QREATORS

「楽しく働く母」から受けた刺激。そしてお互いを高め合う“自立した親子関係”の秘訣

2015.11/16

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たくさんの習い事を通じ、自分で考える力を育んできた矢島里佳さん

その後、日本の伝統文化に関心を持ち、大学在学中に子ども向けの伝統産業ブランドを扱う会社を立ち上げます。そのとき家族はどのように彼女を見守っていたのでしょうか。


前編
に続き、母・久美子さんから子育て秘話を伺います。

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「働く」と「生きる」を分けるのはすごく辛いんじゃないかと思う

————学生時代に会社を立ち上げるのは大変な決断です。家族には相談しましたか?

里佳 それが実は、ほとんど相談しなかったんですよね。私も準備でものすごく忙しかったし、母は母でとても忙しい時期でしたから。

久美子 ちょうど横浜に新しい教室を作った時だったので、お互いに自分のことで手一杯だったんです(笑)。

里佳 でもそれがいいんですよね。母がいつも働いていた、というのは私にとって一番良かったことかもしれません。もし母に時間があって、24時間口を出されたら息がつまっちゃう!
適度に構うけど、後は過剰に干渉せず放っておいてくれますし、いつも楽しそうに働いている。そんな様子を見て育ったので「働くのって楽しそうだな」と思っていましたし、それが起業につながった部分もあると思います。
だから小学生の頃から「早く働きたい!」という感じで、同世代の「大人になりたくない」という声が信じられませんでした(笑)。

————母の背中が、知らず知らずのうちに娘をサポートしていたんですね。

久美子 働いている母でよかった、と思ってくれているのはありがたいです。
私にはとても仲のよい専業主婦のママ友がいて、彼女がマメに子どもの面倒をみているのを見て「私ももう少し落ち着いた生活をして、あんなふうに接したい」と憧れを抱いていたもので。
でも、そうはできなかったんですよね。

里佳 できなくてもよかったと思うよ。運動会とか授業参観とか要所要所は参加して、あとは子どもの自主性に任せて困ったときに助けてあげる……という我が家の距離感はちょうどよかったな、と思うけど。

久美子 授業参観を忘れちゃったこともあるんですよ。
ある日、ちゃんと参観日に小学校に行ったら、里佳が「ママよく来たね! よく忘れなかったね!」って(笑)。
好きなことを仕事にしているので、あんまり仕事とプライベートの区別がないところがあって。「お休みは何をしてるんですか?」と聞かれるとすごく困るんです。休みはない、っていうと「大変ですね」って言われちゃうし、でも大変とは全く思っていないどころか、むしろ充実していて自然なことで。

里佳 「生きること」の一部に「働く」というパートがあって「家族」とか「趣味」とかも同じように「生きること」の一部だと思うんです。
だから「働く」と「生きる」を分けて考えるほうが実は辛いことなのではないかな、と私は思いますね。本来は同じ価値観の中に自然にリンクしていられることがいいと思います。

久美子 習い事にしても、こうやって自分の会社を起したことにしても、娘たちが楽しんで生きる人になってくれているのが何より嬉しいです。
今は楽しみながら生きるのも、簡単な時代ではないですから。

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親のすることは「口出し」ではなく「環境づくり」

————ふたりが話すのを見ていると、親子ですがお互いに自立した対等な関係、と感じられますね。

里佳 たしかにそうかもしれません。
同世代の友人のなかには「お母さんは、人生の時間をあなたのために全部使っているんだからね」と、言われている子もいました。
だから就職先を選ぶときも「お母さんに相談してみないと」となる。親のために生きていると、とても大変だと思います。
その点、我が家はみんな自分のことは自分で決めるし、それを誰かがとやかく言うこともありませんね。そのかわり責任も自分にありますが。

久美子 里佳にしても妹にしても、自主性があるのは0歳から積み重ねた経験値があるからだと思うんですね。
「小さいうちは何も分からない」と言う人もいますが、たとえ0歳児でもこちらが手を振れば、動きに反応して目を向けたり、足をバタバタさせたりするんです。そういう小さなこともで「よくできたね!」と褒めてあげると、子どもの中に「できた!」という実感が生まれる。
そういう小さな「できた!」が積み重なってたくさんの成功体験になり、「自分はできる」と信じる力になっていく、というのが私の信念です。

褒めろ褒めろと言うと親バカみたいですけど、親バカでいいと思うんですよ。
子どもが小さいときほど、親が褒めてあげないと「できた」実感は得られないわけですから。

前回
お話しした習い事をさせるのもそうですが、親の役割は口を出すのではなく、子どもの将来の選択肢を増やしてあげる環境づくりだと思いますね。

里佳 たしかに子どもの頃に経験していてよかったなと思うことがたくさんありますね。
たとえば私は日本で育ったので、外国で生活したことはないのですが、「里佳ちゃんは帰国子女なの?」と、たまに聞かれることがあるんですね。
英語が得意なわけではないのですが、学校の英会話の授業で話すときに、わりとネイティブに近い発音ができていたようなのです。幼少期に音楽と英会話を習わせてもらったおかげかなと考えています。音の高低差や抑揚を拾えるので、ネイティブの方の発音を真似しやすいようです。仕事で地方に行っても、すぐ地元の人の言葉に近い話し方になります(笑)。
子どものときから日本語以外の周波数の音や言語に触れる、という経験は親がやらせてくれないとできないし、大人になってからこの力を習得するのは難しかったろうと思います。

