町工場と小学校から見えてくる「リーダーに求められる要素」とは

2015.10.6

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クリエイティブなアイデアや発想のヒントを得るために、様々な分野のクリエイターをお招きし、アイデアが生まれるまでのプロセスを探るシリーズ「クリエイティブな人の考え方って?」。

第4回は「製造業版ディズニーランド」を目指し、電気自動車「HOKUSAI」や深海探査艇「江戸っ子1号」など、産学連携で日本のものづくりを牽引する株式会社浜野製作所 代表取締役の浜野慶一さんがゲストスピーカーとして登壇。

斬新かつユニークな授業で注目を集める小学校教師沼田晶弘さんと、リーダーに求められる資質について語っていただきました。

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プライドが高い社員をその気にさせる

沼田 勝手なイメージですが、職人さんってプライド高い人が多そうですよね(笑)。

浜田 たしかに、職人さんは妙なプライドがありますね。

沼田 そんな職人さんたちを、どうやってまとめたり、やる気にさせたりするんですか?

浜野 一番厄介なのは先代の時代からいる職人さん。会社を引き継ぐと、若い経営者は新しいことをやりたいと考えます。
それで何かを変えようとすると、だいたいネックになるのは古株の職人さんです。
ほとんどの場合、「オレはお前じゃなくて、お前のオヤジに雇われたんだ」なんて言われます(笑)。

沼田 でも、その職人さんは能力が高いんですよね?

浜野 そうなんです。技術力は非常にあります。辞められては元も子もないので、おだててやりくりするわけです。
でも一方で、自分が採用した人には、アレやれ、コレやれと言いやすい。
同じ内容の指示でも、一方では強制、一方では下手に出るような態度になってしまうこともあります。しかし、これは会社にとって良くないことです。

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意見やアイデアを提案しやすい雰囲気をつくる

沼田 やっぱりいますよね? 顔色うかがってくる人。社長という立場上、よく見られてるんじゃないですか?

浜野 僕の顔色は見られてないかな。
女の子なんか「社長、これ明日までにお願いしますね!」ってズケズケと言われることもありますし。そういう時は「はい」と命令に従います(笑)。
でも一般的な企業だと、上司の顔をうかがっている人はいるかもしれませんね。

沼田 学校では毎日ですよ(笑)。

浜野 えっ! それは誰が誰の顔色をうかがっているんですか?

沼田 最初にクラスを持った頃は、今は機嫌悪いなとか、今はいい感じだなとか、生徒全員が僕の顔色をうかがっていましたね。
最近は僕が子供の機嫌をうかがっていますけど。

浜野 それは結構当たっているんですか?

沼田 はい。子どもたちが僕を分析するのは、とても面白いですよ。
つい先日聞いた話なんですが、僕は考えごとをしているとき、自然と左上を見ているらしいんです。だから生徒は僕が左上を見ているときは話しかけないようにしていたそうです。
目線が下がって、右下を見始めたら、質問にいく。最近いいタイミングで話かけてくるなと思っていたら、そんなふうに僕を分析していたんですね。

あとは若い頃、自分の上司が何をしたいか探っている人もいましたね。「こうしておくと仕事がスムーズに進むんだよね」なんて言いながら。

浜野 それは「おべんちゃら」という意味で顔色をうかがうのではなく、円滑に仕事を進めるために顔色をうかがうってことですね。

沼田 そうですね。それは僕もありますよ。

浜野 仕事を上手く進めるための防止策ですかね。
「顔色をうかがう」って、可愛がられるとか、気に入られるとか、給料が良くなるとか、そういったことばかりだと思っていました。

沼田 僕は若い子に尖ったアイデアを出してほしいと思っています。
授業中だと生徒が僕に何かを発言するときに、「この答えや質問であっているのかな」とかいろいろ考えてしまって、なかなか思ったことが言いづらいかもしれません。
ですが、雑談だとツッコめますよね。僕はそういう場で練習をさせて、授業中でも自由な意見を言えるように仕向けています。
だから意見が自由すぎてビックリすることもありますよ。さらに核心をついていたりもするので。

浜野 たしかに上からガツンっと言って、閉じてしまった扉は二度と開きませんね。もしくは開けるのが非常に難しい状況になってしまうかもしれない。
だったらお互い扉は開けっ放しで締めるときは締める。真面目にやるときは真面目にやる。
そんな開けっ放しの状況から切り替えをしたほうがいいですよね。みんなの意見も拾いやすいと思います。

