渋谷舞台の名作ゲーム「街」「428」総監督二人が語る渋谷の20年と今

2015.11.13

Machitoshibuya



渋谷にある旧渋谷区総合庁舎が解体されることにちなんで行われたイベント「渋谷のたまご さよなら区庁舎」。渋谷を愛する人々の参加型フェスティバルの一環として、渋谷を舞台にしたゲーム『街~運命の交差点~』(以下『街』)の総監督 麻野一哉さんと、『428~封鎖された渋谷で~』(以下『428』)の総監督イシイジロウさんのトークイベントが行われた。

Samuneiru
渋谷の街がこれだけの量の写真として残っているというのはすごく珍しい(イシイ)

ーー渋谷の区庁舎解体にちなんだイベントなんですけども、お客さんの中にはコスプレしているひともいらっしゃいますね。キャベツ教(『街』『428』に登場する架空の新興宗教団体)とか雨宮桂馬や細井美子(『街』の主人公)とか……。

麻野 『街』って、もう20年も前の作品なんですけどね。

ーーまずイシイさんの方からトークイベント開催のきっかけを教えてください。

イシイ このイベントのスタッフさんから「こういうイベントがあるんですけど、渋谷を舞台にしたゲームという事で『428』のトークイベントしませんか?」と相談がありました。最初聞いたときは、正直悩みましたね。渋谷区を代表するゲームが『428』でいいのかなと思って。だから、『すばらしきこのせかい It's a Wonderful World』(2007年に発売された渋谷区をモデルとしたゲーム)とかも入れて渋谷ゲーム大集合でいいんじゃないかな、とか思ってたんですけど、色んなメーカーに声をかけるというのも大変という事で、最終的に『428』でイベントをすることになりました。そして個人的独断なんですが『428』だけだと寂しいので『街』も入れさせていただきました。『すばらしきこのせかい』が好きだった人にはすみません。

ーー渋谷はゲームの舞台にしやすいところはありますよね。

イシイ そうですね。あと『街』や『428』は、実写ということで、20年前の渋谷の風景と10年前の渋谷の風景の写真が何千枚と入っているので、ちょっと大げさですが、確かに文化的な価値もあると言えるかもですね。ゲームに使った写真が何千枚、素材というレベルで考えれば何万枚、十何万枚というレベルを撮影しています。渋谷の街がこれだけたくさんの写真で残っているというのは、すごく珍しいことだと思います。そういう意味では渋谷区のこういったイベントとは合っていたかもしれませんね。

ーーいわば「オフィシャルのゲーム」というイメージがつきますよね。

麻野 まあ、でも、作ったときはね、逆だったよね。

イシイ オフィシャルとは程遠い(笑)。

Img 0011
『街』は舞台を渋谷に決めてからシナリオを作った(麻野)

ーーまずは麻野さんから、『街』の舞台ってどうして渋谷になったんですか。

麻野 企画段階で、舞台はどこにしようという話になって。新宿や池袋、渋谷、吉祥寺とかが候補として挙がりましたね。その中で、当時の渋谷はコギャルとかが話題になっていて、一番マスコミにとりあげられていた頃だったんですよね。若者の街ってイメージ。あと、決定的だったのは、当時チュンソフトの社長である中村光一さんが、渋谷にあったファンタジアというゲームセンターが大好きだったこと。そこにあるピンボールのゲームを、何百万円もかけてずっとやっていたんですよ。あとは、シナリオ担当の長坂秀佳さんも渋谷の近くに事務所を構えていて馴染みがあった。そこが理由としては強いですかね。

ーーわりと関係者の意向が強かったんですね。

麻野 そう。舞台を渋谷に決めてからシナリオを作った、という感じ。

ーー『428』は『街』に引き続き、再び渋谷を舞台に選んだ理由は何ですか。

イシイ シナリオを書く前に、『街』を継承したタイトルというコンセプトがあったので、その時点で舞台は渋谷だよねっていう部分はありました。むしろ、いきなり舞台を新宿とかに移したらわかりづらいよね、っていう。ただ、悩んだのは、渋谷って撮影が難しいところなんですよ。撮影のチームから「渋谷だとやれることが限られていますよ」みたいなことを言われて、すごく悩んだ記憶があります。

