60歳差の政治ジャーナリストと政治活動家。2人は、安保法案に対して何を思うのか?

2015.12/3

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長年、ジャーナリストとして政治の現場を見つめてきた田原総一朗さんと、若き政治活動家・青木大和さんの対談が実現しました。

次々と繰り出される田原さんの質問に、臆することなく懸命に答える青木さん。
話題はやはり今年最も注目された政治イシュー、安全保障関連法案のほうへ向かいました。

なぜこの法案は問題があるのか? 野党はどうするべきなのか。
二人の対話が浮き彫りにしていきます。

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2015年は日本の大きな転換点だ

青木 田原さん、はじめまして。僕は青木大和と申します。

田原 はい、こんにちは。君は、何をしてる人なの?

青木 僕は、若い人の政治への関心を高めるための活動をしています。
きっかけは、15歳のときに1年間アメリカに留学をしたことでした。2009年のオバマの大統領選後のアメリカに居合わせ、アメリカの若い人の政治への関心の高さに圧倒されたんです。
そこで、日本の若者にも政治に関心を持ってもらいたいと思い、帰国後、「僕らの一歩が日本を変える。」というNPO法人を立ち上げました。

田原 へえ。

青木 そして高校生100人と国会議員の方との討論や未成年模擬投票といった企画を考え、実現してきました。
しかし、昨年末の衆議院選挙に合わせて立ち上げた「どうして解散するんですか?」というサイトが炎上してしまって、責任をとるためにNPO法人の代表を辞任したのですが……。

田原 ん? なんで炎上したの?

青木 僕の名前ではなく、小学4年生の子が立ち上げたという体裁でサイトをつくったので……。

田原 なんで小学生だって言ったの?

青木 インターネットの特性を活かして議論を巻き起こすためには、僕が実名でやるよりも小学4年生というキャラクターを立てたほうがより効果的だと考えたんです。
でも、結果的に安倍総理などにも名指しで怒られてしまいまして……。

田原 そんなに大騒ぎになったの? おもしろいね。大騒ぎになったらそれを利用したほうがよかったんじゃないかな。

青木 いや、あの、当時は実家にまで取材の人が来たり、父親の会社に中傷の電話がかかってきたりして、本当に参ってしまったんです。

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田原 そうなんだ。まあ、大変だったね。それで?

青木 それからあまり表には出ていなかったんですけど、逃げていてもなにも始まらないので、もう一度自分の声で発信していこうと決意しました。
それで、今は政治に関する記事を書いたり、こういうインタビューの場に出させていただいたりしています。

田原 なるほど。

青木 田原さんのことは以前からテレビで拝見し、ご著書も読ませていただいて、ずっとお会いしたいと思っていました。
日本の第一線で政治の世界を見てこられた田原さんに、今日は聞きたいことがたくさんあります。
ひとつはどうして日本の若者は政治に関心がなくなってしまったのか、ということです。

田原 どうしてというか、それはアメリカと比べてでしょう? 青木さんが見た2009年のアメリカ大統領選後のアメリカは特別だよ。だって、黒人が大統領になったんだから。アメリカには黒人差別はないといいながら、それまでは黒人の大統領はいなかったわけだ。
でも、2003年から始まったイラク戦争が大失敗して、それを決断したのは共和党のブッシュだった。それではいけない、ということでイラク戦争に反対したオバマを選んだわけ。
アメリカの大転換期だったんだよ。そういう転換って、今の日本にはなかなかないよね。

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青木 それは、今後もないのでしょうか?

