず離れずの関係性が4年強くらい続いていました。
アメリカにいる時に、起業しようと思い立ち、その資金調達と事業アドバイスをもらおうと南場に話を聞いたところ「一旦うちで事業を勉強してからでも遅くない」と言われて、入社を決めました。
その時点では、DeNAを大きくしたい、という気持ちよりも、あくまでも自分が独立するために、DeNAを修業の場として捉えていたという感じです。

————南場さんと4年間も連絡をとりあっていたのですね。

前田 はい。ただ、4年間一度も「DeNAに来い」とハッキリと言われたことはないんです。僕も、言われないように意識していた部分もあったのかもしれません。「アメリカでものすごい成績上げて、キラキラで楽しいです。数十億円のディールをいくつもこなして、世の中に大きなインパクトを与えています」と、とにかくその当時向かっていることにワクワクしていたので、それを伝えていました。

「うちに来てよ」って言われたのは、今回入社した2年前が初めてのことです。
僕は目的を達成するためなら手段を問わずに全力で突っ走るタイプなのですが、彼女こそまさにそういう感じ。
「起業しようと思っているんですが、僕のアイディアを見てもらえませんか」と南場に連絡したら、「年末だからご飯でも食べに行かないって、ちょうど連絡しようと思ってたんだよね」って言われたんですよ。ホントに!? って思ったけど、素直に嬉しくて(笑)。そのあと、会わせたい人がいるからと、代表取締役社長兼CEOの守安を紹介され、ご飯を食べました。

僕の起業計画に対しては、「うまくいくかもしれない。でも、投資銀行やコンサル業界の人が、いくらそこで成功していても、事業を立ち上げて上手くいくとは限らない」って、痛いところつかれて。
確かに僕は金融マンとしての自信はあったのですが、いわゆる「事業」を立ち上げた経験は無かったので、そこで心が揺らいたのかもしれません。だから一回DeNAで修行してから、自分で事業を立ち上げようと思ったんです。

————起業しようと考えていた内容が、今SHOWROOMとしてやっていることなんですか?

前田 いえ、違います。南場に相談したのは全然別のことでした。厳密に言うと、50個くらいあったアイディアのうちの1つです。
DeNAに入ってから、どの事業を実現するか、正直悩みました。というのも、自分の中でとっておきのアイディアは、DeNAでの修行を終えた後に、独立して事業化したいと思っていたからです。ただ、守安・南場はそこまで甘く無かった(笑)。
スケーラビリティの低い事業、僕の心からのパッションや思いがそこにない事業、そういうものは完全に見抜かれました。そうして、会社に対して「ここは修行の場だから」とある種一線を引く気持ちがあったのが、徐々に消えていき、「本気でやったろうじゃん、見てろよ」と、立ち上げたのが、SHOWROOMです。

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一生懸命頑張ってる人が最終的に報われて、勝つ世界にしたい。

————金融からエンタメという全く違う業界への舵の切り方はとても大胆ですが、もともとエンタメ業界に興味があったのですか?

前田 これには理由が2つあるんです。1つは「新しい付加価値を生み出せる業界」という軸。別に業界がどこというよりも、0から1の付加価値を新しく世の中にもたらすことをやりたかった。
投資銀行は、あくまでも価値の移動、つまり、すでに世の中に存在する既存価値を顧客に移動させる事で評価を受ける世界でした。世の中の人の幸せの総量はあまり変わっていない感覚です。
例えば、こっちの人が50儲かったらもう片方は50損しますよね。マーケットは、ゼロサムなんです。僕らのビジネスは、儲かった人から評価されて、お礼として、ちょっとだけ手数料をもらう仕組み。これって、テーブルの上に乗っている効用の質量自体は変わらないんです。

でも、アメリカにいる時にとあるきっかけがあってから、むしろ何もないところに新しいものを生み出す仕事がしたいと強く思い始めました。
だから、特に業界にこだわっていたわけではく、ただ世の中に自分が生きた爪痕を刻みたかった。
わかりやすいところだと、Steve Jobsが生み出したiPhoneのように、自分がいなくなった世界でもずっと誰かが使い続けるものを生み出して、死後も幸せを提供し続けたい。自分が消えても、自分が残した何かが人を幸せにし続けるって、シンプルに素敵じゃないですか。

もう1つは、「音楽が好きで、業界を変えたい」という軸。エンタメに寄ったのはこちらの理由が大きいです。
幼少期、貧乏でつらかった時があったのですが、弾き語りをしてお金をもらったり、褒められた経験があったから。だから、音楽に対して深い思い入れがあるんです。
大学生の時に趣味でバンドやっていたのですが、一生懸命頑張っても全然売れない人たちを周りにたくさん見てきました。こんなに努力の絶対量と成果が比例していない業界って、あんまりないなって思ったんです。
ビジネスや勉強って、やればやるだけ成果が出ますよね。だから、それと同じように熱量の大きさが成果にひもづく仕組みをエンタメにつくれたらいいなって。
例えば仮に容姿が飛び抜けていなくても、パフォーマンスが下手でも、頑張れば必ずそれが報われて上に登っていけるような。

