数学の『統計』がセクシー!? 今もっとも熱い職業「データサイエンティスト」とは

2015.11.2

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コペルニクスの学校』は「教科書で学んだことは大人になったら使わない」を180度変える新しい学校。大人も子どもも一緒になって学びます。
今回は高校生、エンジニア、政治家、東大教授がみんな生徒になって数学の「統計」についてビジネスの世界で活躍するデータサイエンティストの西山さんの授業を受けました。

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データサイエンスとは

西山 米グーグル チーフエコノミストのハル・バリアン氏をもってして「21世紀の最もセクシーな職業」といわれているデータサイエンティストですが、一体どういう職業なのか皆さんご存知でしょうか。
実はデータサイエンティストの正式な定義というものはありません。
というのもデータサイエンスの範囲というものがあまりに多岐にわたりすぎていてそれらをすべて1人で網羅できるような人間はなかなか存在しないからです。
データサイエンスを行うための必須スキルとしては統計学、データマイニング、機械学習、人工知能、ビッグデータを扱うためのエンジニアリングスキルなどが挙げられますが、上記すべてをマスターしているようなスーパーマンは世界中探しても実はほとんどいないでしょう(笑)
実際の現場ではそれぞれの分野でそれが得意な人が集まりチームとしてデータサイエンスを行っているという感じです。

今データサイエンスはバブル期!?
西山 現在、ビッグデータやデータサイエンスはビジネスの世界の一種の流行となっています。もちろんそのおかげで仕事が増えるのは嬉しいことなのですが、一方で世間の期待と実現可能なこととの乖離が大きくなってしまっているという事実もあります。
インターネットの世界ではログという形でなにもしなくても大量のデータが日々貯まっていきます。
ある時、顧客から「これだけデータがあるんだから何かしてよ」というようなことを言われたことがあります。
さすがにこれだけの指示では何もできません(笑)
「このデータを使って〇〇を知りたい!××について予測したい!」という明確な目標があって初めてデータサイエンスは役立つ分野なのです。

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金儲けは悪か?

西山 データサイエンティストと呼ばれているもしくは名乗っている人の特徴として技術的な部分に対して興味がある人はすごく多いです。
しかしその反面その技術を社会にどう生かすのか、マネタイズさせるのかという部分を考える人がとても少ないように思います。
要するに「お金儲け」よりも「技術極めたい」系の人が多いんですね。

東大教授 それは大学の先生たちにも問題があると思います。そもそも大学の先生たちにビジネス的な考え方をする人が少ないから日本の大学生にもビジネスにつなげる発想みたいなものを教えることができないんじゃないでしょうか。

尾崎 たしかに日本は大学に限らず高校や中学でも同じようにビジネスの視点を伝えられる先生は少ないかもしれないですね。

東大教授 アメリカではどうなんですか?

西山 似たような問題はあるとは思いますが、日本に比べるとはるかに軽傷だと思いますね。アメリカは国策としてそういった起業家を支援するような体制がありますし、アメリカの西海岸などは日本に比べて起業したいという人が活躍できる場が多いです。その上起業したいという人の母数自体も日本と比べるとはるかに多いです。実際に西海岸ではそういった環境のおかげか新しいイノベーションがどんどん起きてきています。
日本人は民族的趣向としてお金儲けより技術を極めたいという人が相対的に多いのかもしれないですね、あとは社会慣習やビジネスの世界の慣例などが向かい風になっているのかなと思います。

東大教授 なるほど。では日本もアメリカのように起業家たちにチャンスを与えるような環境になればもっとイノベーションは起きますかね?

西山 正直、難しいと思います。
いくら環境が整ったとしても技術をビジネスにつなげる発想法みたいなものは高校生くらいの時から植え込んでいかなければ身につかないのではないでしょうか。

尾崎 確かに。講演などで高校に行かせていただく機会が多いのですが、高校生たちを見ていると『お金儲けは汚い』っていう発想の子が圧倒的に多いですよね。その感覚は払拭していかなければなと思っています。

高校生 僕も確かに「お金儲け=良くない事」というイメージがありました。生活していく上で必要な額のお金があれば十分ではないのかなと。必要以上にお金を稼ぐとその分だけ誰かが損をしているのではないかと考えた時期もありました。

西山 さきほど申し上げた通り現在のインターネット社会はデータが勝手に貯まっていく仕組みなんですね。しかしその貯まったデータをどうすれば価値に変えられるのかわからないという状況が非常に多い。
僕が考えるデータサイエンティストの最大の役割は、その貯まったデータから価値を生み出すことです。
0円だったところに価値を生み出す。
それは誰かから奪ったものではなく何もしなければ無価値のところに価値を発生させている、産業創出しているということです。
価値のなかったところに価値を生み出して社会へ還元するという意味では、このようにして儲けたお金は全然恥ずべきことではないと私は思います。

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このデータどう思いますか?

