クリエイターの”熱量”を感じる”映像”はどうしたら生まれるのか?

2015.12.02

Hidali screen

振付家ユニットHIDALIのコリオグラファー(振付師)・野口量さんと、クリエイティブチームIKIOIに所属する映像作家・二宮“NINO”大輔さんが、IKIOI×HIDALIとしての新作「ラスト禅(LAST ZEN)」をリリースしました。
業界のトップクリエイターとして様々なアーティスト達の「振り付け」や「PV演出」などを手がけてきた彼らが“新たな”映像制作の手法に挑戦した今作品。
なぜ今回、このムービーを制作したのか。背景や意図を、制作者のおふたりにうかがいました。

Imgp5374 %281%29
まとまり過ぎたコピーに感じた違和感

—『ラスト禅』の公開後、周囲の反応にはどういったものがありますか?

野口 近しい友人にしか聞いていませんが、一番多いのは「映画みたい」という感想ですね。
あとは最後に出てくる「“坊さんおっさんアミノ酸”ってどういう意味?」と。前衛的なものや尖ったものが好きな人には、ツボに入ったみたいです。OBAのダンスや、コスマスさんのパーカッションに対する賞賛も聞きます。
「本物感がスゴイよかった」という。まあ感想は二極化していますよね。意味が分からないという人、コアな部分で好きという人。でも、今回はそれでいいのかなと。

—観た人の感想が二極化することは、制作時から考えていましたか? それとも、そうなるように狙っていた?

二宮 いや、僕の中ではそれはなかったですね。
キャッチコピーについては、あの「坊さんおっさんアミノ酸」に決まった瞬間に、二極化するなと。正直、意味がわからないから(笑)。ただ、RYOさんが言ったように、そうなるのはわかっていたけど、それはそれでいいんじゃないかなとは思っていました。

—「坊さんおっさんアミノ酸」というキャッチコピーが決まった経緯は?

野口 最終的に、「煩悩は才能」と「坊さんおっさんアミノ酸」の2つが候補に残っていました。
どちらのコピーも入れた映像も試したんですが、「煩悩は才能」はキレイにまとまり過ぎた印象を抱いたんです。
それでも悪くないなと思ったんですけど、コピーライターの小藥さんから「いや、やっぱりこれいいな、坊さんおっさんアミノ酸」というメールが来たんですよ。それで、僕はこれにしよう、と。

二宮 いろいろな候補があったんです。
でも、RYOさんが言ったように、映像に落とし込んでみると、キレイすぎた。映像とシンクロしすぎたというか……。
いい意味でも悪い意味でも広告のようになって、「これじゃないなぁ」と悩んでいた時に、「坊さんおっさんアミノ酸」を見ました。最初に見た時は正直、意味がわからなかったんですけど、ジワジワきて、「意味わかんないけど面白いな、これ」と。
アミノ酸って、エネルギーの源のひとつじゃないですか、なので、いろいろな人のエネルギー源になるという意味で、おもしろいコピーだなと感じたんです。

Hidali 3
意外性を引き出したかった

—どのようなモチベーションで制作に取り掛かったのでしょうか?

野口 最初は僕がダンサーのOBAとコスマスさんの2人で『グラップラー刃牙』が戦いそうなトンネルの中で、セッションをするというイメージを持っていました。
いきなり時速200キロからレースがスタートする、みたいな。スピード感があるドラムとダンス。2人のスピー、パワー、キレを見せる圧倒的な映像を作ろうと、NINOさんに持ちかけたんです。

—NINOさんの反応は?

野口 大反対ではなかったんですけど、やっぱり「もうちょっと何か色々変えてみないか?」ということで、2人で話し合っていきました。
その後、たまたま知り合いの妙善寺さんの本堂をお借りできることになった。ロケーションは色々悩みましたが、妙善寺さんで撮ろうと。そこからNINOさんが、コスマスさんにお坊さんの格好をしてもらって、本堂に入って来て太鼓を叩き出してものすごいパーカッションをするという“意外性”を提案してきたんです。
それに対して僕は、OBAにただ踊ってもらうのは面白くないんじゃないかなと考えていました。せっかくお寺が舞台なんだから、禅を組んで、その中でポップ(※筋肉を弾くようにして、主に体の各部位が別々の動きを取る様な踊り方)という微細な動きをするダンスはどうかな、とか。瞑想する時の半眼もおもしろいな、とか。そういった部分をいろいろ話し合って作っていった感じですね。

—製作するうえで、最初に設定したテーマは?