ーーなるほど。

イシイ 渋谷のスクランブル交差点の中心とか、皆さんがよく知っている風景で撮影しようとすると、やはり本格的な撮影は、安全面の点で難しかったりするんですね。新宿も伊勢丹の前の通りとかは難しいらしいですけど、一本後ろとかの路地に入れば許可が取れる可能性もあるそうです。映画のスタッフとかに「撮影が一番やりやすい都市ってどこですかね?」って聞いたら、「例えば札幌」って言われましたね(笑)。

麻野 札幌は、冬は使えないしねぇ。

イシイ 札幌とか福岡とかはロケ地として力を入れているみたいで、撮影スタッフにも「地方はいいですよー」とか言われたけど、まあやっぱり渋谷かなって。やっぱり「『街』を継ぐもの」っていう考え方であれば渋谷で10年後の世界を描きたい、と思って渋谷になった感じですね。

当時の撮影エピソードについて
ーーちなみに、『街』はけっこう難しいが多かったという話ですが、『428』もそうだったんですか。

イシイ まあ、そうですね。完全に撮影用に許諾をとって道を封鎖して「何してもいいですよ」っていう状態での撮影は、中心街ではなかなかできない状況ですよね。ちょっと中心街を外れると大丈夫だったりするんですけどね。『街』もそうだったんだと思うんですよね、

麻野 ひどかったのは、パルコ前で篠田正志が逆さはりつけになるシーン。あれはかなり無茶やりました。

ーーあのシーンは、本当に篠田正志役の人を逆さはりつけにして、撮影をしたんですか。

麻野 歩道に逆さはりつけにしたやつを置いておくんですよ。その時点で異様なんですけど。通行人も山ほどいるから、みんな見てくる。そんな中、人寄せする人が待機していて、青信号になった瞬間、通行人に大声で「渡らないでくださいーーー!」ってみんなで声を張り上げる。そして、みんなではりつけの男を担ぎあげて、ぐわーと走って歩道に出て行くんですよ(笑)。

イシイ (笑)

麻野 通行人はみんな「テレビの撮影かな?」って一瞬思うんだけど、ふと撮影している人を見ると、カメラが普通にハンディのやつで、「記念撮影かい!」って(笑)。撮影が完了したらすぐに「すみませんでした!」って言ってバーっと下がる。(笑)。

ーー『428』もそういう撮影はありましたか?

イシイ 『428』の撮影で緊張感が高かったのは、建野京三が銃を持つシーンですね。普通にハチ公前ですっと出すんですよ(笑)。あれがもうドキドキで。撮影と知らない警察官とかいたら絶対に飛んでくるじゃないですか。

麻野 ものすごく不審な行動だね(笑)。

ーーハチ公前ってちょうど派出所がありますよね。

イシイ ハチ公前の派出所の方は撮影なれされていますね。『428』の撮影の時も、必ず別の番組や雑誌の撮影を毎日と言って良いほど見かけました。

ーー毎日何らかのロケをやっていますからね。

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御法川実役の北上史欧さんも登場!

ーー『428』の舞台裏トークゲストとして、御法川役を演じていた北上さんにもお越しいただきました。

イシイ 急なオファーなのにありがとうございます。

北上 Twitterで1週間前くらいにメッセージがきましたよね。

ーーそんな急なオファーだったんですね(笑)

イシイ 「来ていただけますか」って言ったら、「喜んで!」って返ってきて。本当にありがたいことです。

ーー御法川役で北上さんを選んだ経緯っていうのは、どういった理由からだったんですか?

イシイ 決め打ちでいった気がします。オーディションはしましたけど、送ってもらった事前の資料写真とか見て、この人は御法川としていいな、と思ったのは北上さん1人だけでした。撮影スタッフが、「モデル本業の人が映画のような撮影の仕方に対応できるかどうか見たい」と言って、そういう目的での面接だったかと思います。もちろん北上さんにそういう伝え方はしてないんですけど。

ーーじゃあ資料を見た段階で、イシイさんの中ではほぼ決めていた、という感じだったんですか。

イシイ そうですね。資料に面白い写真がいっぱいあったんですよ。「指を指して大口を開けている」といった漫画的な、コメディ風な写真がたくさん資料にあって。あ、これは御法川役にぴったりなんじゃないかと。

