クリエイティブな人材が育つ環境とは?「学校教育とクリエイティブ」の関係をひも解く

2015.11/29

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独自の視点で新しい価値を創るクリエイティブな人材が育つ環境とはどのようなものか?
「学校教育とクリエイティブ」の関係について、東京学芸大学教授で「遊び学」を研究する松田恵示さんと、10年以上の引きこもり期間を経て起業した若手起業家の小幡和輝さんに語ってもらった。

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柔軟に物事を考えられるようになったのは、引きこもってゲームをしていたから

松田 小幡さんは、高校生の時から起業されていらっしゃるんですよね?

小幡 高校3年生のとき「和—なごみ」という名前の会社を作りました。
起業して3年目、地元にいる高校生や若者が和歌山を盛り上げるというコンセプトで事業をしていて、現在は和歌山大学観光学部の2年生として学業にも勤しんでいます。

松田 会社の事業として、具体的にはどんなことをしているのですか?

小幡 基本的にはイベントです。学生たちが和歌山を好きになってくれるような企画を考えています。
和歌山県は県外への進学率が高く、全国で1位なんです。
県外へ出て行くことが悪いとは思いませんが、「和歌山ってなにもない」というイメージで出て行かれると、それがネガティブキャンペーンのように広まってしまう。
地元を誇りに思う若者がたくさん増えれば、観光大使になってくれるんじゃないかって思って。それだったら、たとえ出て行ってしまってもプラスになる。

松田 ものの見方を変えるのが上手ですね。普通の人だとそうは思えないことも、ちょっとひねって、視点を変えて考えられる。そういうことがパッとできる人はなかなかいないですよ。

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————昔から、そうした考え方が身に付いていたんですか?

小幡 実は、僕は10年間引きこもりの時期があって。
幼稚園の年長あたりから行かなくなって、小学校3年生くらいから中学までは、ほとんど学校に行ってません。ずっとゲームをやっていたんです。その時期は、1日8時間以上で10年間、合計3万時間以上はゲームをやっていました。
なので、どう考えてもアイデアの源はゲームですね。特に、カードゲームが好きで、めちゃ強かったんです。ゲームの大会で10連続くらい優勝して、県大会で代表になったりもしましたね。

カードゲームはビジネスの感覚に近く、どうやって情報を早く仕入れるかがすごく大事。
例えばそんなに強くない既存のカードも、新しいカードを組み合わせることでものすごく強くなったりするんです。
そういう感覚も含め、僕のアイデンティティはゲームで構築されていると思います(笑)。

松田 そこからどうして起業に至ったんですか?

小幡 夜間の高校に通いだした頃に、一つ上の先輩と出会ったことがきっかけです。
その彼は、学校行って、部活やって、生徒会やって、アルバイトして、音楽好きでバンド組んでライブを主宰するなど、すごい活動量だったんです。
当時の自分とは大違いで、すごくかっこよくて輝いているように感じました。その憧れの先輩に誘われて、彼のつくったイベントを手伝うことになったのが、最初の大きな一歩でした。

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義務教育はよくできている?

————中学校までの義務教育をほとんど受けていないわけですが、そもそも義務教育の必要性についていかが思いますか?

松田 実質的には義務教育を学校で受ける、ということが小幡さんの場合なかったわけですが、不便に感じたことはありますか?

小幡 一般常識的なところでは、不便なことがありますね。絶対とは言えないですが、中学卒業までは、行けるのであれば行ったほうがいい。
勉強としては、中3くらいまでは行ってないと困ると思うんです。僕は、いまだに英語と漢字がまったく書けないんです(笑)。
読みはゲームと漫画で覚えたんですが、ぜんぜん字を書いていないので、字が汚くて恥ずかしいし。
あと、手紙を書いたことがなかったので、封筒の書き方が分からなかった。契約書を送るときに、めちゃくちゃな書き方をしていたみたいで、社会人の先輩に「これは、まずいよ」って言われたほどです。

松田 中学3年生までに、このくらい勉強しといたらいいっていう「学習指導要領」は、よく考えられているでしょ?(笑)

小幡 それは思いますね。特に、英語と国語はやっておいたほうがいいと思いました。
海外行ったとき、簡単な単語も全然わからなくって恐怖でしたし、単語くらいは覚えたほうがいいなと。中3くらいまで学んでいたら、なんとかコミュニケーションはとれるんだろうなと思いました。

松田 そういう意味で言うと、学校って4つのことができるところだと思っています。
ひとつは今言ったような、「生きていくのに必要な学力を身につける」こと。
もうひとつは、自分が自分であっていいっていう、「自分を充実させる経験」。
あと、社会の中で生きていくというところでいうと、「学歴」。例えば医者になりたいと思ったら、大学卒業しないとなれないとか、職業選択するうえで、学歴が必要になることもあります。
最後は、集団的な、という意味での「共通の体験」。中学校のときみんなで遊んだこととか、小学校のときクラスの仲がよかったこと、みたいなことを共有することですよね。

小幡 たしかに僕は同世代の人と共通の体験がないので、ちょっと寂しいところがありますね。みんなが学校で一般的に体験してることを僕は体験してないないので、同世代と話すと共通の話題が少ないというのはあります。
例えばこの前「バレンタインにチョコもらえるかドキドキしたよね」みたいな話題になったんですが、全く話について行けなかったです。

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————そもそも学校に行かなくなったのは、どうしてですか?