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最終的な決定を相手に委ねる

浜野 私が、社員にアドバイスしたいときや何かを伝えたいときに一番心がけていることは、「あなたならどうする?」と聞いてみることです。
その後で、私の過去の経験談を伝えるようにしています。アドバイスとはちょっと違うかもしれませんけど。

沼田 浜野さんのお話は、「愛(I)メッセージ」という手法ですね。
「これをしなさい」じゃなくて「これをしたほうがいいと思うけど、あなたはどう思う?」と、最終的な決定を相手に委ねる手法ですよね。
「5分でやりなさい」じゃなくて「あと何分でできる?」と聞いて、「5分でやる」と言ったら、やらざるを得ない。自分で言ったら意欲も違いますから効果的な手法です。

浜野 あと、社員が私にアドバイスを求めてくるときによく感じるのは、情報の整理をしないで相談してくることが多い。
トラブルの際などは特にそう思います。だから、自分が置かれている状況を一度整理して、一つ一つ絡まった糸を解いてあげるようにすると、冷静になって自分でも判断できるようになる。
その手伝いをするのが僕の役目になっていますね。

沼田 何か学校の先生と話をしているみたいですね(笑)。

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本音で話し合える機会をつくる

沼田 町工場で職人さんたちが揉めはじめたら、収拾がつかなくなりそうなイメージなんですがどうでしょうか?

浜野 大人になってからの揉めごとは、大体騒ぎになる前に、誰も何も言わなくなってしまいますね。「いいや、こいつと話してもしょうがない」と。
表面化しない揉めごとが多いんじゃないでしょうか。本当はドラマみたいにワーッとやってくれた方がいいんですけど(笑)。

沼田 派閥というか、仲良しグループみたいな感じもありますよね。

浜野 あるリーダーが「こいつのやってることが気に入らない」という部下の意見を聞いて、「仕事なんだから、割り切ってやりなさい」とその部下にアドバイスしたそうです。
でも、それってあまりにも寂しいですよね。本当はそうじゃない。
揉めごととか、すれ違いってちゃんと話し合えていないから生まれるもので、お互いが話し合いを避けてしまっているから起こると思うんです。
できる限り本音ベースで話し合える機会を与えてあげることが大切だと思います。

沼田 その機会って具体的にどうやって与えるんですか?

浜野 揉めているときって、お互いの情報が少なかったり、偏ってしまったりしていることもあるので、「ちゃんと時系列で情報満載の状態で話をしなさい」とアドバイスします。
そうすることで、実は勘違いだったと気づくことがありますよね。
そういう場をセッティングしてあげることが、リーダーとしての役目だと思います。

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得意なことを活かせる環境をつくる

――さて、これまではお二人の日々の業務・体験からのお話でしたが、ここからはお二人に共通するキーワードを探していきたいと思います。

沼田 小学生って全体で何かをするとき、30~40人生徒がいるなかで一部の10人くらいしか頑張らないんです。残りの20~30人は何もしなくてもおいしい思いができてしまう。
だから僕は生徒に「一人ひとり得意なことをしよう」と言っています。

よく話をするのは、ジャイアンツの鈴木選手のこと。プロ野球って甲子園で活躍した人が沢山いるけど、そんな人たちでも1~2年でクビになってしまうことも多い。
でも鈴木選手は、代走というすごいポジションで18年もプロの世界を生き続けている。その場所があるから彼は輝けているんです。

学校でも同じようなことが言えると思っています。みんなで同じことばかりやっていると、何もしない子どもが必ず出てきてしまう。
だから、みんながそれぞれ得意なことを活かして目標を達成するために、「帝国ホテルに行って、飯食って、リムジンで帰ってくる」というゴールを子どもたちと決めたんです。
それで、実際に帝国ホテルまで行って、ご飯を食べて、リムジンで帰ってくるにはいくらかかるか生徒たちに調べさせてみると、結構お金がかかることが分かったんです。
ただ、子どもたちはアルバイトができないので、どうするかみんなで考えた結果、各自が分担してコンクールで賞金を稼ごうということになりました。
絵の得意な子や作文の得意な子たちが、各々でチームを作って、自分たちの強みを活かしてコンクールに応募する。そうしたらなんと、半年で3万5000円くらい集まったんです。
もちろん,彼らのがんばりについては言うまでもありません。
学校新聞コンテストとか、テレビ番組の懸賞だとか、ウチの生徒たちは次々にいろんなことを見つけてきて、それぞれが自分の強みを活かせるプロジェクトに取り組んでいます。

浜野 そういうことをやっているのは、沼田先生だけなんですか? 校長先生、学年主任の先生たちには報告とかしますよね。
会社でいうところの上司になりますが、どういう反応をされますか?