北上 当時、モデル事務所にはいたんですけど、個性的なモデルの仕事が多かったんですよね。3枚目っぽい役とか、ちょっと芝居的なことを要求されることが多くて。それがよかったのかもしれないですね。

イシイ 『428』は写真を使ったゲームなので役者さんを選ぶときのコンセプトとしては、「一枚の写真だけ、その人の個性がポーンと伝わる人」みたいなものがありましたね。映像とかだとやっぱり、役者さんは積み重ねで個性を出していくじゃないですか。それとはまた違った魅力を探そう、という目的のキャスティングでもあったんです。

麻野 わかります。僕も青ムシ役(『街』隠しシナリオの登場人物)の人は、資料に面白い写真が多かったから選んだんです。知ってる人はわかると思うんですけど、内股で気持ち悪い歩き方をさせると最高なんですよ。

イシイ 青ムシと一緒になってしまいましたね(笑)。

北上 光栄です(笑)。

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今後の渋谷という街に期待していること

ーー最後に一言、今後の渋谷についての思いをお聞かせください。

イシイ 最近の東京都市論で、渋谷は少し時代遅れだという考え方があります。渋谷や新宿はもう開発が終わった旧都心であり、これからの新しい都心は東京駅とその東側を中心としていく、といったような。そういった状況で、今回の渋谷駅周辺の再開発はそれに対してのカウンターだろうと僕自身は感じています。だから、僕は渋谷の再開発にすごく期待をしていて。開発が終わったときに、また新しい渋谷を舞台として作品が作れるんじゃないかな、と。アニメでもゲームでも映画でも、新しい渋谷の街を舞台とした作品が出せればいいなと思いますね。

北上 僕、20代後半から30代前半まで渋谷に住んでいたんですよ。そのときに比べると劇的に街の様子は変わっている。一方で、懐かしくていいなと思う場所もあったりします。同じように、みんなが思う「渋谷」というイメージもあると思うので、開発をしても、そういうところは残しておいてくれると嬉しいなあって思いますね。

麻野 渋谷の街に一番期待しているのは、埼京線と山手線が近くなること。あと、一番お願いしたいのは、東横線と副都心線がくっついたんですけど、ホームが狭すぎるので、もう少し広げてほしいってこと。この2点ですね(笑)。

イベント当日は整理券がすぐになくなるほどの大盛況!ゲームのキャラクターのコスプレをしている人や、立ち見をしている人も。約20年前と10年前に発売されたゲームですが、今でも根強い人気をもっていることがわかる大盛況のイベントでした。

Interview/Text: 園田菜々
Photo: シブヤのタマゴ

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麻野一哉

あさの・かずや/ゲームクリエイター
チュンソフトに入社。「弟切草」にてサウンドノベルという新ジャンルを生み出し、また「不思議のダンジョンシリーズ」に大きな影響を与える。
「街~運命の交差点~」では総監督を務める。
2002年にチュンソフトを退社した後は、フリーのクリエイターとして活動。ゲーム制作のみならず米光一成や飯田和敏との共著や単著の刊行、講師、評論、翻訳、イベント活動など、幅広い活躍を行っている。

北上史欧

きたがみ・ふみお/俳優
現在は株式会社ギフト所属。「428 〜封鎖された渋谷で〜」では御法川実役を務める。

イシイジロウ

いしいじろう/ゲームクリエイター/原作・脚本家
1967年生まれ。日経映像(1994年入社)、チュンソフト(2000年入社)、レベルファイブ(2010年入社)を経て2015年に株式会社ストーリーテリング設立。
2014年。原作を提供したインディーズアニメ「UNDER THE DOG」が米国クラウドファンディング”キックスターター”のアニメーションジャンルにて世界最多の出資金額を集める。
2015年。アニメシリーズ/3DS版『モンスターストライク』 のストーリー・プロジェクト構成を担当する。
2016年1月より放映されるTVアニメ『ブブキ・ブランキ』にシリーズ構成・脚本(北島行徳氏と共同)として参加する事が発表されている。
代表作は『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』(監督/チュンソフト)、『428~封鎖された渋谷で~』(総監督/チュンソフト)、『TRICK×LOGIC』(企画・プロデューサー/チュンソフト)、『タイムトラベラーズ』(ディラクター/レベルファイブ)など

http://qreators.jp/qreator/ishiijiro

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