————今まで日の目を見なかった人が、多数救われそうですね。

前田 はい。僕は努力こそが一番大事だと思っているんです。ただ単に環境に恵まれた人が勝つのではなくて、一生懸命頑張ってる人が最終的に報われて、勝つ世界にしたい。
今のエンタメ業界って、多くの場合その人を取り巻く環境が整っているかどうかが勝負の分かれ道なんですよね。
そうではなく、生まれ持った容姿なども含め、自分でコントロールできない外部要因を乗り越えて、その人の熱量や努力次第でどこまででも行ける世界をエンタメにも作りたいという思いこそが、僕のモチベーションです。

以前は自分のことをすごく不幸だと思っていた時期もあったんですけど、もっと越えられない高い壁や外部要因を持っている人は世界中にたくさんいるんですよね。大学の時、海外をバックパックで旅行して、その事を強く実感しました。
自分の場合、ハードルは高かったけど、頑張ればそれを超えられる環境だった。そのことを本当に幸せだと思っています。だから、多くの人に選択肢を提供し、環境を整えることが使命だと考えています。

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完成品を見たいわけじゃなくて、完成品が出来上がるまでのプロセスが見たい。

————SHOWROOMの考え方の根底はそこなんでしょうか?

前田 はい。具体的には“直接的支援モデル”というのが、SHOWROOMの形です。
アーティストが動画配信の更新頻度、すなわち投入努力量を上げていくと、きちんとファンが増え、支援の総量が増していく仕組みです。
今、世の中が求めているものは偶像ではなく、リアリティなんです。例えば、誰でも知っているような有名な人はもはや偶像化しているから、別に自分がどうにかしなくても自然と売れるようになっている。

一方で、まだ自分の足で立つ事ができないアイドルに対しては、自分らの力なしでは立ち上がれないまま消えてしまいかねないから、時間を使って支援やアドバイスをするんです。それを励みに、アイドルも頑張る。支援と努力の温かい連鎖が起きるんです。
こういった、プロセスこそに価値があります。僕らは完成品を見たいわけじゃなくて、完成品が出来上がるまでのプロセスが見たいんです。そこに情熱を注ぎたい。これがSHOWROOMでやっていることです。

今、エンタメで儲けるためには大きく分けて2つしかないと思っています。
1つ目はCDやDVD、サブスクリプションなどのパッケージビジネス。2つ目はイベントなどの興業絡みです。
1つ目については、ネットによってコンテンツが複製可能になってしまった以上、残念ながら価値は希薄化しています。2つ目については、世の中がまさに求めているリアルの体験価値に紐付いているので、盛り上がってきてはいるのですが、一方でキャパ×単価で市場規模の天井が見えてしまうという限界もあります。

3つ目の新しい基軸として、直接的支援モデルを成立させたい。新しいマネタイズの柱を作り出すことで、アーティストという職業が持つ夢や輝きを、復興させていきたいのです。

————SHOWROOMが目指すものはなんでしょうか?そして「動画」コンテンツはこれからどうなっていくと思いますか?

前田 今のスターは偶像化されることが正義ですが、ゆくゆくは直接的支援モデルで稼ぐことがクールなことである、という状態にしていきたいと思っています。
すると何が起きるかというと、エンタメ業界の新しい稼ぎ方が確立して、アーティストを目指す人が増えることにつながるんです。それをアイドルだけじゃなくてあらゆるジャンルでやりたいと思っています。作曲家でもいいし、カメラマン、俳優、料理家などなど、夢や目標があれば叶えられる場を広げていきたいなと。人の数だけ可能性があるから。

個人的に、ライブストリーミングがもたらすユーザー体験は、いまだかつてネットサービスが表現できなかったほどにリッチだと思っています。実際にそこに時間を割く人がだんだん増えています。
僕は、SNSの次は何か、と聞かれたら、ライブストリーミングだと即答するのですが、現状ボトルネックとして日本のデータ通信システムがアンリミテッドでないことが挙げられます。
特に若い子は、毎月のデータ容量を気にしながらスマホを使っています。物事が爆発的に流行る裏側にはハードの変化がある時が多いのですが、その変化の潮目をとらえたサービスが流行を生み、覇者になると考えています。
SHOWROOMも、そこを必ずとらえて、日本、及び世界で、必ずNo.1になりますので、楽しみにしていてください。

Interview/Text: 河辺 さや香
Photo: 保田 敬介

前田裕二

まえだ・ゆうじ/SHOWROOM株式会社代表取締役
1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。2011年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があったDeNAのファウンダー南場に相談したことをきっかけに、2013年5月にDeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株式会社・代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。

http://qreators.jp/qreator/maedayuji

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