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子どもにスマホをもたせるべき? 家庭と学校でのコミュニケーション問題

2015.10/20

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前回に引きつづき、女優の小日向しえさん、ロボットクリエイターの青木俊介さん、小学校教諭の沼田晶弘さんを迎え、「子どもとスマートフォンの関わり方」について伺っていきます。

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家庭によって全然違う!? スマホの家庭内ルール

————子どもにスマホを持たせていたり、そうでなかったり、家庭によって異なってくると、子どものルールをどう決めていくか、難しいですよね。

小日向 やっぱりどうしても「これはいい、これはダメ」っていう価値観や判断基準が近いご家庭と遊ぶことが多くなりますよね。そこが食い違ってくると、子どもが混乱しちゃいますもん。
例えばそれぞれの家族で一緒にご飯食べに行こうってなったときに、その場にゲームを持っていっていいのか悪いのか……。

青木 そこでひとつの家族だけ持っていたら、「アレ?」ってなりますもんね。

小日向 そう、「なんであの子はいいのに、ウチはダメなの?」って。

沼田 そういう「ファミリールールの違い」っていうのは、ゲームに限らず全てにおいてありますよね。
タブレットでネットを見る子もいれば、テレビがない家の子だっている。

————そうなってくると本当にみんなが納得できる「最適解」を見つけるのは難しいかもしれませんね。
ところでスマホやタブレットって、子どもたちにとっても魅力的なコンテンツが多いと思うのですが、見はじめると歯止めが利かなくなってきませんか?

青木 「充電は必ずリビングでする」とか、そういうルールは決めてます。タブレットを自分の部屋に持っていっちゃうと、ベッドで隠れてゲームをやってますからね。

小日向 そうですよねー。

沼田 まぁ、どうやったって限度がありますよね。「宿題かゲームか」ってなったら、そりゃゲームになっちゃう。

小日向 なのでうちもルールを決めていて、家に帰ってきたら空のお弁当と水筒をシンクに出して、宿題を終わらせるっていう約束をしています。
「これだけは今、あなたたちがやらなきゃいけない最低限のことだから、ちゃんとやろう」って。
約束を守れなかったらタブレットも全部取り上げて、やらせない。
私、ものすごく怖いので(笑)。

青木 うちは夫婦共働きなので、子どもだけで留守番しているときにスマホやタブレットを持たせるのはやはり抵抗があるんですよね。

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スマホは不要!?ロボットを通じた子どもとのコミュニケーション

————青木さんは、お留守番している子どもたちのために、「BOCCO(ボッコ)」というロボットを開発されていますよね。

青木 そうなんです。スマホを使わなくても簡単に子どもとコミュニケーションが取れたらいいなって思っていて開発した経緯があります。

————どんなことができるんですか?

青木 子どもが音声を録音して、パパママに伝言を送ることができるんです。BOCCOのアプリがあるんですけど、録音するとパパママのスマホに届いて、チャットみたいな感じで家族のグループトークに声が届きます。

(BOCCOを操作する青木さん)「ママー。アンパンマンやったよー」

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小日向 かわいいー!

青木 「留守番中にアンパンマンを見たよ」っていう報告ですね(笑)。
こういうのがいっぱい届くので、楽しいですね。

小日向 でもやっぱり、声を送るのっていいですね。文字で見るより安心感があるというか

青木 あとはパパママもスマホから文字でメールを送ると、BOCCOが読みあげてくれたり、直接声を録音して喋らせることもできます。
ほかにもセンサーによる帰宅通知とかも可能です。

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子どものうちからテクノロジーはあまり与えすぎないほうがいい?