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「伝統産業」という選択は、とても自然なことだった

————ここまで話を聞いていると、里佳さんから「子どもに向けた伝統産業品」という目線が生まれてきた理由が分かる気がしてきました。

里佳 「伝統産業の技術を使って子ども向けの商品を作るなんて、よく思いついたね!」と言われるのですが、私の中ではとても自然な発想でした。
どうして伝統産業が衰退しているのか、と考えると「そうか、子どもの頃に出逢っていないから、伝統品を選ぼうという選択肢がそもそもないんだな」と気づく。
それなら子どものときに触れられるきっかけを作れば、興味を持つ子が現れるかもしれないし、物を買うときの選択肢に入るかもしれないし、職人になりたい人も現れるかもしれない。自分自身の原体験も含め、母の仕事も含め、幼少期の体験が持つ可能性はよく知っているので、子どもの頃から日本のホンモノに出逢える環境を生み出したいと思ったのです。

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久美子 一緒に生活するなかで私が取り組んできた0歳児教育のことを見ていてくれたのかな、彼女の中に何か残ってくれたのかな、と思うと感慨深いですね。
でも我が家には伝統産業品のようなものはほとんどなかったから、そこは新鮮に思います。

里佳 親世代が生きてきたのは大量生産・大量消費の時代ですから、時代として伝統産業の魅力に気づきにくかったのかもしれません。私の世代の感覚で見るから「伝統品っていいな」と気づけたのだと思います。
あとはやはり幼少期の経験で、幼稚園で陶芸の時間があったんですよ。そのときの冷たい土の感触とか、釉薬をかけて焼いてもらった記憶が残っているから、自然と惹かれるものがあるのでしょうね。
やはり小さいときの経験や環境は人生に大きな影響を与える気がします。

久美子 はい、乳幼児期の環境づくりは大切ですね。里佳がやっていることは、子どもの可能性という点で私の仕事と大いにリンクしているので、とても共感できることが多いです。

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親子というよりは「子どもの可能性を広げる」ためのビジネスパートナー

————家族でありながら、仕事の面でも刺激になる関係だ、と。

里佳 母は私の講演会を聴きに来てくれるんですが、単に娘を観に来るというのではないんですよね。

久美子 そうそう(笑)。私も講演をする機会がありますけれど、多くの場合「私の指導法を聞きたい」という最初から強い関心を持ってくださっている方が多いんですね。
その点、里佳の場合は、通りすがりの人も含め、最初はあまり関心がない人もいらっしゃるようなので、その惹きつけ方など一人の講演者として関心がありますね。
先日はじめて聴きに行きましたがよく流れを考えていましたし、質疑応答の時間も講演の時間と捉えて、上手に伝えたいことを盛り込んでいましたね。こんな感じで普通の講演を聴くように、客観的に楽しんで参考にしています(笑)。

里佳 人は関心のあることに意識が向くので、興味がある観点からお伝えしたほうが話を聞いてもらいやすいでしょう。だから質疑応答の時間も大切な公演の時間と捉えています。
こうやって話していると、母というよりもビジネスパートナーみたいですよね(笑)。

久美子 ホントそうね。東京直営店『aeru meguro』でリトピュアリトミックのレッスンをやっているんですよ。

里佳 商品を見てもらうだけで「感性を磨く」と言ってもなかなか伝わりづらいので、リトミックで乳幼児期の感性を養う大切さがより立体的に伝わるんじゃないかと考えまして。
とても親和性が良いように感じています。

久美子 私も、子どもにいいものを使わせたい、という意識の高い親御さんに、楽しい0歳からの乳幼児教育法があることをお伝えしたいですしね。

そうそう、先日、とある研究者の調査データを見ていたんですけどね。
人間の能力は試験の成績やIQなどに代表される『認知能力』のほかに、意欲や粘り強さなどの社会適応力を表す『非認知能力』があるそうなのですが、その研究データによると『非認知能力』を養うには、乳幼児期の成功体験とか、子ども時代をどう過ごすかがとても大切らしいんです。
これは私が取り組んできたことの裏づけになる研究かもしれない、と。

里佳 私も知りたいから今度見せて!

久美子 私たち、いつもこうなんです(笑)。お互い、新たに知ったことや、面白い情報などを交換し合ったり。私がしてきた「子どもの可能性を広げる」ということを、一緒に考える仲間が増えたようで、心強いですね。



aeru京都直営店「aeru gojo」が11月7日(土)にオープン
営業時間:平日10:00〜18:00(水曜定休)
場所:〒600-8427
京都府京都市下京区松原通室町東入玉津島町298
電話番号:075-371-3905(営業時間内)

11月23日(月祝)開催!「六本木アートカレッジ〜クリエイティブシャワー〜」に矢島里佳氏が登壇
丸若屋代表・丸若裕俊氏とともに「再生〜日本の伝統に、スイッチを入れる〜」をテーマにトークします。
参加申し込みはこちらから

Interview/Text: 木内アキ
Photo: 森弘克彦

矢島里佳

やじま・りか/株式会社和える 代表取締役。
1988年、東京都生まれ。1職人の技術と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」という想いから、大学4年時である2011年3月株式会社和えるを設立、慶應義塾大学法学部政治学部卒業。幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、子どもたちのための日用品を、日本全国の職人と共につくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。また、全国の職人とのつながりを活かしたオリジナル商品・イベントの企画、講演会やセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など幅広く活躍している。2013年3月、慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程卒業。2013年末、世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・シェイパーズに選出される。2014年7月、書籍『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』を出版。第4回 DBJ女性新ビジネスプランコンペティション DBJ女性起業大賞受賞。

http://qreators.jp/qreator/yajimarika

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