人生は壮大な実験だ。
あたらしい移住から考える、これからのライフスタイル

2015.10.15

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あたらしい働き方はもう始まっている

ハワイ、東京に拠点を構えるデュアルライフを送っているレバレッジコンサルティング株式会社代表取締役 本田直之さんと、ライフスタイルプロデューサーの村上萌さんがモデレーターを務めたトークセッションの内容をお届けする。

今回のトークイベントは、本田直之さんが日本全国16地域を旅して取材した内容を、『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住 』として出版されたことを記念し、福岡移住計画と共同で開催したスペシャルナイト。

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脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住/毎日新聞出版

東京から離れ、海外や日本の地域で働くことで何が得られるのか?
2人の言葉から、これからのライフスタイルに触れていきたい。

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これまでの移住との違いは、“攻め”

本田 2007年にハワイに移住して、今はハワイと東京に拠点を構えている。
だいたい年の半分をハワイ、3カ月を日本、残りはヨーロッパなど世界各地に行くようなライフスタイルを送っていて、最近はリアルに移住している人たちをインタビューして「脱東京」という本を出した。
このインタビューをしていく中で大きく変わったなと感じたのは、昔は移住と言えば、田舎暮らしでのんびりというイメージがあったけど、今は“攻めの移住”をする人が多くなってきたということ。
つまり、仕事のスキルも人脈もある人が、自分のライフスタイルを重視するために移住することが増えている。
例えば、僕はサーフィンをするんだけど、東京は海に行って帰ってくるだけでも時間がかかり過ぎるし、波もあまりよくない日もある。
その点、日本なら九州の宮崎県など、いい波の常にあるサーフスポットに住みながら、インターネットを活用して仕事ができる人がいる。

今回「脱東京」でインタビューした人たちは、移住先の地域の会社に就職したりというよりは、自分でビジネスをもっていて東京と仕事をする割合が高い人が多かったな。

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テクノロジーの進化と、精神的な豊かさの追求

本田 このようなスタイルはここ5年くらいで急激に増えてきたと思う。
僕がハワイに移住した8年前は、そもそも他の人の事例が少なく、本を読んでも移住の情報がほとんどなかったからね。メディアで見る情報は大橋巨泉さんくらいだったかな(笑)。
でも、今はiPhoneがビジネスに使えるようになってきたように、テクノロジーの進化が移住のようなライフスタイルを後押ししている。

もう1つはリーマンショックや東日本大震災など、半強制的に自分の生き方を見つめ直すようなできごとがあり、物質的なものより精神的な豊かさを求めて移住を検討した人が増えたこと。
このような背景があり「脱東京」の新しい生き方がだんだんと広まってきている。

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村上 私も、今は主に東京都と北海道を行き来していますが、6割方は北海道の札幌で暮らしています。
昔だったらリアルに東京にいないとできなかったことができるようになっているなと感じますね。

本田 移住がプラスに働くことは多いと思う。もちろん東京は楽しいとこだし、全く滞在しないということはないんだけど、日本というのは他にも本当に豊かな場所がたくさんあるよね。
そんな地域なら生き方はさらに面白くなっていくんじゃないかな。

村上 特に私は移住しようと思ってやっていたわけではなく、学生時代から付き合っていた彼が転勤の多いサッカー選手の仕事をしているので、こんなに頻繁に移動するなら自分も何かしないといけないな、とずっと考えていました。
今は自分の会社を作ってどこでも楽しめる暮らし方ができるようになってきていますが、特に男性の方の移住はパートナーの理解が大事だと思います。

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情報を発信すれば、チャンスが掴める時代

本田 今の時代、誰でも情報を発信できることも大きいよね。FacebookやInstagramがあるし、発信しているから仕事になっていることもある。
今日までの10年を考えると、これから先の10年はさらにテクノロジーが進化するし、色々とチャンスがあるんじゃないかな。
彼女も自分のライフスタイルを発信することで、雑誌のお仕事になっていたりするよね。

