「自分の居場所は自分で作ればいい」大切なのは人のせいにせず、自分で考え動くこと

2015.11/1

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Qreator Agentが、TBSテレビのトーク番組『オトナの!』を手がけるバラエティプロデューサーの角田陽一郎さんをファシリテーターに迎え、様々な創造者とトークをする「クリエーターズ・バラエティ・セッション」。

記念すべき第一回目のゲスト講師は、株式会社リバネス 代表取締役CEOの丸幸弘さん
丸さんの起業をしたきっかけや、最新の科学技術、はたまた将来のビジネス像まで、様々な角度から“バラエティ的”にトークセッションを行いました。

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起業の理由は「研究者の未来が見えなかった」から(丸)

角田 まず、ぶっちゃけて聞きますが、何をやってる方なんですか?(笑)

 僕、一貫してですね、地球のレスキューをしたいと思っているんです。

角田 先生、すごいことしてるんですね!

 でしょ? 生命科学という分野で、生き物の力を利用して環境をよくしたいっていう、環境生命科学に非常に興味をもっています。
大学時代は、その気持ちをもって、研究者になろうと思ってたんですよ。

角田 でも、実際には大学の研究者にはならなかったんですね?

 そう、僕自身はならなかったんですよね。
大学時代、将来はずっと研究者であり続けたいと思って、東京大学に移ったんですよ。末は博士か大臣か。
夢のある研究で地球を救うぞ、って思ってたんです。格好いいでしょ? ここまでは。
でも、東大に行って課題があったんです。それは、「研究者の未来が見えなかった。」

角田 未来を作るために研究者の道にいったのに研究者の未来がみえなかったんですね(笑)。

 そう、全く見えない。
その大きな2つのポイントとして、博士号取得者が就職難に直面してる、いわゆる「ポスドク問題」と「理科離れ」です。

角田 どういうことですか?

 当時、東大は天才の宝庫だと思って行ったんですよ。そして、実際に天才がいるんです。
でもね、天才が暗いんです。ある日、先輩に「どうしたんですか、先輩、天才なのに」って聞いてみたんです(笑)。そしたら、「天才だけど働く場所がない」って言うんですよ。
何を言っているかというと、少子化によって大学の数が減ってくると、教授のポストも減るじゃないですか。
そうすると天才同士の勝負が始まるんです。100人いた天才が5人しか教授になれない。

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角田 残りはどうするんですか?

 天才だけど教授になれない95人はフリーターです。
野球の選手を考えてみると分かりやすいですね。1流になるのは数パーセントです。
でも、それは仕方ないので、企業で働こうと思いますよね。でも、企業で面接受けても「扱えない」って働かせてくれないんです。

角田 え、なんでですか?

 気持ち悪いくらい天才なんですよ。
だから、上司が「俺は学部卒で文系だから扱えない、無理です」って採用されないんです。

角田 つまり、研究者はその能力が活かされていないってことなんですか。

 そうなんです。つまり「ポスドク問題」によって、行き場のない天才がたくさん集まっているのに、研究ができなかったんです。

角田 なるほど。

 もう一つ、地球を救いたいと思ってたくさん研究をしてきたんだけど、どうやら最近理科離れが起きているぞと。
これから僕と一緒に仕事をしてくれる未来の仲間が見つからない未来なんて最悪だと。
それで仕方なく、自分の居場所は自分で作ろうと思ったんです。

角田 昨夜このパワポを見せてもらって、この「自分の居場所は自分でつくるしかない」という部分に、「なるほど~丸さんおもしれぇ」って思ったんですよね。
精神論になっちゃうんですけど、自分の居場所は自分で作るしかないってことに気づいている人は少ないです。「なんで居場所くれねえんだ」と怒っている感じの方が多いですよね。
「自分の会社はブラック企業だ」って言うけど、だったら辞めればいいじゃん、って僕なら思っちゃう。
なんで人のせいにするのかなって、ずっと思ってるんですよ。

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 考えない方が楽だからでしょうね。
今の時代、考えなくても飯は食えるし、考えなくてもエスカレーターに乗るように生きていけるし。
それに、辞めたら辞めたで、何もできないから辞められないんでしょうね。

角田 そういうことですよね。

 また、さっき話した通り、大学には気持ち悪いくらいの天才がいるわけです。
話すのは苦手な人たちなんだけど、話の内容を聞くと、すごい研究してて感動できるんですよ。
こんなに財産があるのに、その人が伝えるのが苦手なんだったら、僕が理解して代わりに伝えよう、テクノロジーを世に広めようと思ったんですよね。

「丸さんはサイエンス業界のジャニーさんですか?」って言われたりするんですけど(笑)、そんなつもりはなくて。
研究者がそれぞれもってる知恵と、ほんとは研究をしたいという熱をもっている研究者の仲間たちがここにいるなら、一緒になって自分たちの場所作ろうぜ、って言ってるだけなんですよ。
そのプラットフォームとしてリバネスがあって、「You やっちゃって」って言ってるんです(笑)。

