QREATORS

落合陽一、ドン ペリニヨンP2 エクスペリエンス パーティで会場を泡で包みゲストを魅了

2015.8.4

Img 3950 01

最高級シャンパーニュの1つとして知られ、多くの人々に愛されているDom Pérignon。このDom Pérignonが昨年11月より名称も装いも新たに登場した。『Dom Pérignon P2-1998』の『Dom Pérignon P2 エクスペリエンス』が、7月28日に開催されました。

「P2」とは、プレニチュードの二回目を迎えたものという意味。プレニチュードとは、ドン ペリニヨンが暗いセラーの中で澱(おり)と共にゆっくりと熟成する間、静かに独自性に磨きをかけ進化を続けるそのピークのことです。

最高級『Dom Pérignon P2』パーティには、ゲストもVIPが揃います。政治家の方や有名企業の経営者など、多数の著名人が招待されていました。ドン ペリニヨンのテーマであるPower of Creationの元、毎年アーティストを起用したクリエイティブがなされています。

そして今年のパーティでは、SUGALABOの須賀洋介さんの料理ととも、筑波大助教・デジタルネイチャー研究室主宰でありメディアアーティストの落合陽一ら4組のアーティストが起用されました。落合陽一は、シャボン玉の膜をディスプレイに変え映像を映し出したり、空中にプラズマを作り出すなど、テクノロジー×アナログで物理世界をハックする作風で知られる人物。普通の人が想像もしなかったワクワクしたテクノロジーアートを生み出すことから、「魔法使い」の異名がつけられています。そんな落合さんが、同会場にドン ペリニヨンP2の世界観を現すインスタレーションを行いました。

Img 3994
『凝縮された自然のエネルギー』を人工的なもので表現

――そもそもどのような経緯で、今回の仕事を手がけられたのですか?

落合 『Dom Pérignon P2-1998』のパーティテーマである『極限まで凝縮された自然のエネルギー』を人工的なもので表現できないかというお話がありました。僕は普段は大学で研究者をしているので、フェムト秒レーザーやナノ秒レーザー、テスラコイルなど、高速度や高エネルギーの現象、またものすごく細かい微細なものなどを使って研究や表現をしています。今回のお話をいただいたとき、普段研究で目にするようなものたちを使って「極限まで凝縮された自然のエネルギー」を表現できるのではないかと思い、手がけることになりました。

普段、自分の作品の展示の仕事はよくするのですが、それは自分の展示の中で完結してしまうんです。今回はブランドのコンセプトを伝えるために、全体のプロデュース/演出のAmano Creative Studio Incや映像演出の東市篤憲さん、音響演出の牟田口景さん、ライブパフォーマンスの伊東篤宏さんなど、何回もミーティングをさせていただきながら進めました。

――この会場の場所自体も特殊ですよね?

落合 はい、ここは平和島の東京流通センターで普段は配送用の倉庫として使用されている建物です。普通の美術館や展示空間と違うし、取り壊しが決まっているので壮大なことができると言われていて、だいぶ無茶ができました。大量のシャボン玉を使ったり雷を落としたり、普通のインスタレーション空間だったらできないような表現ができる空間だったと思います。このような機会をいただいたことに非常に感謝しています。

Img 4424
光、音、電圧、粒子などで極限を表現

――今回の制作はどのように進められたのですか?

落合 Dom Pérignon P2のテーマである自然のエネルギーの凝縮を「極限」と解釈し、インスタレーションは自然=物理現象に関わる様々な極限的なものをコンピュータプログラミングや電子回路といった人工的なもので表現することにしました。つまり、“自然の凝縮で想像されるドン ペリニヨンのシャンパーニュ”に対して、僕は光や音、電圧、粒子などを使って極限を表現し、他の視覚や聴覚や体性感覚に訴えるものを作ることをコンセプトとして、イベントテーマである「次元」を表現しようと思いました。コンピュータを研究しながら見えるような次元の表現、サイエンスとアートが融合したものを作ることにしたのです。
自然の中に見られる極限の美をコンセプトに、1ヶ月前までは色々なアイデアを出していきました。また手を実際に動かしながらいろいろな極限について考えていきました。例えば、高出力高速度パルスのレーザーで何かできないか? 高電圧テスラコイルで何かできないか? 何かモノを浮かせたりできないか? などですね。結果的に、光や音、電圧、粒子などの極限を、色々なところに散りばめた体験型のインスタレーションとなりました。

