ママたちが保育園に望む「質」ってなに?そして「質」は今後どうなっていく?

2015.9/7

Qameeting hoikuen

前編に引き続き、タレントのMEGUMIさん、クリエイティブディレクターの中村洋基さん、フォトグラファーの花盛友里さん、「遊び学」研究者の松田恵示先生に、保育園の現状や子育て事情について話を伺います。

150603 qat0068
地域に子どもを叱る「オジサン」がいなくなった

ーー松田先生から「子供を地域社会で育てるのが大事」とのご意見が出ましたが、残念ながら近年は“近隣トラブル”が問題になっています。保育園が「迷惑施設」的な扱いを受け、「建設反対の署名運動」や「道路の使用が制限される」(※1)など、地域が保育園を歓迎していない風潮が目立ちます。

松田 運営側の意見ですみませんが、今回の座談会のテーマを聞いて、最初に思い浮かんだ理想の保育園は「クレーマーのいない保育園」だったんですよ(笑)

中村・花盛・MEGUME (笑)

松田 ぼくのところの保育園は幸いそんなことがないのですが、一般的には保護者も近隣住民も、本当にクレーマーが多い。それでもめるケースは多いですね。

花盛 昔は地域で育てる意識が強かったのに、いまはお年寄りがクレームを入れることが多いって聞きました。

MEGUMI 私たちが子どもの頃は、どの地域にも“子どもを叱るオジサン”がいましたよね。でも当時の私たちは、そのオジサンから叱られたことに対して、それほどシリアスに受け止めていなかったと思う。何というか相互理解みたいな感じ? でも、いまはシリアスすぎるというか、重く受け止めすぎなんじゃないかな?

中村 僕が子どもの頃、近所に「タコオヤジ」って呼ばれているオジサンがいまして、町内会のお祭りでスイカを食べたとき、口の中に含んだ種をタコオヤジに向かってブーッって吹いたことがありました。
そしたら「やっていいことといけないことがあるんだ! 憶えとけ!」って、エライ剣幕でヘッドロックされたんですよ(笑)。
いま考えると、地域内にイイ感じの学びがありましたよね。

花盛 そういうの、いまは絶対にないですよね。近所のオッチャンで知っている人なんてひとりもいない。「危ないから、知らない人には近づいたらアカンで」って言っちゃうし、境目が分かんないかも……。

D493108310e383fe59ee6e2b21766707 s

ーー「子どもを叱るオジサン」を体験してきたみなさんですが、自分が大人になった現在、近所の知らない子どもたちに話しかけていますか?

中村 いや~。

花盛 難しいかも……。

MEGUMI 私はわりと話し掛けてますね。「こんちわー」「あぶないぞー」とか。
でも、花盛さんが言ったように親が「近づいたらダメ」と言っているせいか、逆に子供たちの反応が薄いですね。

花盛 東京の子どもってメチャメチャ真面目じゃないですか?

MEGUMI 驚くほどクールですよね。私は地方出身で、いまでも地方の子どもは東京ほどクールじゃないと思うんですが、地域によって教育的な差が出たりするんでしょうか?

松田 最近はどこも同じと考えていいかもしれません。いまの話で感じたのは、みんな「こうしたら、こう言われるからやめてとこう」と、先読みしすぎて自己完結するケースが目立つんです。
近所に保育園があったら、本当にうるさいです(笑)。だから、うるさければ「うるさい!」と直接言っていいし、保育園側も「うるさいのは仕方ないじゃないか!」と言っていいと思う。
しかし、地域と保育園とでストレートに意見交換する関係が構築できていないから、集団で反対運動みたいな大袈裟な事態に発展してしまう

MEGUMI お互いに意見を言い合える……たしかに、いまは少ないかもしれませんね。

松田 ストレートに物申すのが難しいですよね、最近は。

150603 qat0053
理想的な「保育環境」と「子どもの遊ばせ方」って?

