サイエンティストの発想法から学ぶ、テクノロジーがつくるイノベーションのかたち

2015.9.15

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クリエイティブなアイデアや発想はどこから生まれえてくるのか。そんな疑問のヒントを得るために、様々な分野のクリエイターをお招きし、アイデアが生まれるまでのプロセスを深堀するシリーズ「クリエイティブな人の考え方って?」。
第3回は、サイエンスブリッジコミュニケーターとして社会とサイエンスの架け橋となるプラットフォームをつくる、株式会社リバネス代表取締役CEO丸幸弘さんと、テクノロジーによって女子の“可愛い”を最大限に引き出す「シンデレラ・テクノロジー」を研究する、東京大学大学院 情報理工学系研究科特任研究員の久保友香さんがゲストスピーカーとして登壇。小学校教諭として斬新かつユニークな授業で注目を集める沼田晶弘さんがモデレーターになり、お二人のクリエイティブな発想の源泉を探ります。

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子どものころは何でも発想できたのに、大人になるとできなくなる

沼田 私は小学校で6年1組を担任しています。うちのクラスでは休み時間に子どもたちが割りばしを使ってゴム鉄砲をつくったりするのですが、面白いので「割りばしを使っちゃダメ」と言うと、そのへんにあるマジックとか、棒とか、スプーンとか、丸めた画用紙とか、いろんなものを持ってくるんです。
子どもの頃ってそういった柔軟な発想ができるのに、大人になるとなかなかできなくなりますよね。今回はゲストスピーカーであるお二人の話を通じて、柔軟な発想のヒントを得たいと思います。では、まず丸さんからお願いします。

 僕は「1.直感→2.逆張り→3.連結→4.希望→5.猛進」というプロセスで考えています。
まず大事なのは直感です。「なんかいけるかも」っていうのがあるのが大前提。これを信じないからダメなんです。子どもは直感を信じるじゃないですか。
だけど、大人になると直感だけじゃダメで。そこで必要なのが逆張りなんです。「これはいける」と直感で思ったときに、「ちょっと待てよ」と全く逆を見て、最初の発想を全部飛ばすんです。
ここで終わると否定で終わってしまいますが、直感を信じてますから、逆張り後に戻ってきます。そして、もう一度戻るときに連結していきます。信じたものにつなげると、戻ったときに「絵」が描けます。
ここで大事なのは、それが希望に満ち溢れているかどうか。ここで希望が見えなかったらやめてください! これ、すごく大事なことで、僕には希望とか感動がそこで見えます。直感を逆張りして、連結して希望と感動が見えたら、そしたらもう信じ切って猛進する。もう上司がなに言おうと関係ありません。「俺には希望が見える。なんなら会社辞めてもいいぜ!」ぐらいに進んでください。そうすると自然とヘルプがきます。だって、完全に猛進しちゃっているんですから。
これが僕の物事をとらえる方法論です。これクセにすると超簡単にできます。だから僕はピーターパン症候群ってよく言われます。お前はいつまで子供なんだと(笑)。

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沼田 連結って、どんなものをつなげていくんですか?

 そうですね〜。それは直感の繰り返しになるので、逆張りしたときにつなげようとするというより、つながっていったという方が自然かもしれません。
自然につながったものの方が、意外と希望を描けることが多いですね。強引につなげたものだと「ちょっと無理あるな」みたいになってしまう。そうすると一回クラッシュして浮かせておくんです。クラッシュっていうのは、完全にやめるというよりは覚えておくという感じです。そうすると、浮いたものどうしがつながったりします。
浮かせたものは、降りてくるんです。慣れると200個くらい浮くようになりますよ。だから直感、逆張り、連結をぐるぐる繰り返していく感じです。そこで希望が見えたときは、すごく気持ちいい。

久保 実際、物理的にアイディアはどう浮かせるんですか?メモだったり、パソコンに書き留めたり。

 僕はパソコンを持ってないんですよ。パソコンはクリエイティビティを下げるんで、いつもA3の紙の真ん中にアイディアを書いていくんです。浮かせているものはたまに飛んでいってしまいますが、それは仕方ないとして、どんどん浮かべるんです。
めちゃめちゃ考えて一つのものがポンっと生まれるというより、確率論の問題で5000個くらい浮かせておいて、「来たっ!」というものを待つほうがいい。
結局、生命の進化も確率論です。私はサイエンティストとして、それを信じてますので、いろいろな人と会った方がいいし、いろいろな話を聞いた方がいい。メモる時間があるなら、どんどんスピードを上げたほうがいい。考える速度をいかに上げていくかがポイントですね。

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発想のベースは、工学に基づいた思考法

沼田 久保さんの物事を考えるステップについて、お聞かせください。

久保 私の場合は、
1.おしゃべり(調査/リサーチ)→2.おえかき(構造/モデリング)→
3.おはかり(分析/アナリシス)→4.おつくり(構築/シンセンス)→
5.おひろめ(発表/プレゼンテーション)
というステップで物事を考えています。これだけみるとちょっと変わっている感じもするかもしれませんが、工学的にはすごく一般的な方法です。

まず、おしゃべり(調査/リサーチ)。
女の子たちは、とても面白くってすごく曖昧で、すごく矛盾が多いんです。一生懸命写真を撮っているのにそれを見せたくないと言ったり、お化粧とかでみんなそっくりな顔をしているのに、「なんでお化粧するの」と聞くと、「自分らしくあるため」と答えたり、矛盾だらけ(笑)。けど、聞いているとすごく一筋通っているところもあって、私はそういったところを見出す研究をしています。