――では、今回のインスタレーションについて、一つひとつの解説をお願いします。

Img 3846
◆Color of Gravity

落合 普段の世界と隔離されるような方向感覚や重力を錯覚するような鏡張りの部屋が作られて、そこに浮遊感のあるシャボンの滝を作りました。
小さい頃誰もが遊んだことのあるシャボン玉ですが、明るいところで見ると虹色に光りますよね。これはシャボン膜が薄膜干渉という光の干渉を起こすほど極限まで薄い膜で作られているからです。これは光の波長より膜が薄いという特色によって、色がつくのです。
シャボン膜の極限をつかって、虹色に変化するシャボン玉の滝を制作しました。照明自体が制御されていて、吹き下ろすシャボンの滝が虹色に染まります。シャボンが重力にあらがうようお気流を創り出したインスタレーションでした。鏡張りの中にあると合わせ鏡に無数のシャボンが見えてとても好きです。実際多くの著名人の方が滝の中に入ってその不思議な光景を楽しんでいただいたのは、嬉しい限りです。

Img 4015
◆Fluctuation by light

落合 この会場にある様々なインスタレーションは吹き下ろす、吹き上げる、空中に留まるなどの重力の性質を意識したものや、粒子の運動によって世界観を表現したものが多いんですが、ナノ秒レーザーをつかったインスタレーションはシャンパーニュの中に吹き上がる粒子状の泡をコンピュータ制御することで、シャンパングラスの中に人工の美を表現することを行っています。
シャンパーニュの泡はたとえばグラスの細かいキズから生じたり温度の変化や液の状態変化から生まれたり、身近な物理現象の中でも極めて化学的なポテンシャルの分布を感じるものの一つです。ここにエネルギーが凝縮された、赤外ナノセカンドレーザー光を投射することでエネルギーの局在を作り出し、シャンパーニュの泡の発生を誘発しています。シャンパンに発生する泡という極めて偶発的な現象を極めて強力な光を通過させることでプログラミングする。プラズマを作り出さずとも、エネルギーの局在のみによって生じる泡の不思議な感じは非常に美しいです。それらの気泡全体の形もプログラミングによって円柱や泡の滝、三角形の柱などに変化するようプログラミングしています。
レーザーの調整に関してはアイシン精機のレーザーチームの方々にも非常におせわになりました。

Img 4117
◆Anti-Gravity sound scape

落合 シャンパーニュとレーザーで光の凝縮による泡の運動の表現を行ったので、ここでは音の凝縮による重力に対する静止や浮揚表現をしました。音のエネルギーというのはあまり強くはありませんが、たくさんのスピーカーを配置し、一点に力を集めることで重力に逆らうような表現に変えることができます。
これはもともと僕が博士課程のときに研究していた三次元音響浮揚装置を用いて、インスタレーションを創ったものです。シャンパーニュの泡に見立てた粒をライティングし宙に浮かせ、操り、留めるインスタレーションです。シャンパンの泡に粉が見立てられるようにライティングされています。コンピュータのプログラムによって粒子がデザインしたクロスモチーフ状に浮かび上がります。人工の形状が浮かび上がり、重力に抗して動き回るさまは美しいです。このようなコンピュータ技術と粒子を用いて現代風の「動く枯山水的な表現」を目指しました。

Img 4243
◆Tesla Coil

落合 音の凝縮、光の凝縮ときたので、今度は高電圧の極限というわけでテスラコイルによる表現を行いました。空気の絶縁を破壊するほどの高電圧で実際に落雷が起こります。
これはかなり強力なテスラコイルで、トランスを経て強い電圧に変換することで実際に雷を起こして表現しました。リレー回路を二段階噛ませることで制御しています。倉庫内に実際の落雷が起こるという現象は集まった人々の注意を引きました。映像のイメージの世界から物理的な世界へ体験が降りてくる演出の口火を切るような轟音の落雷は実に気持ち良かったです。

Img 3903
◆Monadology for Don Perignon

落合 シャンパーニュの中に入ったような空間、宇宙に広がる時間と空間をイメージできるようなインスタレーションも会場内に創作。今回のDom Pérignon P2 エクスペリエンスのテーマである「次元」を極限により表現。
暗室に1万以上のシャボン玉を飛ばし、シャボン玉に反射する光の周期をコントロールすることで、暗室の中にいる人をシャンパンの中にいるような気分に誘うインスタレーションです。空中に極細の配線によって配置された25個のLEDが本当に浮かんで見えるように、配置されていて、その光によって空間そのものが移動したように感じるような非常に美しい空間でした。

1時間にこれだけの数のシャボン玉を使う規模はあまりありませんので、貴重な体験でした。また、極細の配線を6メートル上にくくりつけていく作業や切れた配線を脚立の上で半田付けしていくのはすごくエキサイティングだったなあ。0.18mmの配線がとても切れやすいので何度やり直したことか…。プログラムに納得がいかず、泡まみれになりながら何度もやり直しました。

S  23846914
◆ドン ペリニヨンのシャボン玉ギフト

落合 こちらは今回来られたゲストへのギフトです。色が変化するシャボン玉と服でバウンドするような硬いシャボン玉を吹くことができます。時折シャンパーニュ色になってさまようシャボンは非常に美しいです。その極限の美をお家に持って帰っていただきたいという気持ちをプロダクトデザイナーに伝えました。また、ノズルを3Dプリンターでデザインすることで型出しで作るような製法では実現できないような立体形状のノズルでできています。それによって吹き出されるシャボン玉が美しくて綺麗です。

