ゲーム実況者とゲームクリエイターが “ゲーム実況の今”を語る

2015.11.10

Mokouishi



動画コンテンツにおいて注目を浴び続けている「ゲーム実況」。今、このような人気の中でゲーム実況はどのようになっており、それらがゲーム実況者やゲームクリエイターにどのような影響を与えているのか。
弊社クリエイターでありゲームクリエイターであるイシイジロウさんとゲーム実況者として活躍されているもこうさんに“ゲーム実況の今”を語っていただきました。

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ゲーム実況で意識したいことは「誰かが楽しむことで、誰かがその楽しみの犠牲になっていないかどうか」

——本題に入る前に、おふたりが普段どんな活動をされているのかお伺いさせてください。

イシイ 僕は20年近くコンシューマーゲーム業界で開発やディレクションを担当していました。
昨年独立をして、現在ではアニメーション作品の原作や脚本など、さまざまなジャンルに仕事の幅を広げています。最近ではゲームデザインとアニメーションなどを連動させて、新しいものを生み出せないか模索しているところですね。
直近では、10月10日から始まったアニメ版モンスターストライクのストーリーとプロジェクト構成を手がけています。

もこう イシイさんの後でかなり恐縮なのですが(笑)。2009年5月からゲーム実況主としてニコニコ動画で活動しています。
ポケモンやぷよぷよを始め、歌ってみた、ニコニコ生配信や一発芸ネタなどなど、実況の他にも色々チャレンジしています。
もともとは会社員でしたが、プロ実況主として活動していくことを決め、最近会社を辞めました。

——ありがとうございます。ちなみにイシイさんはニコニコ動画のゲーム実況についてどれくらいご存知でしょうか?

イシイ ゲーム実況については、実は個人的に楽しんで観ている時期もありました。自分が作った昔の廃盤になったゲームが取り上げられていたりすると嬉しくなったり。
ただ、実況の市場が大きく拡大していく中で「実況っていいの?悪いの?」が問題化してきた時期から徐々に距離を置くようになりましたね。
というのも、実況に対して業界・メーカー・小売りなどがスタンスをはっきりさせるまで、一個人として発言できるフェーズがなくなってしまったからです。

——具体的にはどういうことでしょうか?

イシイ そもそも何で僕が今この場にいられるかというと、フリーランスという立場だからです。ゲームメーカーに所属している状態では、立場上この場にはいられなかったでしょう。
先程もこうさんからポケモン・ぷよぷよの話が出たと思うのですが、自分の立場を考えたときに、例えばカプコンさんがその実況を公式で許可しているのかどうかというところが問題となってきます。
公式で許可が降りている任天堂さんのマリオメーカーについてはいくらでも話せるのですが、そうでない場合、僕自身は無責任にコメントができない。ゲーム業界の人間ってみんなライバルなんですが、やはり多くが友達で、助け合って生きているんですね。
その中で僕の発言がもしかしたら誰かに迷惑をかけてしまう可能性があるからです。
ということで、すごく喋りづらいこともあるんですが、今回はその辺も含めてお話したかったのでこの場に立たせていただきました。

あともう一つ、当時、僕が気にしていたのが、小売業者さんへのスタンスです。
皆さんからは見えにくいかも知れませんが、在庫しているゲームが実況動画として無料で楽しめることについて、お店がどう思っているかがはっきりしないと、否定も肯定もしにくい。
流通さんも小売さんも含めてみんなで助け合っていきたいというのが、古参の業界人の考え方なんですよね。ただそれを壊していくのは、新しい人達の役目でもあると思っています。

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——なるほど。ゲーム実況と一口で言っても、メーカーが認めているかそうでないかというところで、クリエイター側のスタンスも変わってくるというところですよね。そんな複雑な思いが交差する中、ゲーム実況側にいるもこうさんはいかがでしょうか?