小幡 ゲーム好きだったっていうのもあるし、いろいろあります。これというのはないですが、勉強はやらされている感じが嫌いでした。

松田 必然性があったらなんでも自分で勉強するけど、必然性がないのにあれやれこれやれ、ってそういう状況に、少しでも疑問をもってしまったら、ほんとにしんどいですよね。
義務教育って料理のレシピのようなものだなと感じます。まったくフリーハンドだと、どうしたらいいか分からないけど、レシピがあったら、とりあえず料理って作れる。
でも別に、レシピ通りにやらなくても、もうちょっと辛いほうがよかったら辛くすればいいし、自分のオリジナルでやってもいい。みんながオールフリーになってもいいとは思わないけど、全員ぜったいやらないといけないと縛りを強くしても意味がない。

そもそも「共通」のことを学んだり教えたりするのが義務教育なんだけど、「共通」って、「同一」という言葉とは違って、「同じ」という部分はもちろんあるけど、一方で必ず幅があることをいう言葉ですもんね。
そのあたりの、「懐の深さ」ってほしいですよね。

小幡 すごくわかります。もともとそういう気質なのか、僕が手がける仕事も、たとえば実際にすごい面白いアイデアを思いついたとしても「本当に自分がやるべきか?」という部分に最終的には立ち返るんです。
面白いことを考える人なんて世の中にたくさんいる。だからこそ、自分の実体験をいかにそのアイデアに乗せるか、ということを考えるようにしています。

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学校は本来遊びにいくところだった

————今の学校教育は、何を重視していますか?

松田 これからの学校は、グッと変わってくると思いますよ。「泣くようぐいす 平安京」と語呂合わせで覚えて、794年って、テストで書けたら正解、っていう従来の感じではなくなっています。
みんなで話あって方向性を探りつつ、答えをお互いに練りあって見いだしていくといった協働性や、人間関係をしっかりつくっていくとともに、自分自身で動き出すといった主体性を重視していて。
例えば「キーコンピテンシー」という言葉で大切にしようとしているものは、実際に生きて働く知識や技術を身につけること、この場面ではどう動いたらいいかということを考え自分でやっていく主体性、人間関係の構築力の3つを基本として育てていきましょうという方向に進んでいます。

小幡 センター試験もなくなる予定ですよね。今後は抽象的な評価基準になるし、見るのが難しそうです。評価する人が重要になってきますね。

松田 まさにそのとおりです。大学の教師も、それがほんとに難しいです(笑)。

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————学校教育はどうあるといいなと思いますか?

小幡 僕は、最近ニコニコ動画のカドカワさんがはじめた「N高等学校」にすごい興味があります。

今思うと、学校に行ってた頃、これって将来役に立つの?っていう疑問がすごくあったんです。
学校で勉強している話題を、テレビや親の会話で聞いたことがなかったし。「これって将来使うのかな?」って子どもながらに感じていました。
目にみえて、これは使うだろうなということを教えてくれる学校があったらいいですね。

和歌山にある高校で、1校そういうところがあります。アーティスト系の学校で、タップダンスが踊れなかったら卒業できないんです。楽しそうだし、少なくともなにかに使えそうって思いますよね(笑)。

松田 実は昔、学校ってゲームで遊ぶことと似ていて、本来「暇」をもて遊ばせた人が、ただ単純に楽しむために通うところだったみたいですよ(笑)。
もともと「スクール」っていう言葉の語源が「スコレー」といってギリシャ語の「暇」っていう意味。
暇な人が集まって「太陽はいつ死ぬんや」とか日常に関係ない話をしてたら、それがたまたま天文学になったりして(笑)。
ゲームの世界と一緒でおもしろいからハマっていったっていう流れなんです。
あれやれこれやれと強制されるのではなく、学校が昔のような意味に満たされた場所に戻っていったらいいなと思いますね。



本対談を皮切りに、QREATOR AGENTは東京学芸大学と共同で「クリエイティブな人材はどう作られるのか?」をテーマに研究を進めていきます。
みなさま、今後の展開・ご報告を楽しみにしていてください!

Interview/Text: 橋村 望
Photo: 保田敬介

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松田恵示

まつだ・けいじ/「遊び学」研究者、東京学芸大学教授。
1962年生まれ。和歌山県出身。大阪教育大学大学院卒。専門分野は社会学(スポーツ・教育・文化)と教育研究(体育科教育/教育支援)。NPO法人「東京学芸大こども未来研究所」理事長、「中央教育審議会生涯学習分科会」専門委員、吉本興業主催「笑楽校」監修など、教育および教育支援に関する多くの要職を兼任。学校と社会を繋ぐための教育人材の育成や、スポーツ教育の開発を通じて、教育現場との実践的な共同作業を行っている。一方、社会意識論の立場から「遊び文化」を研究。あらゆる場面で「遊び」を取り入れた活動・普及に取り組んでいる。

http://qreators.jp/qreator/matudakeiji

小幡和輝

おばた・かずき/1994年生まれ。10年近く不登校を経験。中学校を卒業後、和歌山県立耐久高校定時制に入学し、校内外でさまざまな経験、人と出会い人生が大きく変わる。その経験から「人と人が繋げるキッカケを作りたい」と強く想うようになり、人を繋げるツールとしてイベント制作をはじめる。2013年2月にイベント制作会社和ーなごみを起業し高校生社長となる。2015年には世界的な学生起業家のプレゼンテーションアワードであるGSEAで日本予選・アジア予選を通過。ワシントンD.Cで開催された世界大会に日本代表として出場。7月より学生と社長のマッチングメディア「社長訪問」を立ち上げ代表に。自身の経験を話すことで「一歩踏み出す勇気」を伝えるため、全国各地の学校やイベントでの講演活動やメディア出演も精力的に行っている。

http://qreators.jp/qreator/obatakazuki

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