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世界の頭脳を目指す企業メタップスが語る“人工知能”の現在とこれから

2015.11.2

Metaps

人工知能(AI)の開発が急速に進んでいる————。
これまで人間にしか成し得なかった知的作業がAIに移行されるなか、私たちはその進化をどのように受け止めればいいのだろう。

名だたる企業がしのぎを削っている人工知能分野のいま、そして今後について、著書『未来に先回りする思考法』でAIと人間の関係について独自の視点で論じるメタップス代表取締役の佐藤航陽氏と、Googleや楽天などの企業にて執行役員を歴任したIT批評家の尾原和啓氏に語ってもらった。

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AIの開発による人間の価値の変化

————最初に、人工知能の分野でお二人が注目している企業はございますか?

佐藤 人工知能の分野でもあり、人間が知識を得る過程をコンピュータ上で実現させる技術「機械学習」は、応用可能なものが無限にあり、どの企業がやるかによって社会への浸透スピードが違ってくると思います。
そういう意味では、Facebookに注目していますね。彼らが持つ情報からは人の感情を理解できるので、Googleも未知の領域の情報を持っているのかなと思います。
最近、『いいね!』ボタンを拡張したリアクションボタン機能を導入することも発表したり、メッセンジャー上でAIを活用した「M」も試験運用を始めたり、AI分野ではキーマンになる企業だろうと思います。

尾原 実際、Facebookは売り上げの1/3をAIを中心としたR&Dに投入すると発表してましたね。
僕は、トヨタに注目しています。トヨタはAIに60億円つぎ込むということで、アメリカの軍事技術の研究所からロボット工学の権威を引き抜いてきたんですよ。
それもすごいことなんですけど、もっとすごいのは無人運転をやらないって宣言したこと。
なぜかというと、トヨタの社是は「FUN TO DRIVE」。つまり運転を楽しむことを伝えるのがミッションなわけで、その観点から言うと「無人で車を走らせて何がおもろいの?」ということなんですよね。
もちろん安心安全な自動運転システムは開発していくけど、やっぱり人と機械が協調して、楽しみを増やしていく行為を追求していきたいということを言っている。
これって、AIやテクノロジーによって、すべてが自動化されたあとに人間に何が残るのかという議論にも通じることだと思うんです。

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————これまで人間にしかできなかった仕事も、AIが取って代わるとも言われていますよね。

尾原 オックスフォード大学による研究では、米国労働省のデータに基づく702職種を分析したところ、今後10年から20年の間に起きるAIやITの進化によって、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結果が出ています。
問題は、それが現実になったときに、逆に「我々は何をしたいんだっけ?」ということ。
たとえ機械が最適化したとしても、「自分はこれがしたい!」っていう嗜好性やこだわりが最後の財産になると思います。

佐藤 結局、モチベーションとかやる気とかって、生物独特のものですよね。
そもそも「何かやりたい」とか「誰かとしゃべりたい」とかっていう欲望を機械がプログラムする意味はないわけで。
なので、尾原さんがおっしゃるように、「何か作りたい、表現したい」という感情が、最後人間に残るものかなと思っています。

尾原 そうですね。

佐藤 あと、AIによっていろいろなものが自動化されると、人間の価値ってどうなるんだっていう議論があります。
でも、「価値ってなんだっけ?」って問いたださないといけないと思うんです。
価値っていう考え自体が、キャピタリズム(資本主義)特有のものですからね。

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労働から解放されたとき人間に残るもの

————確かに、資本主義社会では「お金を稼げる人=価値ある人」という認識が固定化されているように思います。

尾原 「人は付加価値を出さなくてはいけない」っていう誤解を植えつけられていますよね。
その誤解を増幅させるために、「働く」というルールで勝ち抜こうとしているのが、今のマネーキャピタリズム。
でもそれって、たかだか産業革命以降の300年くらいのことですからね。

ちなみに、僕は最近バリ島に引っ越したんですけど、マネーキャピタリズムとは真逆の世界です。
南国なので陸には木の実がたくさんあるわ、海の幸も豊潤なので飢えることはありません。酔っ払って道ばたで寝てしまっても、凍え死ぬこともないわけです。
バリ島に住む人の平均月収は1.5万円ですけど、1年間のうち200日はお祭りをやっていて幸せな生活を送っています。
グローバルな視点に立ってみると、マネーキャピタリズムから、バリで営まれているような社会に戻ろうとしているんじゃないかと思うんですよね。

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————お金の呪縛から解き放たれると、いまのような働き方を選ぶ人は少なくなりそうですね。

佐藤 そもそも貴族って働いていませんでしたよね。
それは、執事などが存在していたからできたんですけど、これからはパーソナルアシスタントとして、AIやロボットが代替してくれるわけです。