角田 だから顧問になってるんですね。

 そうなんです。僕がやっちゃってるんじゃない。僕は「やっちゃって」って言ってるだけなんです。
世の中は「気をつけろ」「こけたら死ぬぞ」って言って止めようとするんですけど、僕は彼らが研究することを止めずにやらせてあげるんです。
やるしかない環境を用意することで、僕らの場所を作ってるんです。

角田 リバネスの由来と関係しているんですね。

 そう。リバネスは、「Leave a Nest」。巣を離れるという意味です。

角田 なるほど。じめじめして暗いところにいる研究者を巣立たせる。

 そう、コンセプトはそれだけです。
だから、子供の教育や研究者の育成から、研究のビジネスのプロデュース、最近は投資をしたり、こういう場で一般の人とディスカッションしたり色々とやってます。だから、何屋かって言われると難しいですね。

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僕はね、本質的なところにお金がいかない世の中に怒ってるんですよ(丸)

 研究もクラウドファンディングで始める人が増えました。ただね、お金が集まらないんですよ。
それで、予算がないと研究ができないから、結局お金が集まりやすい大先生の下に集結するしかないんです。
でも研究期間が終わると、大先生は有名になっているけど、その下にいた研究員はすっかりなまってしまっていて、自分の研究ができなくなってしまう。これをすごくジレンマに感じていました。
だから、僕らの会社では「リバネス研究費」といって、お金を配っているんです。
合コンに使っていい研究費は世界初です。領収書のいらない研究費も世界初です。民間で全ての分野に配りまくっている研究費でも世界初です。

角田 それは、世界変えますね。

 変えますよ。たかだか何千万なら安いものです。
僕はね、本質的なところにお金がいかない世の中に怒ってるんですよ。ほんとは超イケイケの研究してるのに、なんでこの先生に研究費がいかないの? って思うんです。
彼らが口下手だから、書類を書くのが下手だから、コミュニケーションがあまりとれないから、って理由で研究費がおりないのはおかしい。
キラリと光る部分にお金を出し続けたい。僕、いいことしてるでしょ?(笑)

角田 いいことしてるし、いいことしてるって顔してますよね(笑)。

 そう、だから毎日楽しいですよ。

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近い将来うんちを食べる時代が来る?

角田 こちらに、丸さんが今注目してるものをあらかじめ聞いたものがあります。


 
藻類(光合成)、腸内細菌、新エネルギー(風力、太陽光)、アバターロボット、ゲノム・エピゲノム、生物工場、バイオミミクリー

 これらは、いま僕がはまっているやつですね。全部面白い。これだけで悦ですよね、普通の人は。あれ…?ならないですか?(笑)。

角田 ならないです(笑)。

 いや、笑いますけど、これからうんちを食べる時代がきますよ。
うんちを食べるっていうと汚い感じしますけど、腸内細菌はすごいですよ。

角田 腸内細菌のどこにはまっているんですか?

 僕、食べ物のイノベーションが起きると思ってるんです。
紀元前100年頃に納豆食べる時代、21世紀にはミドリムシを食べる時代がきましたよね。
同じように、近い将来うんちを食べる時代が来ると思ってるし、もっと言うと、人肉を食べる時代も来ると思っている。

角田 ええぇ。

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 面白いでしょ? うえぇって言うじゃないですか。でも納豆を食べる時代がきたときも、うえぇって思ってたはずなんです。実はすでに時代は追いついています。
皆さん、IPS細胞って知ってますか? 細胞が試験管の中で作れることができる技術です。作った細胞をどんどん増やして、最後にきゅっと固めたらどうなると思いますか?

角田 ……それはもう、肉ですよ。

 そう。好きな女の子のお肉も食べられる時代がきます。

角田 ハハハ(笑)。

 これを大まじめに研究している人がいるんです。
世の中には約3500万円のハンバーガーを作った人もいるんですよ。彼は言います。「牛を一頭育てるのにどれだけの木を燃やしてるか知っていますか?」って。
人口が100億人になったら、今のままでは牛肉を食べられなくなりますよ。でも、牛肉を食べたいなら牛を培養すればいい。そのエネルギー効率を計算すると、牛を一頭育てるときの資源消費量の100分の1くらいになるといわれているんです。
最近では、細胞培養コストをこれまでの10000分の1くらいに下げる研究も進んでいます。科学者ってすごいでしょ。

角田 へー!

 ごめんなさい、倫理は一回置いておいて、って話なんですけどね。

角田 いいんですよ。「大丈夫なんですか? 倫理的に」なんて言ったら面白くないですからね。

 やっぱりバラエティ的に話せるのは嬉しい。学会なんかで言ったらコテンパンですからね。

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グーグルよりも先に行く?頭の中にある検索できない情報の価値

――丸さんは、どうやってご飯食べられてるんですか?

 どう稼いでいるってことですか?

