生き残るベンチャー企業がすべき、21世紀の「PR」とは?

2015.10.28

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ベンチャー企業にとってPRはなぜ大事なのでしょうか?
これから求められている企業、そして経営者個人のPRの重要性を鼎談形式で紐解いていく。

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0→1の部分が本質的だからこそPRの効力を発揮できる

佐藤 今回は、PRを専門とする株式会社マテリアルの代表の東 義和さんと、お部屋“探され”サイトを運営する株式会社ietty代表の小川泰平さん、そして私で鼎談という形でお送りしたいと思います。

まず東さんにお聞きしたいのですが、PR会社が提供するPRってどんな感じでやられているのですか?

 一般的にはコミュニケーション戦略を作り、それをもとにメディアに露出することと思われていますが、でもそれ以上に、本来どうあるべきかを定義してあげる必要があると思っています。それは、企業としても、事業としても、こうだと。

佐藤 なるほど。その点で、iettyの小川さんはどうでしょうか。事業会社として、今までどのようなPRをされてきましたか。

小川 僕たちがPR・広報に一番取り組んできたことは、資金調達フェーズでしたね。
それはto Bでやってきたんですけど、東さんが仰るとおり、これから力を入れていくのは、企業がどういう価値を提供できるかを伝えるところだと思っています。

特に、ベンチャー企業は新しい価値や考え方を世の中に提供することでユーザーとか法人のファンを作っていかないといけないですよね。
そこに、僕らで言うと、ユーザーファーストを企業の価値基準にしていて、そのキーワードがしっかり伝わるようにしたい。
そのために会社の本質的なところで、僕ら自身がユーザーファーストの会社になるために、社員教育などを見直したりしています。

佐藤 この前の東さんとトークイベントに出た時も話したのですが、そして最初からこのトークの結論になってしまうかもしれませんが(笑)、PRは今あるものをどのように世の中に伝えていくのかが大事で、0から1になったものを1から10や100にする過程で、0→1が本質的でないとPRの効力が発揮できない
もし本質的ではない企業やものをPRしても、ブログやTwitter、Facebookなどのソーシャルメディアの時代なので、すぐにばれてしまうんですよね。

小川 まさにそうですね。資金調達がうまくいってニュースになったり僕がイベントに出たりすれば、ある程度は名前が出ますが、会社の理念だったり本質的な価値が先にないと、とは思いますね。
そのため、今さら0→1のところをしっかりやっている気がします。

 小川さん、それ気づくのがめちゃくちゃ早いですね。僕はそこを10年くらいかかってやってますよ(笑)。

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PRは露出量がゴールではない

 ほとんどの企業が、大量に露出をしたいということが目的になっていて、そこに何を伝えたいか、それによってどのように企業が思われたいか、深く考えられてないんですよね。
もしかすると、それは大企業の方が多いのかもしれません。

佐藤 では、スタートアップ界隈の企業が知名度を増やしていくことはどんなメリットがあると思いますか?

小川 Webサービスなら、1つはユーザーの獲得に寄与しますよね。あとはファンドなど、投資家へのアピールにもなります。

佐藤 ベンチャー企業って最初から社内に広報担当がいなかったりするじゃないですか。立ち上げて最初の1〜2年目はどうしているんですか。

小川 最初は代表の役割が大きいですよね。イベントでしゃべって、名刺を配って……と、プロダクトと自分(代表)が一緒みたいなところがあります。

佐藤 それが組織が大きくなるとぶれていくことって多いですよね。
ソフトバンクの孫さんみたいに、顔と会社が一致しているところもありますが、そういった会社は大きくなってもベンチャー的だったりします

小川 その意味で、何で僕らがまた0→1のところをしっかりやりはじめたかといえば、今までであれば、社長のキャラクターや本を出したりすればいけたところはあるのですが、スタートアップ界隈以外の僕に対して興味がない方へリーチしていくためには、プロダクトの本質的な価値や会社としてのメッセージが強くないとダメなのかなと思っています。