二宮 テーマというテーマは、ほとんどなかったですね。
本当に「あの2人の素材をどうセッションしようかね〜?」というくらい。抽象的な空間でやれば絶対カッコよくなるのは見えていました。仮に、舞台がビーチだったとしても、波の音がある中でジャンベの音を鳴らしつつOBAが素足で踊っていても画になる。
もうどこでもハマるという確信はありましたが、その中であの2人を意外性で持っていく為にはどうしようか、と。そこで色々話した上で、お寺が出てきて、坊主頭のコスマスのビジュアルに、お坊さんという設定をつければどうなのか、とか。どう意外性を出そうかと考えていきました。
ただ、これらは作っていく上で決まっていったこと。スタートラインはあの2人の素材を組み合わせる、という事しか考えていなかったです。

Hidali4
企画のない企画

—撮影でここが一番壁だった、苦労した点はどういった所でしょうか?

二宮 壁は正直なかったですよ。
なぜなら、ルールがなかったから。制限がないので、思いつくままに。強いていうなら、準備から連絡、何から何まで、すべてを自分たちでやらないといけないところは、壁だったかもしれないですね。RYOさんにとっては、コスマスさんとOBAへの連絡が大変だったんじゃないですか?

野口 そうですね(笑)。
2人に連絡を取るのが大変なんですよ。今の人って大体、携帯電話を持っているじゃないですか。でも、2人は携帯電話を持たずに出掛けるし、パソコンなんかほとんど見ない。だから連絡が全然つかない。特にコスマスさんはLINEもFacebookもやってないんですよ。
一切SNSをやっていなくて、ホームページも閉じちゃって……。衣装についても、確認するのに、画像を添付して携帯やパソコンに送る事も出来ない。送ってもいつ確認されるかわからないから、会いにいくしかないんです(笑)。

—このデジタル全盛の時代に、なかなかない事が連続して起こったんですね。

野口 あの2人だからこそ、その生活がある。映像からにじみ出ていますよね、やっぱり。普通じゃないというか。キャストについては、僕らはあの2人しか考えられなかった。
例えば、今回のOBAの役を彼以外の役者さんに演技してもらっても、絶対にこういう風にはならなかったと思うんです。そうそう、NINOさんが苦労したと言えば、あの……。

二宮 僕は準備より撮影の時か。カメラにしても、いつもならチーフがいてセカンドがいてフォーカスを送る人がいる。それで自分は演出に専念できるんですけど、今回はもちろん誰もいないので、全部ひとりでやらないといけない。
まあ、事前準備は制作の中尾さんがついてくれて、やってくれたので助かりましたけど、撮影中は基本的にひとり。でも、撮りたいように撮っていけばよかったので、壁というほどではなかったですね。ただ、おかげで腰が痛くなりました(笑)。

—今後、いつもと違う手法で撮影した経験をどのように活かしていきたいですか?

野口 今回のような経験、これからするのかなぁ……。
僕は1回もリハーサルをしていないんですよ。絵コンテもないし、演奏の内容も決まってない。本当にその場で様々なことが決まっていく。もちろん、形になるっていう自信はありましたけどね。今回の経験を活かすとしたら、もう1回即興でやってみよう、とまた思いついた時ですかね。

二宮 考えに考えて、考え込んで制作するということではないですからね。次回といっても、またふと思いついた時、そして最もタイミングが合った時に動き出すんじゃないかな。「突然思いついたシリーズ」みたいな(笑)。
いや「いい人材が見つかった時にやろうシリーズ」かな。普段の仕事をしていて、誰かと知り合って「この人面白い!」って思った時に、前々から知り合いの「あの人とコラボしたら面白い!」とつながったて「すぐやろうよ!」というふうに。

野口 コスマスさんとOBAは、過去にダンスとパーカッションでセッションした面識はあったので、お互いに惹かれ合っていた部分もあったと思います。
そういう風にいろいろなタイミングが合って、「動画作ってみよう」とみんなで楽しくなった時にまたこういう“企画のない企画”はやるかもしれないですね。やらないかもしれないけど(笑)。失敗したら大変ですからね。

二宮 いや、たぶんやるでしょうね。突然「あれやろうよ、明日。」とか(笑)。

Hidali 5
思いついたらまず動く

—『ラスト禅』に込めたメッセージは?