もこう 俺のターンということですね(笑)。
本当に申し訳ないのですが、僕は許可・無許可は特に何も考えず、自分の好きなゲームを好きなように実況させていただいています。
ただ僕が主に実況しているものは対戦系のゲームなので、先程イシイさんがおっしゃっていたような小売業者への影響というのはあまり無いのではないかなと。
「実況動画で見られるから買わなくていいや」となるよりは、その1回1回がオリジナルストーリーというか。
そういう意味ではむしろプラスに働いているのではないかと思っています。

イシイ 僕の方も、グレーゾーンのゲーム実況を特に非難するつもりはないですね。
ただ、意識したいことは、「誰かが楽しむことで、誰かが犠牲になっていないか」というところです。
新しいことが生まれるときに、誰かが知らないところで不幸になっていないかどうか。
ネットの普及により、次々と閉まっていったレコード屋や、町の本屋というしわ寄せの現実があるように。バランスが難しいんですよね。

——色んな意見がある中で、ゲーム実況は実際の売り上げに繋がる広報的な部分もあるんじゃないかという意見もありますが、それについてイシイさんはどう考えていらっしゃいますか?

イシイ もちろん効果はあると思います。ただ問題だなと感じているのが、ゲーム実況をすることでのプラスの効果とマイナスの効果が、当事者に見えにくくなっている点です。
「これはこういう形で許可したらあなたたちもプラスになりますよ」とリスクを取る人がメリットとデメリットをきちんと掲示し、うまくやっていくことが大事だと思います。

——広報の効果からの派生になりますが、人気タイトルではなく、ニッチなものを実況主が実況することで日の目を浴びるというようなこともあると思うのですが、そういうことって実況やっている中で感じたことはありますか?

もこう おおいにありますね。例を上げるとすればフリーゲームではないでしょうか。青鬼・夢日記・イブ・魔女の家などなど。それぞれにスポットが当たるようになったキッカケは実況ですよね。有名な実況者が次々と取り上げることで魅力が再発見されました。
先程の話にもリンクするのですが、そういう意味では誰も傷つけず、クリエイターもユーザーも含めてハッピーな形なのではないでしょうか。

イシイ それはポジティブですよね。そういうものを掘り起こして盛り上がっているものに関しては嬉しいし、応援したいとしかいいようがない。

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コントロールされることでクリエイターとしての価値が失われていく

——「マリオメーカー問題」についておふたりはどう思っていますか?

※ニコニコ動画内で、任天堂が「スーパーマリオメーカー」というゲームをクリエイター奨励プログラム(投稿作品に対して奨励金を支払う制度)の対象にしたため同ゲームに関する動画ばかりになってしまいランキングの多様性がなくなってしまった。

もこう 正直うまいなぁ、と思っています。
任天堂が実況を許可しているものは一環していて、プレイヤーによってプレイ自体に幅がでるものばかりなんですよね。そこが面白い。
同時に動画ランキングがマリオメーカーばかりに占められてしまい、その実況内容が似通ってしまうという問題も発生していまいました。

イシイ そこを言うと、マリオメーカーの実況ブームで騒がれている問題点というのはゲームクリエイター目線で見るといろいろ見えてきます。ゲーム実況って、ゲーム側がユーザーをコントロールできないからこそ面白みが生まれるんですよ。
実況することを前提にしていないゲームの方が、想定外なプレイができる。
例えば、僕が過去に監督した『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』というゲームには、主人公の台詞が入っておらず、選択式になっているのですが、まさかお客さんが実際その部分をアドリブで作りながら、第3者に実況するなんて作る側は想定もしていないわけですよ。だからこそ実況のオリジナリティや面白みが生きてくる。
でも、マリオメーカーは実況する事自体をゲームデザインの中に取り込んでいるようにみえます。そうなったときに実況さえもオリジナルのゲームデザインにコントロールされてしまう。
実況がコントロールされてしまったら、例えばクリエイターの僕から見たら面白くなくなってしまう。想定できる状況しか生まれませんから。

——想定できる状況しか生まれないとは?

イシイ 要は「ここはこういう風にプレイすると、こうウケるよね」って状況を全部ゲームデザインに予想して盛り込んでしまうということですね。
映画の泣き場面をつくるのと一緒です。ここを考えると、マリオメーカー実況の場合、急いで作った実況動画の内容が似通ったものばかりになるのにも納得できます。

もこう 見ているユーザー層も変わってきたなと感じませんか?動画を観るよりも、実況している人を見に来るというか。アイドル化していますよね。実況者もそれに対して味を占めている。

イシイ そう考えると、本当に実力のある実況主はマリオメーカーの実況ブームをあえて無視しても良かったのではないかなと僕は思っています。
それがブームに巻き込まれてしまっては、マリオメーカー自体の価値が相対的に高くなり、同時にいわばテンプレート化されてしまった実況を行うことで、実況主の価値を下げてしまっているのではないでしょうか。

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実況者として生き残って行くためには常にインディーズであり続けること

——マリオメーカーのように、公式でうちもやっていいよ!というメーカーの動きは今後増えるのでしょうか?