佐藤 僕は以前、吉本興業にいたんですが、芸人さんでずっと売れている人と、すぐ売れなくなる人と、そもそもまったく売れない人がいました。

まず、長く売れている人や一瞬でも売れる人は、何かしら良いものを持っていて、それはルックスだったり、一発ギャグが面白かったり、本質的な部分で人を楽しませたいという人もいて。
そして、やっぱり0→1のところがしっかりしていて……そう考えると、人と企業も似ているところがあって、「この人は何をやりたいんだっけ?」っていうのを持っていないと段々とずれてきて、結局わけがわからなくなってしまうんですよね。

それってPRってところから考えても同じかなと思うんです。

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お金儲けだけが目的の会社に優秀な人は集まらない

 最近顕著だなと思って見ているのが、ソーシャルゲーム業界ですね。
プロダクト重視の会社が多く、常にプロダクト勝負の戦いをしないといけないということが、ブランディングの観点からいくと断片的になっていると思います。
その結果、会社としてのオリジナリティが薄くなってしまう。

従来のゲーム業界、例えばスクウェア・エニックスさんが提供しているRPGなどは、彼らが発表するゲームごとに期待感があるし、それと同時に会社への期待感もある。レベルファイブさんもそう。
何かやってくれるという期待感が、企業に対しての期待感に醸成されている
それは、露出という観点ではなく、何が大事か伝えていく根幹の部分が大事になってくると思います。

佐藤 それでいうと、iettyさんがPRを大事にしたのっていつ頃なんですか?

小川 正直なところ最近で、一時期は何でもいいから売上を上げようと思って、理念とかは一旦置いておいて、マネタイズに走った時がありました。
その際の社内のモチベーションの低下とか離職率の高まりとかはすごくて、社員が誇れる理念がないといけないなと強く感じました。
それに会社にファンがいないと採用もできないんですよね。お金儲けだけが目的の会社に優秀な人はやってきません

だからこそ、ユーザーファーストの精神に立ち返り、1つの機能を付けるにしても、それはユーザーのためになるのかを考えるようになりました。

佐藤 そういったものを対外的に伝えていくにはどうしているんですか?

小川 これもまだできているわけではないのですが、そもそも今まで不動産業界でユーザーファーストっていう概念がほとんどなかったんですよね。特に仲介業でいうと。

だからこそ、既にユーザーファーストってことが業界の中でイノベーティブなことで、それをプロダクトとしてしっかり伝えていきたいと思っています。

結局は、ITって本質はユーザーファーストじゃないですか。そのために、テクノロジーというより、その考え方自体を不動産業界に入れていかないと失敗すると最近気づいたところです。

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経営者の本来持っている想いを伝えるのもPR会社の役目

佐藤 そういった価値が提供できるようになってきた時に、それを世の中に伝えるために必要な人材とか会社って具体的にありますか?

小川 人材で言うとまずは社長がしっかり広報の役割を担っていかないといけないですよね。広報の時間をしっかりとろうと決めること。
もうひとつ会社で言うと、必要とする媒体とのリレーションがあるPR会社ですよね。

佐藤 その中でも、いいPR会社さんってあるんですか?

小川 ひとつは、担当者さんがリレーションをしっかり作れる人間力があること、もうひとつは企画力ですかね。

佐藤 東さんはPR会社として、その点はいかがですか?

 企画力は人によって依存してしまうことがあるので難しいところはありますが、私たちの場合は社内の教育制度を整えたりしています。
ただ、もっと力を入れているのは、先ほどから言っている、何を伝えるかということを導きだせるメソッドを作っていることですね。

小川 僕らからすると、どういうメッセージであれば世の中は受け入れてくれるのか、その業界に合わせてもう一歩踏み込んでくれるPR会社は嬉しいですね。そういったメッセージづくりから参画してくれるというか。

 ベンチャー企業は、そこはシンプルで、社長が考えているビジョンが会社のビジョンや理念だったりするので、そこを引き出すだけだったりします。

小川 その意味では、私は最近、悩んでいる時はマインドマップを描いています。10年後に会社はこうなっていたいというところから、直近の目標に落とし込んでいるんです。
それをやると足腰強い経営ができる気がします。

