QREATORS

丹下紘希×半崎信朗「映像という言語のやりとり。僕たちがあの映像に込めた想い」

2015.10.5

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ここまで前編中編にて映像作家のお二人にお互いのクリエイトの動機や原点について話を伺ってきましたが、それらを踏まえ後編では映像に込めたメッセージ、映像作家という職業について語っていただきます。

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Mr.Childrenの『進化論』の映像に込めた二人の想い

――丹下さんはMr.Childrenとの仕事を通して、ストイックな4人にクリエイティブ部分で共感することが多かったでしょうか。

丹下 僕は2年半くらい映像の仕事をやらなかった時期があったんです。その期間は社会問題解決のための仕事しかしたくないと言い張っていて、そんな仕事ばかりしてきたんです。
去年、Mr.Childrenのメンバーから仕事を手伝ってほしいと言われ、付き合いも長かったし、自分が何をしているかも理解してくれていたので、「何ができるか分かりませんがやってみましょう」というような感じで仕事を再開しました。メンバーも僕とそこまで年齢が離れていなくて、同世代だから相談しやすいというのもあったかもしれない。世代が近いと共通言語が多いというのもあるよね。

半崎 わかります。先ほど僕のアイデアの源泉が90年代だという話をしましたが、これも通過している人とそうでない人で、やり取りの回数が変わってきますから。

丹下 だよね。そこで僕が気付いたのは、例えば、何かを発見したとして、それをいわば100万人の人に伝えるためにはその話し方、話法で話さなければ伝わらないな、ということなんです。

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――実際にその話法が伝わったと感じた瞬間はありましたか?

丹下 半崎くんに「進化論」という曲の映像を作ってもらったんです。
この映像は、原発の問題や科学がすすんだ便利さを優先する社会へのいろいろな問題提起を投げかけたのですが、ひっくるめると、自分が経験した経験値を少しでも次の世代に受け継いでいかなければいけないね、というメッセージなんです。
アンケートに「自分が生きていること、その意味を見つめ直して、無意味に思える自分のこの生も意味があるんだと思えました。根本的に生きていていいんだと自分を肯定出来ました。」と嬉しいことが書いてありました。

――ひとつの作品において、曲の持つメッセージに加え、2人のメッセージが混ざり合ったのですね。

丹下 僕だったら言い方を間違えて人を傷つけてしまうかもしれないことを、半崎くんはそうならないようにうまく編集をしてくれて。歌自体もそういうメッセージ性がある作品なんですが、将来への希望も見出せるような演出にしてくれました。
ライブでも、会場に集まった大多数の人たちが「進化論」の映像を見て涙を流している姿を見かけると、こちらも、ジーンとしてくるんですよね。
お客さんも多くのものを持って帰ってくれることだと思います。

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僕たちは「映像言語」を話す人、という部分で共通している

――音楽に込められた想いをどう映像に組み込んでいくのでしょうか。

丹下 桜井さんの歌詞を読み解いていくと、深く読み取れることがたくさんありますし、それを僕が解釈して具現化のお手伝いをしているということかなと思います。
来てくれたお客さんたちは、「ああ、こういう解釈もできるんだ」と、音だけ聴いていたのでは分からなかったことを目で見て感じる。
あと、映像に関してですが、僕と半崎くんがわりと近いと思うところは「映像言語」の使い方なんです。半崎くんは僕のことを文系の人間だと言ったけれども(笑)、そういうところがすごく似ているよね。

半崎 それはすごくわかります。僕もシンパシーを感じていた部分で。

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丹下 お互いに、詞も映像も哲学的な使い方をしているんですよ。僕は歌詞というものをすぐに深読みしてしまうタイプなんですが、彼も深読みできるように作品を作ってくる。だけど、それを本当に深読みするかどうかは、受け手にゆだねるという突き離し方をしているんです。
その曲の詞や文学というものが、四次元の空間の中に絵としてあらわれていて、5分間なり10分間なりその曲の長さの分だけ歩いて旅をしているような感覚なので、半崎くんの作品を見ていると興奮しちゃうんですよね。
プログラマーという職業も言語のやり取りをするわけだけど、それと同じような感じで、映像の言語のやり取りをするようなものだと。どちらかというとそういう詩人的なイメージもあるけれども、それにプラスして翻訳者としての側面もすごくあるのかと思います。

半崎 象徴などを用いて映像詩を作る作家としての側面と、もう一方は他の人の映像作品を正しく読み取れる翻訳者としての側面のことをですね。

丹下 そう。これからは僕らのような人を、「映像作家」とか「クリエイター」みたいに創造する側で括るのではなく、“映像言語を話す人”みたいな職業のカテゴリーに分けていってくれたら面白いのかもしれませんね。

Interview/Text: 中村拓海
Photo: 森博嗣

丹下紘希

たんげ・こうき/映像作家、人間。1968年、岐阜県生まれ。舞踏家大野一雄に師事。数多くのアーティストのジャケットのデザイン、ミュージックビデオを手がける。反原発、反戦を宣言し、2012年経営していた会社を一時休止、NOddINという芸術運動を仲間と立ち上げて活動している。

半崎信朗

はんざき・としあき/映像作家。1981年、東京生まれ。東京藝術大学大学院デザイン科修了後、フリーランスとして活動を開始。最近手掛けた作品は「Mr.Children Stadium Tour 2015未完」の「擬態」「Starting Over」、「Mr.Children TOUR 2015 REFLECTION」の「進化論」「Waltz」、ミュージックビデオAKB48「履物と傘の物語」、半崎美子「明日へ向かう人」など。独自の世界観で多くのアーティストから支持されている。

http://qreators.jp/qreator/hanzakitoshiaki

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