西山 極論ですが、これからのビジネスはすべてITになると思っています。
今や農業ですらITを使って経営を行っている時代です。
ですのでこれから先のビジネスにはITのビッグデータを読み解くため統計学の知識は絶対必須スキルになってくるでしょう。
ところでみなさんは統計学にどんなイメージを持っていますか?
統計学は数字やデータを扱う学問だから客観的で定量的というイメージがありませんか?
実際にはどうでしょうか。
以下の例を見ながら一緒に考えていきましょう。

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日本国民の平均年収
西山 皆さんは日本国民の平均年収はいくらぐらいだと思いますか?
これは国税庁が発表している公式の統計データが存在しています。
日本国民全体の平均年収は約414万円です。
男性だけで見ると平均年収は約511万円となっています。
これは皆さんの予想よりも高いのではないでしょうか。
なぜ正しいデータの平均をとっているのにこのような事が起きるのでしょうか?
原因は分布の形にあります。
実際の年収と人数の関係は図1のグラフのような形になっています。
実はこのような形のグラフの場合、平均をとると年収が多い方へ引っ張られてしまい実際には最も人数が多い年収300万円台より高い年収が平均年収となってしまうのです。

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円グラフ:警察官の世代別懲戒処分の割合
西山 図2は警察官の世代別の懲戒処分の人数を円グラフにした結果です。

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西山 さてこの図を見て皆さんはどのような感想を抱くでしょうか?
若い人に懲戒処分となる人が多いなと思いますか?
実はこのグラフには大きく分けて2つの問題点があります。
1つ目は分類の仕方がおかしいです。
年代別としているにもかかわらず10代と20代が合算されてしまっているところです。
これでは他の世代と比べて偏りが出てしまうのは当然ですよね。
2つ目はそもそも中心点がずれていることです。
円グラフというのは通常、円の中心から分割していくものですがこのグラフは意図的に若い世代が多く見えるよう中心からずれた点を起点にして分割しています。

棒グラフ:軍事費の推移
西山 図3はある国の過去10年間の軍事費の推移を表したグラフです。

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西山 このグラフを見ると軍事費は年々とても増加しているように見えます。
しかし、やはりこのグラフも意図的に増加している割合が大きく見えるよう編集されています。
縦軸の始まりの値に注目してみてください。
普通であれば軸の始まりは0であることが多いのでパッと見ただけだと0から始まっているように思ってしまいますがこれは4兆円から始まっています。
ちなみにもし縦軸の始まりを0として書き直したグラフが図4になります。

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西山 どうですか?
軍事費の増加はありますが、さきほどの図3の時とは違ってそれほど急な増加という印象はないのではないでしょうか。

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統計データに騙されないために

西山 色々な例を見てきましたが統計学の定量的で客観的というイメージは変化したでしょうか?
結論を言えば統計学という学問はデータを整理してどう見せるかという学問であり、言い方を変えればどうとでも見せることができるとも言えます。
同じデータでも見せ方を変えればなんとでも言えてしまうという世界なんですね。
みなさんにはこういった作成者の意図が多分に含まれたデータに騙されずデータの本質を見極められるようになっていただきたいと思っています。


「数学的思考は研究職やエンジニアになる人だけが必要なスキルではありません。理系も文系も関係なく、数字を読み解く力はこれからの社会で生きていくために不可欠です。今回の授業を一緒に企画をしてくれた政治家の近藤美保さんも「政治にもっと客観的データをいれる必要がある」と話しています。これからも数学に限らず「教科書」と「世の中」をリンクさせる授業をどんどん行っていきたいと思います。」とコペルニクスの学校の校長を務める尾崎さん。
学校教育に新たな風を巻き起こしてくれることを期待したいですね。


クリエーター尾崎えり子さんが主催する「コペルニクスの学校」特別イベントが12月27日(日)13:00〜15:00@南青山にて開催されます!
イベント詳細はこちら→http://ozakieriko.jp/?p=1810

Interview/Text: 横田亮介
Photo: 保田敬介

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尾崎えり子

おざき・えりこ/1983年生まれ。
株式会社新閃力 代表取締役
NPO法人コヂカラ・ニッポン副代表
流山市子ども子育て審議委員
早稲田大学国際寮グローバル人材育成プログラム講師
JSBN未来塾講師
市進ホールディングス社長特命アドバイザー
学研教育出版アドバイザー
香川県出身。
早稲田大学法学部卒業後、経営コンサルティング会社に入社。
営業とし4年間で2度優秀社員賞を受賞。
結婚を機にスポーツデータバンク(株)へ転職。
企業内起業でキッズスポーツクリエーション(株)の設立に参画。
第一子の育児休業から復職後、代表に就任。
第二子育休を機に退職し、株式会社新閃力を設立。
今までビジネスの戦力外だった「子ども」の力で
企業の新事業・商品サービスを成功に導くプロデュース事業を展開。
二人の子どもを育てるワーキングマザー。

http://qreators.jp/qreator/ozakieriko

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