尾原 とある統計では、自分の仕事が好きだという人は18%ですからね。
残る82%は今の仕事が嫌いなわけで、仕事がなくなることはむしろ喜ぶべきことだと思いますよ。

佐藤 生活と資本が分離されても生きられるという仕組みができれば、たぶん誰も働かないと思いますけどね(笑)。
そうなると、人間ってどうなるんでしょうね。

尾原 そういう時代を迎えたときに、日本に勝機があると思うんですよね。
任天堂しかり、カラオケなどにも代表されるように、日本人って遊びを作る天才だと思うんですよ。いまでもスマートフォンのゲーム市場の3割は日本なんです。
人間が何もしなくてよくなったところに、遊びを作るっていうのは日本にとって有利な社会だと思うんですよね。

佐藤 結果的にクリエイティビティが、ビジネスにつながることになりますよね。

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————具体的にその仕組みというのは?

佐藤 衣食住など最低限の生活を保障する「ベーシック・インカム」が、まさにその仕組みですよね。
それを政府が提供するのか、はたまた企業がサービスとして提供するのかという違いはあるかと思いますが、ロボットによる自動化が進んでいくと生活費も減少していきます。
企業は自動化で生まれた収益を福利厚生として社員に提供していくこともできます。

尾原 たとえば、今Googleのサービスってほとんど無料で使えますよね。
もっと付加価値を生めば、Googleが家をくれるかもしれないんですよ。
なぜなら、Googleの家に住めばそこで生活する人のニーズ情報がストックされるわけです。
そうすると「この商品買いません?」と家の中でアラートがあって、「ちょうど無くなってきたから買おう」となるわけです。
そうするとそこに企業の収益が生まれる。つまり生きるという行為自体がGoogleにとって付加価値になるので、無料で家を提供してもおかしくないですよね。

佐藤 いまその話を聞くと突拍子もなく聞こえると思うんですけど、たとえば今私たちが使っているインターネットサービスって、ほとんど無料じゃないですか。
この現状は、サーバーが出来たての頃、数十億していたときにはありえないことですよね。
でも10年近く経ってみて、少額のコストでサービスを運用できるようになったので、将来的には適応されていくのだろうと思います。

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マネーキャピタリズムを打破していく

————最後に、今年8月に上場されたメタップスですが、今後のビジョンをお伺いできますでしょうか。

佐藤 私たちが掲げているビジョンは2つあります。
まず1つは、「情報」。空間も時間もすべてを知りたいということなんです。
それを原動力に、あらゆる産業や業種に対して事業を拡大していき、極力多くの情報を拾っていきたいなと思っています。

もう1つは理想の部分ですが、「メカニズムはこうだけども、こうあってほしいよね」ということを追求していきたいです。
まずは、テクノロジーでお金の在り方を変えたいと思っています。
必ずしも資本というのは生活レベルで必要なものではないんじゃないか、むしろ資本から解放した方が、大多数の人が嫌な仕事をやるより、はるかにいいと思うんです。
もっと効率的な世界にしていこうという理想を実現させていきたいと思っています。

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————尾原さんはメタップスにどのようなことを期待されていますか?

尾原 やっぱりお金を壊してくれそうなところでしょうか。
マネーキャピタリズムって明らかに破綻していて、次のゲームに入り始めています。
きっと佐藤さんは、その次のゲームを作ろうとされていると僕は思っているので、そこに期待しています。

Interview/Text: 末吉陽子
Photo: 大根大和

尾原和啓

おばら・かずひろ/Fringe81執行役員/執筆・IT批評家/Professional Connector
京都大学院で人工知能論を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を歴任。現在12職目 、バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Man Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。
著書 「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)はKindle、有名書店一位のベストセラー
前著「ITビジネスの原理」(NHK出版)も Kindle 年間ランキングビジネス書7位のロングセラー
   韓国語、中国語版にも翻訳されている
*15/6/11 Kindleランキングにて、書店はABC六本木、渋谷Book 1st 6/15調べ
*:14/8/30 ランキングにて、年間でも2014年Kindleビジネス書7位
■「ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?
■「ITビジネスの原理
■「静かなる革命へのブループリント
TWITTERhttps://twitter.com/kazobara

http://qreators.jp/qreator/obarakazuhiro

佐藤航陽

さとう・かつあき/早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立。
2011年よりアプリ収益化プラットフォーム「metaps」をシンガポールで開始し、現在では、世界8カ国に事業を展開。サービス導入アプリは累計20億ダウンロード突破し、世界2億人のアプリユーザを支えるインフラに成長させる。2014年より手数料無料のオンライン決済「SPIKE」の立ち上げに従事。
2015年に43億円の資金調達を実施。同年8月に、マザーズ上場。

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