村上 神戸に住んでいた時、淡路島にある商店で木彫りの熊が売れ残っているのを見つけました。
イチジクや大根など、採れたてで値段もお得な野菜や果物が置いてあり、お店は賑わっていたけど、熊はどうやっても売れそうには見えませんでした。
でも、とてもいい木を使っていたので、思わず「どんな職人さんが作っているんだろう?」と気になって聞いてしまいました。この木材で何かできないかなぁとも思ったんです。
店の方に案内されたのは、奈良県吉野の木彫り職人さんでした。
場所は、すごい田舎で、川沿いの掘建て小屋のようなところにおじさんがいました。とても誇りを持って生きている方で、気づいたらその方を親方と呼んでいましたね。

作業場には、ヒノキの木材の破片がたくさん余っていたので、何かに使えないかなと思い、朝食の盛りつけなどに使えるカッティングボードを作ってみました。その上に食材を並べてInstagramにアップしたら、大人気!「私も作りたい!」と、親方のところにギャルが殺到してしまって(笑)。
最初は自分用にほしかったのですが、みんなもほしいということがわかり、今では吉野町でカッティングボードを作るワークショップを開催しています。
これは情報をソーシャルメディアで発信したことと、その地域に行ったからわかったニーズでしたね。

本田 外の視点があるからできることってあるよね。
面白い例で言うと、ハワイは旅行で行くと本当に素晴らしいと思えるところなのに、それが日常になってしまうと、地元では何もない場所だと思っている人がいる。
自然があるし、美味しいお店もある、なんでこの状況でと思うけど。

村上 移住した人の中で、その中でずっと住みたいという方だけではなく、また移動することもあると思うんですよ。
そうすると、限りある時間でその地域の魅力を楽しみたいと思えるので、毎週末色んなことをしたりして、忙しいけどその瞬間を楽しめている気がします。

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スペインには地方という言葉はない

本田 日本のいろいろな地域に行って面白いと感じるのは、すごい魅力的なのに「何でこの値段でできるの?」というものに出会えること。
世界は日本のように東京に一極集中とかじゃないので田舎でも魅力的な場所は家賃や生活コストが高かったりするからね。
それに日本の地域はハワイと似ているところもあって、自然が豊かで食材も美味しかったり。
だから、実際に移住して地域に住むデメリットや心配事は仕事の面が大きかったんだけど、今は、移住した方が仕事が増えることも多い。ライフスタイル自体がコンテンツになり面白い仕事が回ってくるからね。

村上 私自身はもともと横浜で生まれ育ったので、首都圏はすごく楽しくて刺激的なんですけど、そこにずっといるより、他の地域に住んでみてわかったことが多くあります。
だから、東京以外にも北海道でも沖縄でも自分の好きなところを作れるといいですよね。

本田 僕はよくヨーロッパに行くんだけど、ヨーロッパの都市部は全然面白くない。イタリアのミラノもスペインのマドリッドも。
でもその周りの地域は独自の食材や食文化があったり、スペインなんかで言うとそれぞれの地域が本当に自分の住んでいる場所を誇りに思っている。
「スペインには地方という言葉ってあるの?」と現地の人に聞いたら、そういった言葉はなくてバスクはバスクだしカタルーニャはカタルーニャだしバレンシアはバレンシア。
東京に対する地方という言葉がなく、地域の名前で呼んでいるんだよね。自分たちの住んでいるところへの愛があるから。

日本も昔は藩とかがあって、それぞれの地域に文化や特色があった国。
ここ100年くらいで変わってしまったけど、きっと日本もそうなっていくんじゃないかな。それくらいの魅力が日本の各地域にもある。
もちろん、やっぱりつまらないと思う地域もあるけどね。そういったところはだいたい同じで、チェーンの居酒屋や大規模モールがあって……。
僕は今アメリカのハワイに住んでいるけど、正直アメリカにはまったく興味がない。どこにいっても同じような場所が多くてつまらないからね。

ただ、そういったアメリカ的ところを拒否したポートランドやブルックリンなどが今は面白い街として話題になっているよね。
ものすごく逆転していて、オセロの白黒のコマが変わるくらいの勢いで価値観が変わってきている、そういう時代。
ビジネスの中心には東京はいいけど、住む場所を真剣に考えた時には、みんなが東京にいる必要はなくて、今はその選択肢が持てるようになったよね。

