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魔法使いが語る未来とは?
落合陽一『魔法の世紀』レビュー

2015.11.29

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——現代の魔法使いと言われ、World Technology Awardをはじめ国内外でさまざまな賞を受賞している落合陽一。
そんな彼が2015年11月27日に自身初の単著の単行本を出版。
タイトルは『魔法の世紀』。
この本の出版を記念して落合陽一氏本人に『魔法の世紀』レビューを含めインタビューをお願いした。

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——いきなりで恐縮ですが、まずはタイトルでもある『魔法の世紀』とは一体なんですか?

落合 現在、IoTの時代と言われていますが、世の中のありとあらゆるものにコンピュータが含まれてます。
一昔前までコンピュータは、専門家たちのツールを経てテレビのようなマルチメディアを実現するための道具でした。つまりどのようにして他人に映像を伝えるか、またはどうやって情報を収得するのかを使ってコミュニケーションしていくということがメインの役割だったんですね。
有名なドキュメンタリーの名前にあるように20世紀はよく『映像の世紀』だったと言われます。
テレビや映画などのマスコミュニケーションの手段やグローバルコンテンツがとても発展した20世紀をうまく表現している言葉だと思います。
では、それに対して21世紀は?
僕は、コンピュータより普及し発達することで20世紀のときとはまったく異なる「モノの考え方」「慣習」「力学」または「文化」が発展していく世紀になのではないかと考えています。
それらを総じて僕は21世紀を『魔法の世紀』と定義しました。

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——なるほど。では魔法というネーミングはどこから来たのでしょうか?

落合 これは1970年代のとある論調を引き継ぐオマージュなのですが、それについて語るのに科学技術についてちょっと復習しましょうか。
例えばナポレオンの時代は遠征用の食物が入った瓶詰めを長期保存の殺菌のために炎で炙ってから用いていました。しかしながら当時これってなぜ火で消毒できるのか誰も分かっていなかったんですね。まさに魔術、魔法です。
その後パスツールという学者がでてきて「熱が細菌を殺すからだ」ということが分かります。こういったケースのことをマックスヴェーバーは「科学技術は社会を脱魔術化した」と言いました。
しかしその後1970年代になるとモリス・バーマンという社会学者がこんなことを言いました「世界は再魔術化している」と。
たとえば、なんでクレジットカードが使えるかなんてほとんどの人が気にも留めていないし、マクドナルドがなんで安いのかもよくわからない。
でもほとんどの人がクレジットカードを使い、またビックマックを食べていたわけです。
そして2015年の現在。コンピュータがそれをさらに加速させるのです。
たとえば『ユビキタスコンンピューティング』という言葉があります。
ユビキタスコンンピューティングとは簡単に言うと「世界中、ありとあらゆる場所にコンピュータが存在し、人間はその存在を意識することなくいつでもどこでもアクセスすることができる環境」という意味を持った言葉です。
無意識化のためのコンピュータ環境=ユビキタスコンピューティングが進んだらどうなるか。
端的に言えば世界はものすごい速さでさらに魔術化していくと思います。
たとえばプログラミングしているときに、「スイッチを押したとき」にランプが「光るか」「消えるか」はプログラマーの自由です。ユーザ側からはなんでスイッチを押したらランプが光るのか・消えるのかは外見上は分からないという状況になっていくと思うんです。この関係性はほぼ魔術ですし、こういった流れから世界は逃れられないと思います。世界の再魔術化とユビキタスコンピューティングをつなげる。魔法の世紀ということばはそういった意味を持っています。

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——落合さんが考える魔術化した世界とは具体的にどんなことができる世界なんですか?

落合 例えば絵を描くということについても、今まではディスプレイがなければ絵を描けなかったけど、今後は空中の何もない空間に自在に絵を描くことができるようになるかもしれません。二次元から三次元に。板(2D)や表面(2.5D)との対話から空間(3D)との対話になっていくはずです。
そうした魔法の世紀においては、コンピューターが人々の共通部分をプラットフォーム化し補っていくので、逆に言うと人らしい個性、一人一人の行動や考え方、思想やアイディアはものすごく自由になっていきます。
この『魔法の世紀』という本にはそんな世の中になった時、デザインやアートはどうなっていくのか、テクノロジーはどんな風に進化していくのか、という僕の未来予測と歴史に関してまとめ上げ、新たな視座を吹き込む本を書かせていただきました。




タイトル :「魔法の世紀
発行所 :PLANETS
発行日 :2015年11月27日
定 価 :本体2300円(+税)
著 者 :落合陽一

Interview/Text: 横田亮介

落合陽一

おちあい・よういち/東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了者)。博士(学際情報学)。

コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ,物理世界をハックする作品や研究で知られる。
2015年より筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰。研究室では、デジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を超えた新たな自然「デジタルネイチャー」を科学し、哲学し、実装することで未来を目指している。
これまでに情報デザインを行うジセカイ株式会社や超音波やレーザーなどの波動を制御するテクノロジーを研究開発する米国法人Pixie Dust Technologies.incを創業。
父は国際政治ジャーナリストの落合信彦。叔父は空手家(和真流宗家)の落合秀彦。 従兄弟はLady Gagaの主治医を務めたことで著名なデレク・オチアイ。
研究論文や作品をACM SIGGRAPH(世界最大のコンピュータグラフィクスの祭典・学会)で発表するのが通年行事。
2014年にはCG Channel(有名CGサイト)が選ぶBest SIGGRAPH論文にも選ばれ,アート部門,研究部門のプレスカバー作品を一人で独占した。
BBCやディスカバリーなど世界各国のメディアに取り上げられ,国内外で受賞多数。
研究動画の総再生数は380万回を超え,近頃ではテレビやバラエティ、コメンテーターなど活動の幅を広げている。

http://qreators.jp/qreator/ochiaiyoichi

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