二宮 「思いついたらやろう」がメッセージですかね。
「どうしようか?」「やるかやらないか?」と言っている暇があったら、とりあえず動いてやってみようって。それがある意味、“アミノ酸”につながるのかもしれないですけどね。後悔するぐらいなら、やっちゃった方がいいと思うんです。
たとえそれが失敗と思われようが、やらなかった時の方が後悔する。どの職種の方にも、同じような経験はあるのではないでしょうか。「これをやろう!」と考えていたら、先に誰かにやられてしまったという。

僕はそういうのがしょっちゅうあるんですよ。「うわ、やられた〜」と思う時が月に1回くらいあって、その度に後悔するんです。
もちろん、自分が面白いと思う企画をストックしておいて、出すタイミングを見計らうのは大切な事だけど、あまりにもため過ぎると2番手、3番手になることもある。それなら、思いついた時に行動した方がいい。これが今回の狙いであり、メッセージです。

—改めて、お二人のモットーはどういったものになるのでしょうか。

二宮 我々が思っているのは、「思いついたらまず動こう」ということ。
物作り、クリエーターという職業を選んだ以上は、いろいろな事をやっていきたい。「ブレてる」と言われればそれまでなんですけどね。咄嗟に面白いと考えついたり、いろいろな人と出会って「この人を撮りたい」と思った時に、すぐその“素材”に対して最高にベストで面白い企画を考えて、それをどんどん形にして世に出していく。その時その時でメッセージも変わってきます。
だから、「君たちの色は何?」と聞かれたならば、「物を作ること」が答えになるのかもしれません。僕らのコンセプトは物を作るということですね。

野口 ヤバいものを作るというのは確かですよね。カッコいいでも、面白いでも何でもいい。観た人に「ヤベぇ!」って思ってもらうものを作る。
あと、たとえば今回出演してもらったOBAやコスマスさんにしても、持っている才能がすごいんですよ。彼らのような世に知られていないカッコいい人達っていっぱいいると思うんです。そういう人達に、一緒に作りたいと思ってもらえたり、そして彼らが僕たちの作った作品で世の中にフックアップされたりしたら、僕はすごい嬉しいですね。

—なるほど。では、最後に今後の活動ビジョンを教えてください。

野口 CGだけの作品があってもいいと思うし、ダンスの超カッコいいストレートな映像をボーンと出してもいい。それこそ、ファッションショーをいかにカッコ良く見せるか、というような映像とか。やりたいことを、何でもやればいいんじゃないかな、と思っています。

二宮 これからも作り続けます、ということですかね。まだ実際に完成した作品は2作ですけど、撮影自体が終了しているのが撮もう1作あります。企画も3つくらいありますので、どんどん動いていく予定になっています。

「ラスト禅 "LAST ZEN"」

企画:Ryo Noguchi, 二宮“NINO”大輔
監督:二宮“NINO”大輔
振付:Ryo Noguchi
制作協力:中尾亮太(ナガイホシ)

音楽: コスマス・カピッツァ
ダンサー:OBA
コピーライター: 小藥 元

特別協力: 妙善寺(東京都港区西麻布3-2-13)

スポンサー:HI-HAT

このページが気に入ったら「いいね!」

Qreatorsの最新情報をお届けします

二宮“NINO”大輔

にのみや“ニノ”だいすけ
映像ディレクター。1982年生まれ。2010年にクリエイティブチームIKIOIを結成。SMAPや安室奈美恵、三代目 J Soul Brothers from EXILEなど、有名アーティストのMVなどを多数手がける。

http://www.ikioijapan.com

野口量

のぐち・りょう
コレオグラファー(振付師)。1980年生まれ。2013年に振付師ユニット「HIDALI」を発足し、代表を務める。ヒト、モノ、オト、コトなどを「動かす(振り付ける)」ことによって引き起こされるリアクションをつくる、動きのプロフェッショナル。

http://qreators.jp/qreator/hidali

SERIES

Ai img 7763 thumb 1000xauto 14902 01

衝撃的事実!「口の中は肛門よりも汚い?」

SERIES

Dohamarimono kubo

LINEと手紙、どっちがお好み?

SPECIAL

0809 00356b 01

ナノアーキテクトニクスが開く未来の扉を見にいこう! —ニコニコ学会βサマーキャンプレポート