スマホ+動画なら、女性向けにこそ勝機がある

2015.11.26

Saegusacontents

日本テレビを退職し、元LINEの森川亮社長が立ち上げたC Channelに取締役COOとして参画した三枝孝臣さん。
数多の動画サービスが乱立するなか、C Channelの強みはどこにあるのでしょうか。そして、あえて「女性向け」に絞った真意は? 元テレビマンが考える、新しい動画コンテンツのあり方とは。

150805 qat0032
人間の体は縦。縦動画のほうが自然なのでは

――2015年の7月から新しく参画されたC Channelは、どういうサービスなのでしょうか。

三枝 女性のための動画メディアです。若い女性が、自分の身の回りの情報を、自分で見つけて、自分で発信する。最終的には、女性のための通信社のような存在になっていけばいいと考えています。
先に、1次情報の発信場所が、テレビではなくなってきたという話をしました(前半記事はこちら)。では、1次情報、1次コンテンツはどこにあるのか。それは、もっと身の回りに転がってるものなんじゃないか。そして、それを自由に発信できるインフラ環境も整ってきた。それならば、女性が自由に自分の身の回りのことを、世界に発信できるメディアをつくろう。そういう流れで考えました。
C Channelでは、取材、編集、配信がワンストップでできる仕組みをつくっています。気軽にアップできる、いわば動画ブログのようなものです。それをもとに、みんながコミュニケーションできるようになるといいなと。

Shutterstock 140090374

――なぜ、女性向けなのでしょうか。C Channel代表の森川亮さん、三枝さんとは、少し遠い世界なのではないかと思ったのですが……。

三枝 2011年にスマホが爆発的に普及したとき、女性が初めていわゆる“ガジェット”を日常的に持つようになりました。そこで、僕らは大きなフェーズ転換が起きたと考えたんです。僕と森川は日本テレビ新卒入社の同期で、彼は2011年当時LINEの社長でした。森川とはたまに会って話をしていたのですが、これからは動画が新しいステージに上るのではないか、という話題で盛り上がったことがありました。そこで考えたのが、スマホで動画を撮る・見るというカルチャーは、女性から浸透していくんじゃないかということ。どちらかというと、男性よりも女性のほうがスマホで日常的な物を撮るのが好きですよね。

――タレントさんでも女性のほうが、身近な生活についてちょこちょこアップしている印象があります。

三枝 日常を少しアップする、そういう「キラキラの共有」みたいなことって、女性のほうがよくやってますよね。これって井戸端会議……とは、今は言わないか(笑)、オンラインの女子会みたいなものだと思うんです。「今日行ったこのカフェかわいかった」「今日はこういうコーデでお出かけ」「今日のメイクはここがポイント」といったことを共有する。それは、女性特有のコンテンツなんですよね。女性とスマホ動画というのは、親和性が極めて強いと感じたんです。

――誰でも自由に動画がアップできるようになると、クオリティが下がるという懸念はありますか?

三枝 社内でもよく議論するポイントですね。それは、クオリティを下げないようにというのではなく、C Channel、ひいてはスマホ動画における“クオリティ”とはなんなのか、という話し合いです。そもそもテレビだって、登場した当初は「電気紙芝居」なんていわれて、映画のコンテクストの中で生きている人にとっては、レベルが低いものとされていたわけです。でも、映画とテレビは違うものであり、テレビにおける“クオリティの高い作品”というのはたくさんある。
では、スマホで見る映像コンテンツで、クオリティが高いというのはどういうことなのか。視聴時間が長ければいいというものではないですよね。スマホだったら、むしろ短いほうが観やすい。画質が高いほうがいい? もう最新のiPhoneでは4K動画が撮影できます。でもテレビではまだ4Kは放送できない。だからといって、スマホ動画のほうが上とも言えないのですが、けっきょくクオリティが高いか低いかは、ユーザーが決めることなんだと思います。

――デバイスの特性によっても変わってきますね。

三枝 それでいうと、C Channelの特徴はスマホ視聴を前提とした「縦動画」です。これも今は違和感があるかもしれませんが、3年後には当たり前になっているかもしれません。スナップチャットも縦動画を推進しているし、YouTubeも縦対応しましたよね。
これってもしかしたら自然な流れなんじゃないかと思うんです。だって、人間の体は縦長ですよね。顔も縦長だし。意外と、世の中のものは縦長なんです。あと、日本美術でいえば掛け軸は縦です。さらに遡ると、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」も縦長の絵画。我々は映像というと劇場のイメージで横だと思ってきましたが、歴史的に言うと縦のほうが自然のように思えます。

150805 qat0048
映像に字幕はいらない。原点に戻って考えた

――ほかに、C Channelと他の動画サービスと違う点はありますか?