田原 転換期は「今」でしょう。僕は、2015年はこれから10年後、20年後に、日本はあの年に変わったんだって言われるようになると思っているよ。

青木 それは9月19日に安全保障関連法案が成立したからですよね? それに反対する学生団体SEALDsの活動も、かなり話題になりました。
僕はSEALDsのメンバーである奥田愛基くんと面識があるのですが、ここまで学生の政治活動がメディアに注目されたことは、近年なかったと感じています。
でも遡ってみると、1950〜1970年代には学生運動が盛んでしたよね。かつての学生運動と、現在の学生によるデモは何が違うのでしょうか。

田原 違いは3つあるよ。1つ目は、かつての学生運動、全共闘運動というのは、すべてバックがついていたこと。共産党や社会党などの政党や団体が後ろ盾がとなっていたんだよね。
2つ目は、資本主義に反対し、社会主義体制を目指した運動だったということ。
3つ目は、共産党を除く運動家たちは基本的に暴力革命を支持していたということ。これらは、今のSEALDsの活動とは違うよね。

青木 たしかにそうですね。でも、1960年の日米安全保障条約をめぐる安保闘争も大きな流れとなったわけで、今との類似性も見られますね。

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安全保障関連法案は、なにがダメなのか

田原 君は、この転換点がどれだけ大きなものかわかる?
戦後70年、日本は戦わない国、戦えない国だった。それが、戦う国、戦える国になったんだよ。

青木 そういう情勢のなかで、政治は社会をどう変えていくのかということを僕は考えているのですが……。

田原 政治が社会を変えるに決まってるでしょ。税だって法律だって、全部政治が決めていくんだから。

青木 そうなんですけど、僕の同世代の若者は、政治に対して冷ややかな目を持っているというか、自分とは関係ないと思っている人が多いように見えるんです。
大きく世界情勢が変わっているとはいえ、衣食住は足りていますし、自分たちが政治的な発言をあえてすることはないよね、と。

田原 そういう若者は、これから少なくなっていくんじゃないかな。だって近い将来、自衛隊が戦争の後方支援に出るようになったら、死者も出てくるよね。それに対して、声を上げざるを得なくなってくるでしょう。
そもそも、君は安倍政権の安保関連法案がなぜダメなのかわかる?

青木 国民への説明不足の中で強引に押し進めたことが、問題だと考えています。

田原 いやいや、無理やりではないよ。国会というのは、ああいうかたちで進めるのが当たり前でしょう。
安保法案はとにかく、戦争に近づく法案だからダメなんだよ。

青木 でも国民の理解が得られていない部分も多く……。

田原 日本は間接民主主義を採用していて、国民が選んだ代表が国会議員でしょう。彼らが国会で議論を進めるのは当たり前で、無理に押し進めたなんて言い方は、おかしくない?

青木 僕は、その議会制民主主義に対してジレンマを感じているんです。

田原 議会制民主主義に反対なの?

青木 いえ賛成なのですが、現在のように投票率が低いと民意が反映されないというか……。

田原 投票率が低いのは、国民が政治に関心がないからでしょう。

青木 そうなると、組合など組織基盤を持っている団体が選挙で勝ちやすくなりますよね。

田原 組織基盤を持っているところは、野党にもあるんだから、与党だけが勝ちやすくなるということはないよ。

青木 今回の安保法案の件で痛切に感じたのは、SEALDsのようにデモで人を集めて声を上げていくのは非常に大切なことなんですけれど、けっきょく議席数が多い政党の主張が通るんだなと。
自分たちはぜんぜんプレイヤーになれていないと思ったんです。

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田原 いや、間接民主主義なんだから、議席数が多い政党に力があるのは当たり前でしょう。

青木 だから僕は、直接政治に関与できる議員を目指しているんですが、今は25歳からしか出馬できない。もっと若者が政治の世界に入っていくためには、被選挙権年齢を下げる必要があると思っているんです。

田原 君はいま、いくつなの?