Img 3858
一夜限りの贅沢なインスタレーション

――今回のインスタレーションをどのように感じられていますか?
落合 これほど期間の短いインスタレーション、だって一夜のためだけに全てのインスタレーションを作り上げるんですよ。これは初めての体験でした。通常の展示会だと1ヶ月、短くても10日ほど開催します。それに比べて1日だけのインスタレーションですから、とてもぜいたくですよね。だって、このインスタレーションたち、展示し続けようと思えば1ヶ月くらい展示し続けられるものだと思います。まぁ、こういう一瞬のために作る豪華なインスタレーションというものも、それもある意味「体験の凝縮」という「凝縮」のテーマなのかなと思います。このような機会が与えられて、普段考えている時間と空間についての詩的な表現から真理をかいま見るような作品の制作を経験でき、良かったなと感じています。あと、Color of Gravityのシャボン玉の滝の中で写真を撮影している方がいたり、ゲストの方が楽しんでいただけたのが、とても嬉しかったですね。リアクションがあると制作者冥利に尽きます。

――落合さんにとってメディアアートって何ですか?
落合 メディア装置を用いて人間の感覚をアップデートするような芸術だと思っています。メディア批評としての芸術やコンテクストドリブンの芸術の時代は終わって、メディアアートそのもの価値は誰もがわかるような原理的な感動を作るものに近づいていくものだと考えています。今はちょうど過渡期だと考えていて、コンテクストドリブンの芸術がなくなることはないと思いますが、それは印象画に対する写実画のようなものになっていくと思います。そういった中で、研究しながらものを作ること、誰取ったことのない絵筆(メディア装置)を開発しながら自分の考えを作品で語ることは一番の喜びです。

――落合さんにとって光とはどういう存在?

落合 光あれ、という言葉がありますが、光はとにかく速い、波長が短い。普段音を扱ってたり光を扱ってたりと扱う場がころころ変わったりするので、光の速さ、ホログラムの細かさはいつもすげえなぁと思います。光はかなりデジタルのいうことを聞いてくれる。うちの研究室で扱うような物理場の中でも、デジタル的に優等生で、まず光からデジタルネイチャーになっていくんじゃないかなと思います。

今ってプロジェクターで映した映像を見るときに別段プロジェクターの存在自体を意識したりはしないじゃないですか。データが光に写像されたものを直接扱うことで、コンピュータというモノから光の場とのインタラクションに変わっている。このように光は古典的メディア装置から現在に至るまで、人間のイメージを語るためのメディアとして機能してきたのだと思います。

――今回のイベントのテーマとして、次元を超える、というテーマがありましたが、落合さんの中での次元についての考えを教えてください。

人間にとっての感覚器で受容される量や感覚器のデータをで集められるデータのさまざまな次元はひとつひとつに特徴があると思います。たとえばコンピュータからしたらそれらは高々データ列にしか過ぎず、縦も横も奥行きも時間ですらもコンピュータのとっては自由だと思います。その中で、極限の美をみせることで楽しんでいただければと思いました。

――私もインタビュアーという立場ながら、落合さんの展示を満喫させていただき、とても感動的な時間を過ごすことができました。本日は、お忙しいなか、ありがとうございました!

Interview/Text: 溝口昌治
Photo: 大根篤徳

落合陽一

おちあい・よういち/東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了者)。博士(学際情報学)。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ,物理世界をハックする作品や研究で知られる。
2015年より筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰。研究室では、デジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を超えた新たな自然「デジタルネイチャー」を科学し、哲学し、実装することで未来を目指している。
これまでに情報デザインを行うジセカイ株式会社や超音波やレーザーなどの波動を制御するテクノロジーを研究開発する米国法人Pixie Dust Technologies.incを創業。
父は国際政治ジャーナリストの落合信彦。叔父は空手家(和真流宗家)の落合秀彦。 従兄弟はLady Gagaの主治医を務めたことで著名なデレク・オチアイ。
研究論文や作品をACM SIGGRAPH(世界最大のコンピュータグラフィクスの祭典・学会)で発表するのが通年行事。
2014年にはCG Channel(有名CGサイト)が選ぶBest SIGGRAPH論文にも選ばれ,アート部門,研究部門のプレスカバー作品を一人で独占した。
BBCやディスカバリーなど世界各国のメディアに取り上げられ,国内外で受賞多数。
研究動画の総再生数は380万回を超え,近頃ではテレビやバラエティ、コメンテーターなど活動の幅を広げている。

http://qreators.jp/qreator/ochiaiyoichi

プロフェッショナルのための
クリエーターのカタログサイト
アイデアが見つかる。
仕事が生まれる。

プロフェッショナルの
目線に合わせた独自のカテゴリ、
今話題の情報、時期に合わせた
旬のキーワードを軸に
あなたが求めるQREATORを
ご紹介します。