————テクノロジーが進化していくこと自体は便利なことが増えると思います。スマホも一種のテクノロジーですよね。そこをうまく取り入れて、子どもとも良い折り合いのつけかたがあるといいなと思うのですが、いかがでしょうか。

青木 個人的には小さい頃からあまりテクノロジーを与えすぎるのはよくないと思っています。
虫を追いかけたり、鬼ごっこしたり、そういう時間をどんどん減らしてまでやるほどのことじゃないと思うんですよね。

————青木さんからそういう意見が出てくるのは、正直意外でした。

沼田 確かに、大人は自分の足りないところを補うツールとしてテクノロジーを使うけど、子どもの場合は、そっちが主役になっちゃうかもしれないんですよね。

小日向 でもこないだ、うちのiPadをまっさらな状態にして息子に渡したんです。
ちょっと「やらかした」のでゲームアプリを全部消して、「はい、これならいいよ」って渡したんですけど、そうすると今度はYahoo!とかで自分の描きたいイラストを調べて、それを一生懸命模写してました!
ゲームがなければないで遊びを考えだして、なんとかしようとするんですよね。

青木 そうなんですね。

小日向 紙を置いて画面に透かすとiPadがちょうどライトになるので、漫画家さんみたいに描いてて。
そうすると今度は画材が欲しくなって、最近長男はおこづかいを貯めて「コピック(画材)」を買いに行ったりしてますね。

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沼田 コンピューターが悪いわけではないかもしれないですね。
うちの学校にコンピュータールームがあるんですけど、児童たちが休み時間じゅう何かをやってるんで覗いてみたら、社会科の担当プロジェクトのために豊臣秀吉について調べてるんですよ。
それってコンピューターさまさまで、いろんな情報を手分けしながら3、4人でずっと調べてる。図書館に比べて短時間で情報を得ることができる。

自分だけのスマホを持つっていうことに関しては、どうかなと思うけど、自宅にいつも使えるコンピューターやiPad、タブレットがあるのは、教師としてはありがたい。調べ学習のレベルが格段に上がりますから。
未だに「調べ物は図書館でしなさい」という先生もいますけど、僕は基本的にコンピューターを使うことはいいんじゃないかと思う。
あと、家庭科や料理クラブの料理のレベルがめちゃくちゃ上がってるんですよ。おかあさんのスマホを借りて、クックパッドとかで調べてるから(笑)。

青木 なるほどー!

沼田 しかもスマホからプリントアウトできないから、ノートにちゃんと書き写してるんですよ。
だから多少身につく部分もあるんですよね。すごく美味しそうなものを作りますよ。「これ、家庭科で作るにはちょっとオシャレすぎない?」みたいな(笑)。

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子どもに不適切なコンテンツをしっかり説明して理解してもらう

————小学生くらいだと、自分のスマホは持ってないけど、おかあさんのスマホを借りたり、家にあるタブレットを使っていろいろ調べたりする子が多いんでしょうか。

小日向 家庭共有のものなら、たとえば何か調べた時に履歴が残るから使わせてますね。まぁ、「う◯こ」とかもありますけど(笑)。

沼田 男子は下ネタ系の言葉を見つけて辞書に線引いたり、昔からありましたもんね(笑)。

————ネットには子どもに適さないコンテンツもありますよね。そこへの配慮はなにかされていますか?

小日向 履歴を見ると特にそういうものを見た形跡はないので、今はまだそんなに気をつけてるっていうことはないですね。たぶんバナー広告に出てるものくらいだと思うんですけど……。

青木 そういう意味では、パパやママがいる場所でiPadを扱うなら、安心感はありますよね。
うちではふたりとも仕事で帰って来れない時にタブレットを渡すのは……心配すぎてできないですね。

沼田 うちは学級通信にパスワード承認制のブログを使っていて、広告が出てしまうんですよ。ですから、子どもたちにも徹底的に説明してます。
「これは無料のブログだから、こういう意味で広告が置いてある。逆に目を惹かない広告なんてありえないから」みたいな。
「興味を持つかもしれないけど、それをもしクリックしたらどんなことが起こるかわからない。支払いが発生するかもしれないし、情報を吸い取られるかもしれないから、クリックしないこと。これができない人は無料サイトは使えませんよ」と伝えています。
いろいろなことに興味が湧く年頃ですから。変に隠すほうが逆効果なんですよね。やるなと言われると,逆にやりたくなる。

小日向 そう!そうなんですよね。

沼田 基本的に子どもに禁じるのは無理なので、理解してもらうしかないかなって思っています。

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子どものうちは「スマホの便利さ」より「不自由な経験」を

————子どもが何歳ぐらいになったらスマホを解禁しても良いと思いますか?