沼田 国立大学付属って「公教育をする」「教育実習生を受け入れる」「先進的な教育の研究をする」という3つの存在意義があって、それを満たさないといけないんです。
とくに大事なのが「先進的な教育の研究をする」なのですが、僕達の研究の中から効果的な手法や、いいなと思うものがあれば、どんどん使ってくださいって言うことなんです。
存在意義を意識した取り組みをしていれば、特に何か言われることはありません。
浜野さんはどうですか?

浜野 沼田先生もおっしゃっていた通り、自分たちで考えて行動させる環境づくりが大切だと思います。
私は取引先が4社だった頃からたった一人で頑張ってきたので、2000社と取引するようになってから、「自分がやった!」と思ってしまったこともありました。
先頭を切って「会社を引っ張ってやらなきゃ!」と勘違いしてしまったんです。
けど、今振り返ってみると、そういう時期って会社は成長してないんです。
あるときそれに気づいて、「なぜ周りに素敵な仲間がいるのに、任せられなかったんだろう」と思いました。それからは会社も大きく成長していますし、みんなの働き方も変わってきましたね。共通して言えるのは「環境をつくってあげること」だと思います。

沼田 「江戸っ子1号」はまさに「環境をつくってあげた」ことから生まれたと伺いました。

浜野 はい。ある年に、大学院工学部の博士課程を卒業した子が入ってくることになりまして。
博士課程を取っているような子は初めてでしたから、どう教育していこうか、思案しました。ちょうどその時「江戸っ子1号」のプロジェクトがあったんです。
そこで彼女の教育は、このプロジェクトのリーダーにしてしまおうとなったんです。

何社かで行なっているプロジェクトでしたから、本人にも話をして、メンバーにも話をしました。彼女は本当に頑張ってくれましたね。
現場にも足を運んでいたし、手も動かしていたし。「他社の先輩や異業種の職人さんに怒られた」なんてこともあったでしょう。
だけど、やっぱり体験したことは本人の心に残るんです。
そういう経験を積ませる場をつくりたいと思って、新卒のその子をいきなりリーダーに抜擢した経緯はありましたね。

――ありがとうございます。お話を聞いてお二人に共通しているのは、「みんなが向かう場」や「環境」づくりを大切にしていることだと感じました。
ビジネスでプロジェクトマネジメントに困ったら、お二人の話をぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

Interview/Text: 田尻亨太

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浜野慶一

はまの・けいいち/1962年東京都墨田区生まれ、84年東海大学政治経済学部経営学科卒業、同年都内板橋区の精密板金加工メーカーに就職。93年創業者・浜野嘉彦氏の死去に伴い、株式会社浜野製作所 代表取締役に就任、現在に至る。「おもてなしの心」を経営理念とし、さらに「製造業はサービス業である」をモットーに、レーザー加工・金型・精密板金・プレス加工を手がける、今、中小ものづくり企業で最も注目されている経営者のひとりである。地道な事業の一方で、産学官連携として電気自動車 「HOKUSAI」、深海探査艇「江戸っ子一号」、異業種連携としてアウトオブキッザニアによる工作教室、工場巡りツアー・スミファを主催する「配財プロジェクト」など、多数のプロジェクト事業に取り組む。墨田区「フレッシュゆめ工場」「すみだがげんきになるものづくり企業大賞」などさまざまな賞を受賞。サービス業を追及し、働いているスタッフが誰よりも楽しむことができる、「製造業版ディズニーランド」を目指し日々活動を行っている。

http://qreators.jp/qreator/hamanokeiichi

沼田晶弘

ぬまた・あきひろ/国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、学校図書生活科教科書著者、ハハトコのグリーンパワー教室講師
東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリカ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。「パッツン」「CM」「インパクトライティング」など、担当クラスでの斬新な授業が話題。

http://qreators.jp/qreator/numataakihiro

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