私はすべての女の子の可愛さや綺麗さを引き出すシンデレラ・テクノロジーの研究をしていますが、興味の対象は実はそれだけではありません。女の子たちはすごくコミュニケーション上手だと思うんです。今いろいろと情報通信技術が出てきて、みんながネット上に顔を出したり、情報を発信したりしていくことが今後さらに増えていくと思います。誰もがバーチャルとリアルの世界をいきわたることが難しくなっていく中で、この2つの世界を上手くいきわたれる人がこれから優位になっていくだろうとGoogleの会長さんも言ってるんです。そんな中でも女の子はコミュニケーションが上手だと思っています。

たとえば、プリクラとかお化粧とかして、ちょっと個性を隠しながら出していくっていうのとか、そういった顔の話だけじゃなくて、絵文字とか写メとか、簡単で使いやすいコミュニケーションを生み出すのがうまいと思うんです。

実はひらがなも女性が使いはじめたのがルーツ。平安時代に中国から漢字が入ってきて、それが難しいから、女性が簡易にしたところから誕生したと言われています。ひらがなも最初はバカにされていたけど、今でも使われていますよね。

私は、そういった女の子のコミュニケーションから未来のコミュニケーション技術の発想を得たいと思って、いろんな女の子から話を聞いています。企業も市場調査なんかもしていると思いますが、私は女の子が「かわいくなろう」「キレイになろう」と努力する原動力は何か、どんなことに好奇心を持って心を動かされるのか知りたいので、1人の人から毎回2~3時間くらい話を聞いています。

そして、話を聞いていく中で、一筋通ったモデルを見つけだすことが、おえかき(構型/モデリング)です。
たとえば、コミュニティーの外から見ると同じ顔に見えるようなギャルメイクでも、彼女たちの中では実は差異があります。いきなり個性を見せるのはかっこわるくて、一度基準を揃えた上でちょっと違いを出すのがカッコいいとか。これって歴史をさかのぼると守破離という考えに近くて、まずは流派を守って、そこから離れて、新しい流派をつくっていく。武士道にも近いギャル道みたいなのがあるんです(笑)。

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沼田 ちょうど美意識が芽生え始める子たちが小学校に20人くらいいるので、その違いをじっくり見ちゃいそうです(笑)。

久保 続いて、おはかり(分析/アナリシス)ですが、工学というのは再現性を持たせることが大切です。法則を見出して、数式化して、できれば機械化までして、みんなが同じように使えるようにしなくてはいけません。そのためには定量化という作業が欠かせなくなります。コミュニケーションの分析において一番ふつうのやり方はテキストなどを分析するやり方かもしれませんが、私の場合は顔を使っています。顔はファッションや髪型より特徴点がとれるんですよね。それをもとにどういった変化をしているかを測っています。

その後に、おつくり(構築/シンセンス)。
つくったモデルがあっているか、たくさんのデータを集めてチェックをします。それで少し間違っていれば、直すという方法をとっています。そこからシステムが固まれば、かつては拙いけれどソフトにしたり、今は設計図までだったりしますが、実際に形にしていきます。

最後に、おひろめ(発表/プレゼンテーション)。
自分の興味があるものを研究するのがすごく楽しくて、「別に人に見せなくていいや」と思ってしまうのですが(笑)。それではいけないので、次にお金を得るためにも、見せるのは大切だと思います。実際に、自費出版でこの前も本を出したりしました。実際に見せると反応があるので、それをもとにまた直すっていうのもすごく大事。そうやってどんどん精度をあげていくのはすごく楽しいです。

沼田 やはり丸さん同様、分析している間に、おしゃべりに戻って、1から3をぐるぐるくり返しながら、ポンとアイディアが浮かぶイメージですよね。

久保 そうですね。確かにアイディアを浮かせてるところはありますね。私の場合は、頭の中に浮かばせるのは難しいので、A4のノートに書き留めたりしてますね。

沼田 なるほど。お二人のお話、すごく参考になりました。今回お話を伺って一番強く感じたのは、お二人とも大好きなものがあって、そこに専門知識を活かして情熱を注いでいるということ。ビジネスマンにとっても直感は大切だと思いますので、みなさんもクリエイティブな発想に困ったら一度子どもに戻って、無意識に紐づけすることを実践してみてはいかがでしょうか。今日はありがとうございました。

Interview/Text: 田尻 亨太

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丸幸弘(まる・ゆきひろ)

サイエンスブリッジコミュニケーター®
株式会社リバネス代表取締役CEO
1978年、神奈川県横浜市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。
大学院在学中の2002年6月に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。ネットには載っていない研究者の知恵を世界中から集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、そこに集まる異分野の知恵と知恵を組み合せて新しいモノを生み出す「知識製造業」という新業態を営む。ユーグレナ技術顧問など、多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わるイノベーター。 
著書『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)

http://qreators.jp/qreator/maruyukihiro

久保友香(くぼ・ゆか)

東京大学大学院 情報理工学系研究科特任研究員
シンデレラ・テクノロジー研究者
1978年、東京都生まれ。2000年慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科卒業。
2006年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(環境学)。
東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、2014年より東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員に就任。専門はメディア環境学。

http://qreators.jp/qreator/kuboyuka

沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)

国立大学法人 国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、学校図書生活科教科書著者、ハハトコのグリーンパワー教室講師
東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリカ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。「パッツン」「CM」「インパクトライティング」など、担当クラスでの斬新な授業が話題。

http://qreators.jp/qreator/numataakihiro

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