三枝 一番大きいのは、自分たちでコンテンツを持っているところですね。アップする動画の編集は内製していますし、広告も自分たちでつくっています。

――それはやはり、テレビ局で映像をつくった経験のある、映像のプロである三枝さんが参加されてるからできたことなんでしょうか。

三枝 映像のプロがつくったほうがいいかどうか、というのも改めて考えるべきところだと思います。ただ、自分がテレビマンとして持っていた、「多くの人におもしろいコンテンツを届けたい」という動機の部分は、多少使い勝手がありますね。テレビのディレクター、プロデューサーと一言で言っても、「アイデアを生み出す」「人にわかりやすく伝える」「番組というかたちに落としこむ」「制作の段取りを考える」……など、スキルは分解できます。それらを組み合わせて、自分を使ってもらえたらと考えています。

――映像のプロから見て、C Channelに驚くような動画が上がってくることはありますか?

三枝 ありますねえ。やっぱり、インターネットというのは“Power to the People”のテクノロジーなんだと実感します。玉石混交ではあるんだけれど、玉は必ず出てくる。それは、僕達には発想できないものなんです。例えば以前、「道端に落ちてるもの長さを測る」という動画をモデルさんが上げてくれました。こんなの思いつかないですよね(笑)。あとは、「犬にカメラをつけて走らせる」など「そうきたか」と思うものもいろいろあります。

――これから、C Channelでもご自身の会社でもいいので、やっていきたいことはありますか?

三枝 オリジナルのコンテンツをつくって、より多くの人の生活を豊かにしていきたい。そういうコンテンツを、日本だけじゃなくて、世界に届けていきたいですね。もうひとつはちょっと大きいんですけど、日本をもっと元気にしたいと思います。20世紀の日本は、良質な“物”を世界に提供していた。ならば、21世紀は広い意味での“コンテンツ”を提供する国になったらいいなと。僕もそういうコンテンツを提供していくし、そういう仕事に関わりたいと思う人が増えて欲しいですね。

――C Channelのコンテンツも、世界に発信しているんですか。

三枝 C Channelのアプリは、英語、中国語に対応してるんです。少なくとも3カ国語で、世界中の人が同じコンテンツを体験できるようになっています。
C Channelをやっていて思ったのですが、動画って情報量が多いので、言語の壁をあまり感じないんです。メイク動画なんてそれの最たるものですよね。見ていればわかる。字幕をつけるかどうか、という議論もあったんですけれど、なくてもいいのではないかとも考えています。字幕をつけることで、映像の本質から離れてしまうんじゃないかと。
そこで、僕が日本テレビに入って最初につくった作品のことを思い出しました。それは、Dreams come trueのドキュメンタリー。僕は、とにかくナレーションと字幕を排除しようと思ったんです。そうすることで、映像そのものに集中して観てもらいたかった。それは、23歳という若造の僕の強いおもいだったのですが。26年経ってまた、そこに戻ってきました。

150805 qat0030

Interview/Text: 崎谷 実穂
Photo: 栗原 洋平

このページが気に入ったら「いいね!」

Qreatorsの最新情報をお届けします

三枝孝臣

さえぐさ・たかおみ
株式会社アブリオ 代表取締役社長
/C Channel株式会社 取締役 CCO
1966年東京生まれ
1989年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本テレビ放送網入社
テレビプロデューサー、演出家として、入社2年目で企画した「DAISUKI!」を皮切りにバラエティ「夜もヒッパレ」「さんまSMAP」ドラマ「平成夫婦茶碗」「明日があるさ」「東京ワンダーホテル」情報番組「スッキリ」「シューイチ」「ZIP!」等全てのジャンルで数々のヒットコンテンツを世に送り出した。
2013年同社インターネット事業に携わり新規事業開発に着手。放送コンテンツとインターネットを使った事業立案に関わる。2014年「Hulu」制作部長、インターネット事業担当部次長を経て2015年独立。
新たにメディアデザイン事業会社、株式会社アブリオを設立し、同時にC Channel株式会社取締役に就任。
一方で日本舞踊岩井流宗家の血脈を受けつぎ、岩井流五代目岩井杜若の名を持ち日本伝統文化事業にも携わる。

http://qreators.jp/qreator/saegusatakaomi

SERIES

1200 600sm nishikori before

日本が生んだ世界的ヒーロー、錦織圭選手の背後霊をのぞきみ!

SPECIAL

150730 qat0080

映画監督・紀里谷和明「世界は変えられない。変えられるのは自分だけ」

SPECIAL

Hakunetu titlekyoiku

リスクは「ヘッジ」するのではなく、「取りにいく」もの【後編】