QREATORS

プリクラ、自撮りetc.日本の女の子文化が「未来」をもっと面白くする

2015.11.16

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お笑いコンビ キングコングの西野亮廣氏が校長を務める
大人のための学校「サーカス! -Smile Academic Crazy Unique School-」

毎回様々な分野の専門家を呼んでの授業。
興味がない分野に興味を持ち、学びたいという気持ちにさせる学校と言われています。
先生の話術に引き込まれて前のめりになり、学ぶことが楽しいと教えてくれると好評を得ています。

そんな魅力のあるイベントに、今回QREATORの久保友香がゲスト出演し、「シンデレラテクノロジー」をテーマに授業をしました。

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シンデレラ・テクノロジー

久保 日本の女の子から新しいコミュニケーションの技術が広まるという事が昔から結構あって、例えば絵文字。日本の女の子が使い始めて世界に広がっています。
携帯電話での自撮りも2001年に日本の女の子が始めて今では「セルフィー」という名前で世界中に広まっていますよね。
古くは平安時代の平仮名なども、最初に若い女性たちが使い始めて、男性にも広がりました。
日本の女の子たちから始まったコミュニケーションって最初はバカにされがちだけど「簡単で・使いやすく・わかりやすい」から広まりやすいんです。
こういった日本の女の子たちの発想が、未来のコミュニケーション技術に活かせると考え、日々女の子の観察をしています。日本の女の子の文化からヒントを得る、新しいアイデンティティを作り上げるための技術を「シンデレラテクノロジー」と呼んでいます。

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日本発祥のプリクラから考える

久保  実際に日本の女の子の観察をしてみて、未来のコミュニケーションのヒントを見つけました。日本の女の子たちは、リアル世界とバーチャル世界の行き来がうまいのです。それを象徴するような「プリクラの話」をお話します。
今、最もシェアの大きいプリクラメーカーにはネット登録会員数が1千万人以上もいるのですが、そちらのプリクラで撮った写真で応募するオーディションが開催されました。
そこには26万人もの応募があり、26万人から最後20人に絞られるところまでは、プリクラ写真、つまり画像処理をした画像に対する投票が行われたのですが、最終審査だけはリアルな舞台で行われました。
私はそれを見に行かせていただいたのですが、思っていた通り、プリクラの画像とリアルな人間はだいぶ違っていました。
ですが、彼女たちはいきいきと、最終審査では芸能事務所のスカウトさんの前で歌や踊りを披露しました。

現実の自分を「リアルアイデンティティ」とするなら、プリクラやSNSなど自由自在に設定できる自分を「バーチャルアイデンティティ」と呼ぶことができます。
現在、バーチャルアイデンティティと言うと、それを悪用した〝なりすまし″の犯罪などの方が目立っています。
しかし、プリクラオーディションに集まった女の子たちの場合は、バーチャルアイデンティティでの成功(プリクラ画像を使ってインターネット投票で選ばれる)を、リアルアイデンティティの夢への挑戦(芸能事務所のスカウトさんの前で歌や踊りを披露する)に活かすという、バーチャルアイデンティティの理想的な活かし方であると思います。
これからのインターネット社会を考えた時、彼女たちのようなバーチャルアイデンティティの使い方が、多くの人に求められるのではないでしょうか。

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「盛る」理由は、自分らしくあるため

久保 女の子たちはなぜ、リアルアイデンティティとバーチャルアイデンティティをうまくつかいこなせているのか、彼女たちが使う「盛る」という言葉がキーになると思いました。
日本の女の子たちは、プリクラや自撮りで実際よりも良く見せることを「盛る」と呼び、理想的に盛ることができると「盛れてる」と喜びます。
私は女の子たちに「なぜ盛るのか?」と聞いてきました。彼女たちは最初答えに迷い、「男性によく思われたいから盛るの?」「女性の目を気にして盛るの?」と質問を変えて聞いても「そうでないことはないけれど、そうであることもない」という曖昧な回答をするのですが、最後に行き着く答えが「自分らしくあるため」というものでした。
彼女たちのプリクラの顔も、お化粧の顔も、私から見れば似たような顔に見えていたので、彼女たちはそこに「自分らしさ」を意識しているとは驚きました。
しかし、彼女たちの行動を観察するうちにあることに気づきました。これはプリクラメーカーの「フリュー」との共同研究の中で気づいたのですが、彼女たちは盛れば盛るほど良いと思ってはいません。
実際の顔と違いすぎることは「盛れすぎ」と呼び、「盛れてない」ことと同じになると言います。
プリクラでも化粧でも、どんどんと加工を増やしていくと、急激に別人感が高まるところがあります。これを私は「盛れすぎの坂」と呼んでいるのですが、彼女たちが目指すのはその直前です。
「盛らない」のはつまらないけれど、「盛れすぎ」も良くなくて、その直前に小さな「自分らしさ」を作ることが、日本の女の子たちのうまさなのです。

そして彼女たちは、お化粧でも、プリクラでも、商品をそのまま使うのではなく、自分に最も合った使い方を創意工夫で編み出していて、私から見れば似たように見える顔も、彼女たち同士では大きな差異が見える顔になっていることに気づきました。
それこそが彼女たちの追求する「自分らしさ」だということがわかってきたんです。

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ギャル道は、現代世界の中で一歩先を行っている!?

久保 彼女たちは「自分らしさ」を大事にしますが、端から「自分らしさ」を表すのはかっこわるいと考えているようなところがあります。
それは日本の芸事や武道にある「守破離(しゅはり)」の考えに近いのではないかと思うのです。
これは、いくら能力があるからと言って、いきなり新しい流派を作るというのはよくないこととされていて、まずはその流派の「型」を守ることを追求し、それが完全にできるようになって師匠に認められたら、破って、離れて、新しい流派を作り、それができた人がすばらしいというような考え方です。
日本の女の子たちの考えもそれに近いと思うのです。彼女たちの間でも、いきなり「自分らしさ」を表現することはちょっと良くないこととされていて、まずは女の子コミュニティで共有するトレンドなどを守り、それができてから、破って、離れて「自分らしさ」を表現することが良いという考えがあるようです。
武士に「武士道」があるように、ギャルにも「ギャル道」があるんですね。

彼女たちのこういう個性の表し方は、これからのインターネットコミュニティの形成に活かされると考えています。
リアル世界では多くの個人は企業や学校などに守られていますが、ネット世界では個人が公にさらされて危険です。
その中で、彼女たちのように、コミュニティの外から見れば見分けがつかないようにして身を守りながら、コミュニティの中の人には個性を見せてリアルなコミュニケーションをしていくというやり方は、安全かつ発展的な望ましいやり方だと思うのです。

このように、大人や男性からにしてみれば、ちょっととっつきにいくかもしれない女の子たちの行動ですが、実は日本人の考えを活かしながら、未来の世界に求められる要素を持っているかもしれないことを、皆さんと共有できたらいいなと思いました。

Photo: 栗原洋平

久保友香

くぼ・ゆか/東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員&シンデレラテクノロジー研究者
1978年、東京都生まれ。2000年慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科卒業。2006年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(環境学)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、14年より東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員に就任。専門はメディア環境学。

http://qreators.jp/qreator/kuboyuka

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