QREATORS

子育てに必要なのは“グレーゾーン”。これからの公園、新しい保育園のカタチ。

2015.9.18

Qameeting hoikuen

ここまで前編中編にてタレントのMEGUMIさん、クリエイティブディレクターの中村洋基さん、フォトグラファーの花盛友里さん、「遊び学」研究者の松田恵示先生に、保育園の現状や子育て事情について話を伺ってきましたが、それらを踏まえ後編ではこれからの公園、保育園のカタチについて語っていただきました。

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育児に欠かせない「グレーゾーン」とは?

──中村さんから「イノベーティブな公園」というアイデアが出ましたが、みなさんいかがでしょう。

松田 公園、いいと思います。近頃は公園の役割がただの避難場所のように変わってきましたからね。かつては子供も大人も交流できる空間でしたが、それが失われつつある。
しかし、公園のような「誰のものでもない空間」は非常に大切で、なぜなら“グレーゾーン”だからです。グレーが消えると、白か黒かという両極端だけが残ってしまう。これって「YES」か「NO」かが明確に決まっている状態なので、結果的に人が考える余地を奪うことになるんです。ところが、グレーゾーンは自分で判断する必要があるでしょ? 子育てにおいても、このグレーはきわめて重要な機能なんですよ

MEGUMI 最近の公園は明確に「NO」を打ち出すことが増えましたよね。

花盛 昔は大丈夫だった遊具が、いまは危険だからと撤去されてる。なんでいまはアカンのか、すごく不思議なんですよ。
ライターにしても「危ないから着火しにくくしました」とか疑問に思うし、何でもかんでも禁止して、いまの子どもがどんどんアホになっていくような気がする……。

中村 じゃあ、公園に“真逆の注意書き”があるとかどうですか?「子供のケンカに大人は口を出すな!」とか。

松田 それ、おもしろいですね(笑)。ほかには「自分の子どもの味方をするな」とか?

中村 あとは昔のように「知らない人でも挨拶しろ」かな?

松田 なるほど。挨拶は、知らない人と関係を持つための優れた知恵ですからね。

中村 MEGUMIさんは子どもを連れて公園で遊びますか? 芸能人ですから、周囲が恐縮して挨拶もナシとか、逆に話しかけられすぎて困るとか……。

MEGUMI それも考慮して、私は近所の幼稚園に通わせたんですよ。「私たち、この土地にいるぜ!」と周知されれば、みなさんも慣れてくれるので。そうなると、家族3人で普通に公園に行っても「あら、こんにちは」と知り合いが増えていく。自分たちからオープンにしていったんです。

中村 それは素晴らしいですね。

MEGUMI あ、公園で思い出したんですけど、近所の世田谷公園がすごく理想的なんです。子供たちが焚き火したり、ノコギリやカナヅチを使ったりできるんですよ。

中村 ありますねぇ。作業する小屋とかあって、完成されていないものがいっぱいあって「好きにやれ!」って感じの。

MEGUMI そうそう! 木材がポーン、ペンキがドーン、みたいなざっくりした感じで置かれている。最初こそ、親としては危ないと思っていましたが、ノコギリを使うときもちゃんと足で固定して、緊張感を持って作業するから怪我もしない。
いまの時代、都内でなかなか経験できないことなので、すごくシンプルでざっくりとした「不自由公園」みたいな場所は必要なのかも

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松田 しばしば育児において「リスク」と「ハザード」という言葉が用いられます。
どちらも子どもにとって危険なことですが、子どもが見極めるべき危険がリスクで、子どもでは予測が難しい危険をハザードと呼び分けています。そこで親は、リスクとハザードを判断した上で、ハザードを排除し、リスク管理を教育する。
しかしながら最近は、ハザードを恐れるあまりにリスクすらも排除してしまう親が多いようです

花盛 「子どもにも包丁を持たせましょう」という話を聞きました。手を切るかもしれないけど、切らないように正しい使い方を教えることが大事なんだ、と。

MEGUMI 実際、ちょっとくらい切ったって大丈夫ですもんね。

中村 たしかに(笑)。あと、そのほかに公園でイノベーションを考えるとしたら……大人と子どもで滑り台の高さが違うとか?

花盛 お父さんも本気で遊べるのがええなぁ。義務的な家族サービスじゃなくて、お父さんも乗り気で出かけてくれるようなものとか。

松田 そういえばMEGUMIさんは岡山県出身ですよね? 岡山の『おもちゃ王国(※1)』ってご存じですか?

MEGUMI 分かります。

松田 みなさんの話を聞いていて『おもちゃ王国』は近いイメージかなと。

MEGUMI なるほど! それなら『ベネッセアートサイト直島(※2)』もいいですね。体感型アートだから親も楽しめます。

中村 「大人にはアート、子供には遊び」ですね。そういうのもおもしろそうですね。

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公園と保育園のハイブリッド!?「ライト版保育園」

──「イノベーティブな公園」でさまざまな意見が出ました。では、これらを「新しいカタチの保育園」に落とし込むとどうなりますか?

花盛 “現状の保育園のライト版”にするといいのかな?
公園のような広い敷地で、週に1~2回、子どもと離れることができるスペース。そこに子どもの面倒を見てくれる大人がいるとか……。

MEGUMI 「子育て支援員」のところで話したけど、その面倒を見るのは、育児を終えた女性だったら安心かも。

花盛 いいですね!