青木 21歳です。

田原 あと4年だね。それまで待てないなら、被選挙権年齢引き下げの運動を起こせばいいじゃない。選挙権も18歳に引き下げになったわけだし。

青木 はい。僕はその選挙権年齢引き下げについての活動をしていました。
だから、そうですね、僕自身が声を上げていく必要があるとは思っているのですが……。

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「反対」するだけで、「対案」がないのが一番の問題

田原 それより僕が問題だと思っているのは、国民としてはけっきょく自民党を支持するしかないという状況にあること。
安保法案に対する世論調査を各社が行ったとき、だいたい賛成が25〜35%で、反対のほうが多かった。でも、11月に行った安倍内閣を支持するかどうかの世論調査では、支持が不支持を上回ってるんだよね。
つまり、安保法案には反対だけど、選挙で入れるなら自民党という人が多いんだ。自民党以外の党は今ひとつ信用できないって、国民が思っちゃってるんだよね。

青木 そうですよね! 僕も同じ問題意識を抱えています。安保法案と経済政策について考えた時、実生活に関わっているのは経済政策です。すると、やはり経済政策を進めて、それなりに成果を出している安倍政権を支持する方向に傾く。

田原 前々回の選挙のときも、前回のときも、僕は全党の党首にテレビでインタビューをしたんだ。そうすると、野党の党首はみんなアベノミクス反対と言う。でも、じゃあ何をするのかというと、対案をどこも打ち出せないんだよね。
けっきょく批判してるだけなんだよ。そうすると、国民も選びようがない。

青木 僕が前回の参議院選挙と統一地方選挙で疑問に思ったのも、まさにそのポイントでした。何を争点に考えて投票すればいいのか、まったくわからなかったんです。
安保法案についても、反対の声を上げるだけで具体的な対案がないのが気になります。

田原 今年6月4日の国会の憲法審査会で、早稲田大学法学学術院教授の長谷部氏が、安保法案は憲法違反だと発言したでしょう。この時以来、野党はみんな「憲法違反だからやめろ」としか言わなくなった。これがよくなかったよね。
むしろこの法案に関しては、最終的に公明党ががんばったんだよ。

青木 がんばった、とは?

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田原 自衛隊が、日本以外の国が攻撃された時に、防衛出動だけでなく、武力行使もできる事態というのを、「日本と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求権が根底から覆される明白な危険がある事態」と設定したんだ。
これって、相当厳しい条件でしょ? 僕は、こういう事態はほぼ起こりえないと思っている。だから、日本が集団的自衛権を行使することはほぼないと予想している。その代わり、後方支援をする事態は大いにあると思ってるけど。

青木 それは、公明党の主張だったんですね。

田原 でもここからは綱引きだね。日本の存立を根底から覆す危険性があるかどうか、判断するのは総理大臣だから。
9.11のときにブッシュ大統領は「これはアメリカに対する戦争だ」と言って、アフガニスタン侵攻を行い、イラク戦争に踏み切ったわけだから。
この判断をどうするかが、これからの問題だね。

後編へ続く)

Interview/Text: 崎谷実穂
Photo: 神藤 剛

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田原総一朗

たはら・そういちろう/ジャーナリスト、評論家。1934年、滋賀県生まれ。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)をはじめ、多くのテレビ・ラジオに出演中。長谷川慶太郎氏との共著『2020年世界はこうなる』(SBクリエイティブ)が12月23日に発売予定。

http://www.taharasoichiro.com/cms/

青木大和

あおき・やまと/1994年03月09日生まれ。政治活動家/慶應義塾大学法学部政治学科在学中。15歳にて単身渡米。米国の社会活動へ参加する中でオバマ大統領誕生を目の当たりにする。日本と米国の若者の社会参加、政治参加の差を実感し、帰国後2012年「僕らの一歩が日本を変える。」を創設。「高校生100人×国会議員」、「未成年模擬選挙」「全国行脚」などの数多くの仕掛けを行った。2014年に同団体を法人化し、2014年秋に代表辞任。以後世界各地を渡りながら現地の社会運動、若者の動向などをレポートしている。また、aokiyamato.comを運営し、執筆など個人による若者、政治、社会などのテーマを中心に活動を行っている。

http://qreators.jp/qreator/aokiyamato

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