小日向 うちでは高校1年生くらいになったら、って言ってますね。

青木 うちもそのくらいですねぇ。

小日向 子どもには、「22時になったらパパママが預かって、充電はこっちでしておいて、その間見るかもしれないけど、それでもよかったら」って伝えてます。もしくは「自分でバイトして、電話代払える年齢になったら」って言ってますね。
でも中学に入ったら、やっぱり部活のLINEグループがあるんですって。だから「ないと困るってみんなも言ってる」って言ってくるんですけど、「じゃあ私のアカウントで登録したらいいんじゃないの?」って言うと、「うーん……(そうじゃねぇし!)」みたいな(笑)。

青木 え、いま5年生ですよね?でも既に今からLINE使えるように親の説得を試みてるんですか?

小日向 そうなんですよ!

青木 さすがですねー! 今から外堀を埋めようとしてる(笑)。

沼田 まぁしょうがないですよね。

————スマホというより、むしろLINEがコミュニケーションツールとして大きな存在なんですね。

沼田 かなり大きな存在ですね。LINEに参加できないと、学校を休んでるのと同じと考えてるくらい。また、仲良しグループとかいろんなグループがあったりして。

————確かにそういうグループ分けといったやりとり自体は昔からあって、今はそれがLINEのグループトークに移行しているのかもしれないですね。

沼田 LINEになると完全に見えなくなっちゃうのが怖いですよね。

————子どもがスマホとうまくつきあっていくには、やはり「なるべく親御さんがわかる範囲内で使うべき」なんでしょうか。

小日向 そもそも「スマホは大人のもの」だと思うんですよね。それを子どもたちに持たせるのは、それなりにリスクもある。
もし使うなら約束事も守ってもらわないといけないし、それを子どもにも理解してもらわないと、なかなか積極的に持たせようという気にはなれないですよね。

青木 うちは長女にコンピュータを渡しているんですけど、やはり子どもたちだけで家にいる時間が長いので、そこまで歓迎はできてないですね。
なので今すぐスマホを渡す必要はないかなと思っています。

————まだのびのびと遊んでいてほしいという感じでしょうか?

青木 そうですね。むしろテレビもなくていいくらい。
工作とか絵を描いたりとか……子どもらしいことをしてもらいたいですね。

小日向 なんかすぐにスマホで調べるとかじゃなくて、困った時に誰かに聞いたり、だれに聞くのか考えてみたり……そういう経験をしてほしい。

沼田 そういう機会がスマホになっちゃってるんですよね。。子どもなんだから、失敗したっていいんだし、今のうちにちょっと不自由な経験をしておいてほしいですよね。その経験が,いざというときに生きるわけだから。

Interview/Text: 大矢幸世
Photo: 保田敬介

小日向しえ

こひなた・しえ/1979年東京生まれ。15歳の時にファッション誌でモデルデビュー以降、女優、歌手、タレントとして幅広く活躍。プライベートでは2003年ココリコ・田中直樹と結婚。息子ふたりの母。2011年チベット暦新年にバンド「nelca(ネルカ)」を結成し、ボーカルとベースを担当する。

https://twitter.com/sie_kohinata

青木俊介

あおき・しゅんすけ/東京大学在学中に、チームラボ株式会社を設立、CTOに就任。その後、ピクシブ株式会社のCTOを務めたのち、ロボティクスベンチャー ユカイ工学を設立。ソーシャルロボット「ココナッチ」や、フィジカルコンピューティングキット「konashi」などセンサーやスマートフォン、ネットワークを生かした開発を得意とする。

http://qreators.jp/qreator/aokishunsuke

沼田晶弘

ぬまた・あきひろ/国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、学校図書生活科教科書著者、ハハトコのグリーンパワー教室講師。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリカ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。「パッツン」「CM」「インパクトライティング」など、担当クラスでの斬新な授業が話題。

http://qreators.jp/qreator/numataakihiro

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