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移住を“実験”と思えば、変なプライドが邪魔にならない

本田 移住やデュアルライフ、一カ所に定住しない働き方などはちょっとの勇気があれば大丈夫。

僕はいつも、人生は壮大な実験だと思っている。
ハワイに移住する時は、周りの人からは「仕事とか大丈夫なの?」と心配されたし、自分もどうなるかわからなかったけど、実験だしある程度やってみてうまく行かなければ戻ればいいことだからと思えた。

村上 まずは1週間のうち5日だけは違う場所で仕事をするとか、小規模に試してみるとかもできますしね。

本田 そうそう、あまりにも想い込みすぎてやるとつらいこともある。実験が上手くいけばそのまま住めばいい。
移住は答えがたしかにあるというわけではない。昔だったら移住したら、そこに骨を埋める覚悟が必要だったが、今もそういうのもあるけど、こだわり過ぎる必要はない。

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自分が生きていく上で大事にしていることができる場所への移住

本田 こないだ島根県の隠岐島にある海士町に行ったんだけど、人口がどんどん減っていて夕張の次に破綻すると言われていたところ。
でも、今は住民の1割が移住者で、しかも若い。
「ないものはない」というのが海士町のキャッチフレーズで本当に何もない、コンビニもアミューズメント施設もない、でも課題はいっぱいある。
もしチャレンジしてくれるなら応援する準備はある。そんな島でした。

村上 移住した方はみんな何にチャレンジするんですか?

本田 廃校寸前だった高校を、教育で盛り上げ、文部科学省のスーパーグローバルスクールとして指定されたことで定員がパンクするくらいに人気になったり、もう無くなりそうだった定置網漁の事業で独立した人もいる。めちゃくちゃキツいよと最初から言った上で。
海士町としても、「ずっと定住したい」という人だけを受け入れたいとか言っていられる場合でもなかったので。
ずっと住んでくれなくてもいい、チャレンジしたい人に来てほしい。そんなスタンスでやっていた。

村上 福岡も若い外部の人を受け入れ独立しやすい街として今、話題ですよね。

本田 そうだね。IT系のスタートアップ企業などがどんどん立ち上がっている。
行ってみて魅力的な街だなというのは、クリエイティビティがあり、オリジナルなデザインがあり、外の人が集まりやすい雰囲気がある。本当に人を受け入れる街だなぁと思うよね。
あと、海士町なんかはどこでも釣りができるので、釣りが好きなら移住した方が楽しめる。自分が生きていく上で大事にしていることができる場所はいいんじゃないかな。
その上で、自分の性格とその地域が合うかを実験してみるといいよね。

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Interview/Text: 松田 然
Photo: 森弘 克彦

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本田直之

ほんだ・なおゆき/レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ 上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ユニオンゲートグループ取締役、Aloha Table 取締役、エポック取締役、コーポレート・アドバイザーズ取締役、米国Global Vision Technology社取締役、東京レストランツファクトリー顧問、アスロニア顧問などを兼務。

ハワイ、東京に拠点を構え、年の半分をハワイ、3カ月を日本、2カ月をヨーロッパ、1カ月をオセアニア・アジア等の国を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまで訪れた国は50カ国を超える。

著書に「レバレッジシリーズ」をはじめ、『ノマドライフ 好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと』、『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』等があり、著書累計250万部を突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)、明治大学商学部産業
経営学科卒、(一社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー、アカデミー・デュ・ヴァン講師、明治大学・上智大学非常勤講師

http://qreators.jp/qreator/hondanaoyuki

村上萌

むらかみ・もえ/NEXTWEEKEND代表
“次の週末に取り入れたい”をコンセプトに今より少し先の理想のライフスタイルを提案。プロデュースチームNEXTWEEKENDを主宰し、週末を楽しくするウェブサイトの運営を始め、サンドイッチ屋やイベント、その他空間や商品などのプロデュースを手がける。雑誌NEXTWEEKENDは10/2に発売

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