角田 さっき楽屋でこそっと聞いたら……死ぬほど稼いでいるみたいですよ(笑)。

 お金を稼いでいる構造としては、伝えることが苦手な研究者と、そういう技術を求めている企業を、僕がつなぐという形ですね。化学反応でいうと、触媒の役割をすることでお金をいただいています。

角田 翻訳者としてお金をいただいている、ということですね。

 そうですね。なかでも企業の新規事業のネタをコミュニケーションする、という仕事が多いです。つまり、今ってどこの企業も新しい事業のネタが欲しいんですよね。
みんな新しい発想がないんだけど、新しいことやらないとつぶれちゃうってことが計算上わかっているという状態。どうやって新しいことをやるか、というところが世界の課題なんです。
だから、今の僕の事業に対して、かなり問い合わせがきます。そして僕が解決策を一緒に作っていく。それでご飯を食べています。

角田 そういう企業の問い合わせって、「何か面白い先生いませんか」っていうのが多いんですか。

 いや、「丸ちゃんどうにかして」っていう感じですかね。

角田 発想の段階からなんですね。それはお金になりますね。

 そう、そして僕はその企業に「会議」を売っているんです。「レポート」は売ってないんです。パソコンもってないんで。

角田 言ってましたね、パソコンないって(笑)。

 その企業に行って、どんな課題あるんですか、って聞く。
そして、今やっている事業の内容とかを聞きながら、課題を紙にばーっと書いてみる。
その課題を解決できそうな大学の先生を探して、今度この大学に行って、このようなディスカッションを行いましょう、予算はこれくらいですね、というような流れですね。

角田 なるほど。

 こういうことを手品師のようにできるのは、パソコンを持ってないからです。知識は全部頭の中に入ってるんです。グーグルには、頭の中が見えないんですよ。
だから僕はグーグルの先にいきたい。これからは、人の頭の中にだけあって検索しても出てこないことを、みんなが買う時代になりますよ。

角田 検索できない情報ですか?

 情報は無料になって、知識だけがお金になります。検索しても出てこない知識がお金になる。
だから僕はみんなに、とにかく初めてのことを集めなさい、それを脳にためなさい、それを話せるようにしなさい、と言います。それがビジネスになるわけです。

角田 今の話ってテレビにも当てはまりますね。いい番組を作ろうと思うけど、結局いいものって新しいものしかない。新しいものが話題になる。
ちなみに、新しいものって2種類あると思ってるんです。ひとつは、本当に新しいもの。ただ、ほんとに新しいものってなかなかない。見つけたらビジネスになるし、めちゃくちゃ金になる。
もう一つは「何か」と「何か」の組み合わせ。これで新しいものを作るっていうのは無限にある。先生は、研究者と企業をつなげるということで、その組み合わせをやっているわけですよね。

 そう、それが僕らの言う「知識製造業」のことです。よく「それはコンサル事業なんじゃないの?」って言われるんですけど、違うんです。僕たちは作っているんです。パソコンないので、コンサルみたいな書類作れないですしね(笑)。

角田 アハハ(笑)

 頭の中に浮かぶものをぱっぱっぱっと書いていく分には、紙と鉛筆があれば十分ですよ。自分の感性に最も訴える道具です。みなさん絶対に紙と鉛筆を手放さない方がいいですよ。何か悩んだら真っ白い紙の前でじーっと考えてみてください。脳みそに浮かぶものを書く。それはどっかで見たものでいいんです。頭に残っていたということが、自分への信頼性なんですよ。その信頼性を組み合わせることがビジネスになります。
だから僕は、パソコンも持っていないしノートにメモもとらないんです。その場に行って、感性で降りてきたものをばーっと書きます。

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会場からも質問が飛び交い、終始笑いの絶えない活気的なトークイベントでした。
初対面の二人は意気投合、次は面白い研究者をゲストに2回目をやりましょう、なんてアイデアも。
起業を考えるためだけではなく、今後の自分の働き方を考えていく上でも、とても刺激的なトーク内容でした。
ぜひ今後のご参考にしてみてくださいね。

Interview/Text: 園田菜々
Photo: 栗原洋平

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角田陽一郎

かくた・よういちろう/バラエティープロデューサー・TBS「オトナの!」プロデューサー
TBSテレビ メディアビジネス局スマートイノベーション推進部兼制作局制作一部所属。1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSにテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、映画『げんげ』監督、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在は、いとうせいこうとユースケ・サンタマリアがMCを務めるオトナのためのトーク番組「オトナの!」を担当している。成功の神はネガティブな狩人に降臨する――バラエティ的企画術に続く、新作著書「24のキーワード」でまるわかり! 最速で身につく世界史が絶賛発売中の他、水道橋博士が編集長を務める有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』で「オトナの!キャスティング日記」を好評連載中。

http://qreators.jp/qreator/kakutayoichiro

丸 幸弘

まる・ゆきひろ/サイエンスブリッジコミュニケーター®。株式会社リバネス代表取締役CEO。農学博士。
1978年、神奈川県横浜市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。大学院在学中の2002年6月に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。ユーグレナ技術顧問など、多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わるイノベーター。
著書に『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)がある。

http://qreators.jp/qreator/maruyukihiro

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