佐藤 なるほど。では、経営者自身のPRってどうでしょう。代表自らのメッセージは大事ですよね。FacebookとかTwitterとかで。

小川 私はそこが苦手ですね。余計なことは書かない(笑)。

 たしかに、経営者の露出ってとても大事です。
特に、ベンチャー企業は経営者が会社そのものなので、その部分はご自身で考えるしかないですよね。

端的に言うと、会社の理念に紐づいていればいいと思っていて、社会貢献の高い事業への想いがあるのに経営者が偉そうな態度とかは違いますよね。
だからこそ、PRのテクニックだけでは不足していて、愛される秘訣は代表自身にあると思っています

小川 僕はブログとかを書けないんですよ。でも、経営者って頭の中では色々発信した方がよいと考えているので、それを上手く発信する方法をコンサルティングしてほしいなとは思いますね。
イベントでてしゃべれと言われればできますけどね(笑)。

佐藤 経営者の方のリアルな出会いとかはどうですか。夜飲みに行ったりします?

小川 飲みにもいきますね。同じ業界の人も、そうではない人も。

佐藤 いい人と出会っているかと、どれだけ情報を発信できるかって、経営者の方の能力として大事だと思うんですよね。

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強い想いは目や言葉に宿る。そこにファンもできる。

佐藤 PRって今後どうなっていくと思いますか?

 本質的なところにいかないと。PRということ自体は今後もなくならない領域だと思うので、PRをどのように定義していくかが大事ですね。
海外は川上のところからクライアントやコンサルタントも交えPRを戦略的にやっていくので、そういった領域に日本もなっていかないと厳しいなと思う。

佐藤 なるほど。

 自動車のHONDAなどの高度成長期の日本を支えた経営者の数々の発言などを見ても、事業の内容どうっていうものよりも、いいものを作りたい、世の中を良くしたいなど、何より熱がありますよね。

だから、会社の経営者って、本来は強い想いがあって、それが目や言葉に宿るのかなと思います。
今は起業がトレンドになっているところがありますが、ビジョンや理念がない状態で事業を進めている会社は、どこかで成長が止まってしまい、長期的な成長は難しいと思っています。

佐藤 最近、若い経営者にもよく会いますが、そこってあまりなかったりしますよね。
でも、やっぱり勝っている会社は想いが強い。中途半端な想いの会社はだめになる事例が増えてきていると感じます。

小川 そういう想いって出てしまいますよね。ベンチャー企業って結局は人なんです
プロダクトや会社に対する想いがあり、しっかりそういうことを話すと、想いを持った人たちが集まり、会社は伸びだします。

佐藤 最初の方で結論を出してしまいましたが(笑)、今後は、企業も人も本質的な想いがあってこそ、PRの効果が発揮されそうですね。

Interview/Text: 松田然
Photo: 栗原洋平

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東 義和

あずま・よしかず/株式会社マテリアル代表取締役社長。1980年石川県生まれ。2005年にPRの本質を追求したコミュニケーションサービスの提供を使命に、PR会社・株式会社マテリアルを設立、代表取締役社長に就任。2014年にはPRをプラットフォームに事業の多角化とシナジーを図るため、ホールディングスとなる株式会社LENSを設立し、関連事業を多数展開中。 また、2014年12月、全ての人に共通する“睡眠”の市場に着目し、『トータル睡眠ソリューションカンパニー』として事業会社、株式会社TWOを創業。

小川 泰平

おがわ・たいへい/1984年島根県松江市出身。
2006年、住友不動産株式会社入社後、マンションビル等の事業用地の取得、開発企画、 賃貸住宅の営業企画、広告企画等を担当。
2012年ユーザが置き去りにされた不動産業界に疑問を感じイノベーションを起こすため、株式会社iettyを創業。
人工知能やクラウドソーシングを活用した今までにない形の賃貸住宅のリコメンデーションプラットフォームiettyをリリース。
年間数万人が利用するサービスに成長。その取り組みはyahooやmixiなどのIT企業から支持され出資を受けている。

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