イシイ 物語が売りで映画に近いアドベンチャーゲームでも何話までは許可します、みたいな動きを取るメーカーはすでにでていますよね。
公式許可に根本的にアレルギーをもっている企業もあるかも知れませんが、今後はさらに公式許可が増えていくのではないでしょうか。
ただ今回のブームのように、最初から実況を想定したゲームデザインのゲームだらけになると、ますます実況主の個性がなくなってしまう恐れがあります。一時期ワッと盛り上がっても、2、3年たったら熱を失ってしまうというか。

もこう おっしゃる通りですね。という僕も実はマリオメーカーの実況をやってしまった口なんですが……(笑)。
ただ、マリオメーカーが目立つ中、全く違うゲームの実況にチャレンジし、ランキングを取りに行っている実況者もいます。

イシイ かっこいいですね!ゼロ戦で最新型のF22に勝負にいっているようなイメージ(笑)。

もこう でも正直、公式でOKされたものが出て来てしまうと、大半がやはりそっちに流れてしまう現実があります。
新参者を見ても「とりあえずマリオメーカーやってから」と、登竜門のようになってしまっているのが現状です。

イシイ ニコニコ動画にしてもYouTubeにしても、実況動画ってインディーズじゃないですか、考え方が。本質はサブカルチャー、カウンターカルチャーなんじゃないかと。
そういうところでは、メジャーなものを利用してのし上がるのではなく、反抗する人たちってカッコ良いなぁと僕は思っちゃいますね。
お金を追いかけたらそりゃクリエイター推奨プログラムやりますよね。でも極論を言うとそれってゲームメーカーの宣伝部や広報部でバイトしているのと何が違うの?って思う。ゲーム実況が向かう未来はそこなのですかね?
100人の感動を、1万人に伝えてやるって気持ちが一番大事だと思うんです。そこがぶれたら今度こそ過渡期だと思います。個人的な意見ですが、その中でどんどんもがいていてほしい。

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もこう 全ての実況者がこの場で話を聞くべきだと思う(笑)。最初はそういう気持ちも全員あったはずなんですよね……。

イシイ 実況だけではなく、全てのことに通ずると思うのですが、結論コントロールされてはダメだと思う。
少数の人が面白い!といってくれるものを探して、それをいかに多く伝えていくのかを考えるのが大事だと思っています。
理想かもしれないけど、ゲーム実況主はインディーズであり、伝道師であるべきだと僕は思います。マイナーと後ろ指さされながらも、いや、これが世の中を変える!と信念を貫いていくからこそ、これからもゲーム実況の本質を守れて、そして未来を作れるのではないかと思います。

Interview/Text: 古性希望
Photo: 栗原洋平

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イシイジロウ

いしいじろう/ゲームクリエイター/原作・脚本家
1967年生まれ。日経映像(1994年入社)、チュンソフト(2000年入社)、レベルファイブ(2010年入社)を経て2015年に株式会社ストーリーテリング設立。
原作を提供したインディーズアニメ「UNDER THE DOG」が米国クラウドファンディング”キックスターター”のアニメーションジャンルにて世界最多の出資金額を集める。
アニメシリーズ/3DS版『モンスターストライク』 のストーリー・プロジェクト構成を担当する。
2016年1月より放映されるTVアニメ『ブブキ・ブランキ』にシリーズ構成・脚本(北島行徳氏と共同)として参加する事が発表されている。
代表作は『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』(監督/チュンソフト)、『428~封鎖された渋谷で~』(総監督/チュンソフト)、『TRICK×LOGIC』(企画・プロデューサー/チュンソフト)、『タイムトラベラーズ』(ディラクター/レベルファイブ)など

http://qreators.jp/qreator/ishiijiro

もこう

もこう/ゲーム実況者
2009年5月ニコニコ動画にてデビュー。
代表作 「厨ポケ狩り講座」はミリオンヒットを達成。
その他、「歌うたい」としての歌手活動や「料理動画」など、
様々なジャンルで活動をつづけている。

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