ーー一方、近隣トラブル以外に「保育施設の質の低下」を懸念する声もあります。本年度から「子ども・子育て支援新制度」(※2)がはじまり、待機児童解消のために保育施設の増加が進められています。しかし増加に対応できず、人手不足によって保育施設の質が低下するのではないかと……。

松田 先日、厚労省の人と話したときに、まさに同じ話をされていました。
しかし、そもそも「質の低下」の「質」とは何か
みなさんは保育園に望む「質」とは、どのようなものだと思いますか?

MEGUMI 小さい幼稚園や保育園の前を通ると、たまに「園児にDVDを見せているだけ」という光景を見かけます。その間、先生たちは書類仕事していて、それはどうなのかなと。
忙しいのかもしれないけど、愛がないというか……。保育ではなく「保管」のような印象を受けました。人手不足で園内のコミュニケーションが減るのは問題かもしれない。

花盛 保育園を探しているとき、認可外の保育園で狭い一軒家がありました。陽当たりが悪くて、庭もなくて、狭い空間に子どもがたくさん詰め込まれているような状態。さすがに、ココには入れたくないと思いました。
でも、こうした場所でも子供を預けることでお母さんが助かるなら、一概に否定できないんですよね……。

MEGUMI 難しいですよね。

松田 人手不足対策としては「子育て支援員(※3)」という制度を国がつくろうとしています。保育士とは別に、研修した人に保育現場で補助してもらおうと。

MEGUMI 育児が一段落した女性とかいいんじゃないですか? 大変だったけど、終わってみれば育児していた頃が恋しいという人は多いですよ。

花盛 子どもを連れて外出していると、嬉しそうに話しかけてくる女性は多いですね。

MEGUMI やっぱり、保育園が増えるだけじゃなくて、ちゃんとコミュニケーションがとれる保育環境であってほしい。息子が通っていた幼稚園は、泥んこになって遊ばせてくれるような環境で、本当にありがたかったです。うちの息子は、基本的に外で遊ばないんですよ。「汚れるのがイヤ」とか「汗をかきたくない」とか……。

中村 「もっと遊べよ~」と思うことはありますよね。

MEGUMI もしかしたら、親が言う「子どもらしく」って、単に私たちの理想でしかないのかなって思うこともあります。子どもと遊ぶにしても、何して遊んだらいいのか迷うことが多いですし。

中村 たしかに迷いますね。松田先生は「遊び」について研究されていますが、ズバリ、親はどうやって子どもを遊ばせるのが理想だとお考えですか? 

花盛 それ、私もスゴク聞きたいです!

150603 qat0061

松田 では、みなさんにお尋ねしますが、親と子どもが1対1で向き合って遊ぶのって、意外と長続きしないと思いませんか?

中村 その通りです。

花盛 難しい……。

MEGUMI 全然続かないですね。

松田 そうですよね。実は遊びとは“新しいモノと出会う場面”で起きることが多い。「これ何だろう?」という探索・好奇心が遊びのきっけかとなるんです。
ところが、いつもふたりで向き合っていると、飽きてしまう。いろんな人、いろんなモノと出会うという背景が出てくると、遊びは広がっていくんですね。
あとは「遊ばせる・遊んであげる」ではなく「大人も一緒になって遊ぶ・遊びを共有する」ことが大切です。

とある心理学者によれば、西洋画には親子が向き合っているものが多く、日本の浮世絵には何かひとつのものを親子で揃って見ている構図が多いそうです。
この向き合っている状態を「対視」と呼び、同じものを見ている状態を「共視」と呼びますが、親子で遊ぶならば「共視」が理想。
たとえば、綺麗な花をふたりで共視すると、両者は向き合ってもいないのに心が通じ合うじゃないですか。この共有感が重要と考えられているんです。
ブロック遊びにしても、ブロックを組み立てる子どもの相手をするのではなく、親も一緒にブロックを組み立てる。共同作業ではなく、それぞれ別のブロックを組み立ててもいい。そこに「ブロックを組み立てた」という共有感が生まれることが、親子の遊び方だと思います。

花盛 そうなると、アイテムが欲しいですね。大人も子どもも楽しめるモノやスペースがあったらいいかも?