MEGUMI しかも“ざっくりした女性”ね。育児中は、どうしても神経質になっちゃう。
でも、子育てを終えた人たちは、一通り経験してきたから加減を把握している。このざっくり感は必要ですよ。少し子どもが怪我しても「大丈夫よ、それくらい」みたいな。

松田 子どもの視点を感じられることは、大人にとっても大きなメリットになります。
普段は道を歩いていても何も感じませんが、子どもは「うわ、何か落ちてる!」「この建物って何?」と物事に関して非常に繊細。そうした子ども心に触れることで、大人も成長できると思うんですよ。

中村 “ライト版保育園”……いいですね。
公園や自治体から借りられるスペースに、不自由でざっくりしたモノを用意して、子どもを見てくれる地域の育児経験者がいて、あまり口を出さないような簡単なルールがあって……コレ、たとえ週1しか運営していないとしても、民間営業で充分に勝算ありますよ。

花盛 週1でも、数時間でも、育児から離れられる時間があればノイローゼにならなそう。
もしかしたら、似たような施設はすでにあるかもしれないけど、各地域にあったらいいですよね。保育園に入れない子どもが多い現状でも、ライト版保育園は必ず利用できる、とか。

MEGUMI 前売りのまとまったチケット制にして、いつ来ても利用できると便利かもしれない。1枚で1時間とか、細かく利用できるともっと便利。

松田 それ、非常に素晴らしいアイデアですよ。運営側としても経営が安定します。
私が代弁する必要はないんですが、おそらく「子ども・子育て支援新制度」って、そうした施設をつくりたいんだと思います。ただ、国がつくるとちょっと窮屈なモノになってしまう可能性が……(苦笑)

MEGUMI 民間企業がやるのは難しいですか? 国から助成金をもらうとか。

松田 充分に可能ですよ。

MEGUMI じゃあ中村さん、助成金もらってPARTYでやってくださいよ。

花盛 お願いします!

中村 僕ですか?(笑)……でも、本当にイケる気がするんだよなぁ。「現状の保育園よりも、ライト版保育園の方がいい!」という明確なコンセプトさえ提示できれば、確実に親御さんもお金を落としますからね。助成金がなくても成立するかもしれない。
そもそも多くの親は、育児において何が正しいか分からなくて不安だと思うんですよ。ネットで調べても、いろんな情報が飛び交ってるでしょ?
だから、松田先生のような識者が、ドーンと前に出て説明していただけると、それだけで大きな説得力が生まれる。
「世の中に、もっとグレーゾーンをつくろう! 育児にはグレーゾーンが欠かせない!」って。

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松田 いまの人は、ひとつの正解を求めすぎていますよね。

中村 僕はふたり目が生まれたら、上の子とは真逆に育てようかなと思ってるんですよ。インターナショナルスクールじゃなくて、毎日ミミズとか触っちゃったりするところに通わせてみようかなと。「育児の正解はひとつじゃないんだよ」って思いたいんです。

松田 そうした意識を自然と芽生えさせるために「15人くらい子どもを生んでみたらどうですか?」とアドバイスすることがありますね(笑)

中村 なるほど!(笑)

花盛 たぶん「育児なんて何でもええんや」って思える(笑)

松田 そうでしょう? 子ども1人の家庭と子ども3人の家庭だったら、3人の家庭の方がいい意味で適当なんですよ。

中村 ただ、実際には難しいから、そこをライト版保育園で補うわけですね。
グレーゾーンの重要性など、明確なコンセプトを打ち出して「子どもって、勝手に育つものなんですよ」と親御さんに説明してあげる。「かつての公園」と「保育園」の中間のような場所──このメンバーで本当にやってみたいですね(笑)

花盛 おもしろそう!

MEGUMI ぜひぜひ!

松田 よろしくお願いします(笑)

******注釈
※1『おもちゃ王国』……株式会社おもちゃ王国が運営するテーマパーク。玩具メーカーの協力によって、さまざまな展示やトラクションが用意されている。岡山県玉野市の直営パークのほか、軽井沢や南知多など全国5箇所にフランチャイズパークを持つ。

※2『ベネッセアートサイト直島』……ベネッセコーポレーションが瀬戸内海の直島(香川県)で展開している、現代美術に関わる施設・活動の総称。

Interview/Text: 松本晋平
Photo: 神藤 剛

MEGUMI

めぐみ/タレント、女優。ドラマやバラエティ、舞台など精力的に活動しながら、一児の母親としての面も持つ。オリジナル&セレクトショップ「CALMA.」をプロデュースする。

http://ameblo.jp/megumi-official/

松田恵示

まつだ・けいじ/「遊び学」研究者、東京学芸大学教授。
1962年生まれ。和歌山県出身。大阪教育大学大学院卒。専門分野は社会学(スポーツ・教育・文化)と教育研究(体育科教育/教育支援)。NPO法人「東京学芸大こども未来研究所」理事長、「中央教育審議会生涯学習分科会」専門委員、吉本興業主催「笑楽校」監修など、教育および教育支援に関する多くの要職を兼任。学校と社会を繋ぐための教育人材の育成や、スポーツ教育の開発を通じて、教育現場との実践的な共同作業を行っている。一方、社会意識論の立場から「遊び文化」を研究。あらゆる場面で「遊び」を取り入れた活動・普及に取り組んでいる。

http://qreators.jp/qreator/matudakeiji

中村洋基

なかむら・ひろき/1979年生まれ。2000年に電通に入社、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組『MAKE TV』(TBS)などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。共著に『Webデザインの「プロだから考えること」』(インプレスジャパン)がある。http://prty.jp/

http://qreators.jp/qreator/nakamurahiroki

花盛友里

はなもり・ゆり/フォトグラファー。1983年、大阪府生まれ。中学時代から写真の楽しさに目覚め、2009年よりフリーランスとして活動開始。女性誌や音楽誌、広告などで主にポートレートの撮影を手がける。2014年に出産、一児のママに。同年、自身初の写真集『寝起き女子』(宝島社刊)を発売、活躍の場を広げている。http://www.yurihanamori.com/

http://qreators.jp/qreator/hanamoriyuri

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