中村 それ、絶対にいいですよ。

松田 大人も子どもも楽しむという点では、まれに保育現場にそうした空間が生まれる瞬間があります。
子どもを保育園に預けるとき、子どもはそのままほかの園児と遊びはじめて、保護者同士は談笑している。これは“在りし日の路地裏感覚”なんです。

中村 「在りし日の路地裏感覚」と「大人も子どもも楽しめるスペース」……これって“イノベーティブな公園”をつくれば、実現できるんじゃないかな……?

《後編に続く》

150603 qat0028

******注釈
※1『建設反対の署名運動・道路の使用制限』……2015年4月に開園予定だった東京都目黒区の認可保育園が、園児の騒音を理由に住民が反対。反対署名約220人分が集まり、開園が延期されることとなった。また、2015年4月に新設された認可保育所「舞の里バディ保育園」(福岡県古賀市)は、建設計画の段階で近隣住民が反対。住民から「騒音対策として高さ3メートルの防音壁を設置すること」「住宅側にある幅6メートルの市道を送迎に利用しないこと」を条件として提示され、保育園側も従う格好となった。

※2『子ども・子育て支援新制度』……2014年8月に成立。「子ども・子育て支援法」「認定こども園法の一部改正法」「子ども・子育て支援法および認定こども園の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の関連3法に基づく制度。

※3『子育て支援員』……保育現場の保育士や学童保育の指導員などを補助する人員。子育て経験を持つ専業主婦を対象に、全国共通の20~25時間程度の研修で「子育て支援員」に認定。保育現場の人手不足を解消する狙いがある。

Interview/Text: 松本晋平
Photo: 神藤 剛(人物)

このページが気に入ったら「いいね!」

Qreatorsの最新情報をお届けします

MEGUMI

めぐみ/タレント、女優。ドラマやバラエティ、舞台など精力的に活動しながら、一児の母親としての面も持つ。オリジナル&セレクトショップ「CALMA.」をプロデュースする。

http://ameblo.jp/megumi-official/

松田恵示

まつだ・けいじ/「遊び学」研究者、東京学芸大学教授。
1962年生まれ。和歌山県出身。大阪教育大学大学院卒。専門分野は社会学(スポーツ・教育・文化)と教育研究(体育科教育/教育支援)。NPO法人「東京学芸大こども未来研究所」理事長、「中央教育審議会生涯学習分科会」専門委員、吉本興業主催「笑楽校」監修など、教育および教育支援に関する多くの要職を兼任。学校と社会を繋ぐための教育人材の育成や、スポーツ教育の開発を通じて、教育現場との実践的な共同作業を行っている。一方、社会意識論の立場から「遊び文化」を研究。あらゆる場面で「遊び」を取り入れた活動・普及に取り組んでいる。

http://qreators.jp/qreator/matudakeiji

中村洋基

なかむら・ひろき/1979年生まれ。2000年に電通に入社、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組『MAKE TV』(TBS)などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。共著に『Webデザインの「プロだから考えること」』(インプレスジャパン)がある。http://prty.jp/

http://qreators.jp/qreator/nakamurahiroki

花盛友里

はなもり・ゆり/フォトグラファー。1983年、大阪府生まれ。中学時代から写真の楽しさに目覚め、2009年よりフリーランスとして活動開始。女性誌や音楽誌、広告などで主にポートレートの撮影を手がける。2014年に出産、一児のママに。同年、自身初の写真集『寝起き女子』(宝島社刊)を発売、活躍の場を広げている。http://www.yurihanamori.com/

http://qreators.jp/qreator/hanamoriyuri

SPECIAL

Saegusacontents

スマホ+動画なら、女性向けにこそ勝機がある

BLOG

Yucali01

生まれも育ちも目黒区!YUCALIおすすめの目黒区スポット♡

SPECIAL

Hakunetu title1200 0528

キンコン西野も語る!「アートの入り口は性欲解消」【アートについて前編1/2】